2017年10月11日

今一番○○をしなきゃいけないっ!

ストーリーとは何か。
様々な方面からの答えがあり、一定には定まらない。
今回は焦点の面からとらえてみる。

ストーリーとは、常に「今一番○○をしなきゃいけないっ!」
でなければならない。


ストーリーのどこを切っても、これがないといけない。
○○はそのときどきの展開でいろんなものがはいる。

ちなみに、
「○○しないとマズイ、ヤバイ」のものと、
「どうしても〇〇したい」の二種類がある。
後ろに動機があるものと、
前に動機があるものだ。
後ろのものは、たいてい締め切りがあって、
早く何とかしないとダメだ!という要素がある。
なのでこっちのほうがストーリーは進めやすい。
「あの人が怒っているからすぐフォローしないと」
なんてのは、現実でもよくあることだ。

なにかしたい、という前向きなものでは、
なかなか人は行動には出ないものだ。
いつか○○したい、というなんとなくの夢であることが多い。
明日から本気出す、のパターンだよね。
でもそれには人を駆動させる大きな力がある。

物語とは、この大きななにかをしたい、
というチャンスが来た時のことを描くようなものだ。
いつか映画監督になりたい人はたくさんいるだろうが、
「今日、今、そのチャンスが回って来た」を描くのが、
ストーリーであるといえる。
たとえば後ろの条件をつける。
銀行強盗に、
「今面白い映画をつくらないと殺す」と言われたとするとかね。
もちろんこれはあまりにも現実味がないので、
実際はもう少しリアリティの方向に振る。
師匠の助監督としてついていたら、
師匠が倒れたとか、
勉強も終わっていないのに、
脚本が通ってしまったとかね。
とにかく現実では、思わぬ時に夢をかなえるチャンスが来る。
万端な準備のときには来なくて、
いつも中途半端だ。

それでもそれがしたいなら、
その不利な条件でもやるしかないのだ。
このへんのリアリティと、
ストーリー的に実現できそうなぎりぎりのバランスで、
うまく目的を設定できたときだけ、
面白いストーリーになるだろう。

で、本題。
後ろに理由があったとしても、
前に理由があったとしても、
どっちでもいいのだが、
どんなものであれ、
「今、どうしても〇〇しなければならない」
ということが、常にあるかどうかである。

これがないと、
登場人物は何をしていいかわからない。
「どうしてもしなくていいよ」と言われたら、
人は手を抜くからだ。
どうしても〇〇しなければならない、というわけでないなら、
明日に回してしまうだろう。
明日になったら、今日中にしなくてよいと分かった時点で、
さらに明日に回すだろう。
明日には本気出す、といってなにもしない男と同じになる。

だから、ストーリーにおいては、
「どうしても〇〇しなければならない」という理由が存在する。

それはたいてい切迫している。
今すぐ〇〇しないと大変なことになる、
という後ろからの理由がつけられているのは、
〇〇への強制力を持つ。

トイレへ行ったり、ネットを見ているひまなどない、
今すぐ、どうしても、〇〇しなければならない、
そういうことが、主人公たちを駆り立てるのだ。

死の危険はその最もわかりやすいものだ。
「それをしないと死ぬ」なら、とにかくやらないとね。
「それをしないと自分が自分でなくなる」
というアイデンティティーに関わるものもある。
単純に、やらないと世間での評判が落ちる、というものもある。
締め切りがあるのはとても強制力がある。
約束や契約も強制力がある。

どんなパターンが主人公たちを無理にでも行動させるのだろうか、
そのパターンをたくさん研究しておくと、
ストーリー展開のバリエーションをつくれるだろう。

これが時々途切れると、
ストーリーのテンションが下がる。
テンションとは、張った糸の強さだ。
つまり緊張の度合いだ。
それをしなければならないという、強制力の緊張だ。

それが途切れると、話はつまらなくなる。
今それをしなくていいよね、という、
明日から本気出す、という状況になってしまうからだ。

一瞬だけそうなることはなくもないけれど、
それが長く続くことはない。
そうでなければ緊張がないからだ。

つまり、
ストーリーというのは、
どこで切っても、
常に、
「○○をどうしても今すぐしなければならない」
が存在する。
常に、
緊張が支配している。緊迫している。
だから面白いのだ。


もしストーリーがだらけてきたら、
「今すぐ〇〇しなければならない」ように、
緊張する条件をつけてみよう。
うまい言い訳を考えるのと同じで、
うまいリアリティでそういう条件を付加してみよう。

ついでに。
〇〇はひとつだけとは限らない。
「○○を今すぐしなくてはならない、
それは△△をしなければならないよりも優先的だ。
しかし最終的には××をする必要がある。
それは〇〇の成否で決まってしまうのだ」
などのように、いくつか、複合的に同時に存在するとよい。
緊張は途切れないだろう。

登場人物は、だから、
常に状況にあおられている。
あおられていない登場人物はいない、
と思おう。
posted by おおおかとしひこ at 15:47| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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