キャラクターや設定が出来ても、
ストーリーはまだ0しか出来ていない。
ストーリーを作るには、全く別のベクトルを考えなければならない。
初心者ほど、
性格や設定を決めたら、
勝手にストーリーが出来ると夢想している。
実際はそうではない。
キャラクターは横軸、ストーリーは縦軸だ。
キャラクターが出来てもストーリーがないと、
それは一次元空間であって、
形を持たない。
別軸方向に踏み出して、初めてストーリーになる。
つまりそれはどういうことかというと、
「そのキャラクターにないことをする」である。
そのキャラクターの設定の範囲内で動いたり喋ったりするのは、
ストーリーではない。
横軸の範囲でしか動いていない。
キャラクターの設定範囲内のこと、
世界の設定範囲内のことをするのは、
ストーリーではない。
その横軸からはみ出して、別の軸側に走り始めると、
ストーリーが出現する。
なぜそこへ走り出したのか?
その結果どうなるか?
が発生する。
たとえば。
「家と会社しか往復しない詰まらないサラリーマン」が、
「帰りに自分の駅を降りない」としよう。
設定範囲内にないことをした。
なぜ?
たとえば、
「初恋の人を見つけ、話しかけるため」
「強盗に隣に座られ、このまま終点に来いと言われた」
「痴漢されている女性を見つけ、助けようと」
「会社を辞めて自殺するため」
などなどだ。
この、キャラクターにないこと、
いつもの世界設定にないことを事件という。
ストーリーの始まりは事件である。
それは、設定の範囲内で対処できるものではない。
だからそのキャラクターは行動した。
なぜか?それを動機という。
上の例では、
「恋が実るかもしれないという淡い期待のため」
「命を取られるから」
「正義感から」
「自殺したいから」
が動機である。
動機は、わざわざ説明しなくても察することが出来るのが最上だ。
上の例では、わざわざ説明するまでもなく理解できるだろう。
明確な目的がある場合もあれば、ない場合もある。
初恋の人の場合はゴールがセックスなのか喫茶店でしゃべるのかは、
まだ曖昧だろう。
強盗の例でも、「死にたくない」はあるかも知れないが、
具体的にこうしたい(この強盗から逃げたい、逮捕したいなど)
があるわけではない。
動機は前方向と後ろ方向がある。
前方向の動機は「○○したいから△△する」であり、
後ろ方向の動機は「○○しないと△△になってしまう」だ。
初恋の人は前方向の動機で、
強盗は後ろ方向の動機だ。
人間的に前向きとか後ろ向きとか関係なく、
動機の原因が自分の前にあるか後ろにあるかの違い。
自殺は後ろ向きの行動かもしれないが、
自分で望むわけだから前方向の動機である。
さて。
キャラクターがその設定にないことをし始めた。
その動機もなんとなくわかる。
次にすることは、その動機や行動に感情移入させることだ。
「わかる」と言わせればいい。
初恋の人の場合、わかるよね。
でもこの時彼に奥さんがいたらどうなるか。
分からない人もいればわかる人もいる。
しかし奥さんと喧嘩していたとしたら、わかるになるだろう。
こうやって、動機や行動に感情移入出来るように、
設定を作って誘導していくのだ。
強盗の例では、
彼が柔道4段と設定したら、隙を見て投げることが動機になるだろう。
だが彼は左側の敵しか投げられないと設定してみよう。
今右側に座られてしまった。
今後彼は左側に強盗を置くため、「席を変わろう」
と言うはずだ。
そうするとその提案は、観客は「わかる」となるわけだ。
このように、
設定は動機や行動の原因になる。
逆に、原因になるように設定は作る。
いつもと違うことをしはじめたそのキャラクターは、
どうやってその事件を終着に導くのか。
その終点までがストーリーだ。
その行動様式や原因は、キャラクターや設定に一部を借りる。
しかし、「次に何が起こるか」は設定に書いていない。
それがストーリーである。
それぞれのキャラクターは、
何を言い、何目的で、何をするのか。
それがストーリーである。
最初にキャラクターを外れたことをしたわけだ。
それに対して、誰かがそれに反応する。
初恋の人は声をかけても無視するかも知れないし、
今忙しいからと断るかも知れないし、
あー懐かしいこれから飲みにいこうよと誘うかも知れない。
あるいは、帰ってこないのをおかしいと思った奥さんから電話があるかもしれない。
そのような反応に対して、
また主人公は反応しなければならない。
何故なら、最初にキャラクターを外れたことをしたのは、
彼だからである。
彼には動機がある。
周囲はそれにリアクションした。
拒否されたから元に戻ってもいい。さらに突っ込んでもいい。
受け入れられたから突っ込んでもいい、怖くなって引き返してもいい。
奥さんの電話に、出てもでなくてもいい。
それに対して主人公が何かをしたり言ったりしたら、
また周囲はそれに反応するだろう。
そうやって、主人公は世界とラリーしてゆく。
最初の波紋が収まるまで。
設定の横軸の中で平行移動しかしていなかったのが、
まったく別の軸、縦軸を持つ。
それがストーリーだ。
重要なことは、
世界のリアクションは、人間であることだ。
たとえば4番目の自殺をしようとした話では、
そのまま夜の海に行って誰も目撃せずに死んだら、
ストーリーではない。
たとえば誰かに出会い、あんた何をしてるんだ、
と世界が反応しなければならない。
それに対して、自殺を強行してもいいし、やめてもいいし、
その人を道連れにしても構わない。
その人はまたそれに対してリアクションするだろう。
主人公の最初、キャラクターから外れた行動がなかったら、
これらのことは起こらなかった。
誰も誰とも出会わず、かかわり合うことなく、
世界設定に戻っていた。
最初の踏み出しこそ、ストーリーの最初である。
あとは、それがどうやって決着がつくかを、
最後まで面白おかしく作ればいいだけだ。
その行動や発言や結果が面白くなるように、
設定を準備しておくことも重要だ。
縦軸に横軸を利用すればいいわけだ。
そして縦軸を横軸に利用してもよい。
たとえば修行の結果必殺技が増えるのは、
ストーリーの結果、設定が追加されたわけだ。
設定は固定しつづけるか?
実は、ストーリーの進展によって、
少しずつ変化していく。
むしろ、その設定の変化こそが、
ストーリーの変遷になってゆく。
サラリーマンが奥さんの電話を無視して初恋の人と飲んだ結果、
離婚するかも知れないし、
会社で立場が悪くなるかも知れない。
最終的にそれがハッピーエンドになろうがバッドエンドになろうが、
それはストーリー次第だけど、
初期設定は縦軸のストーリーの結果、
次々に上書きされて行く、
ということは覚えておくべきことだ。
キャラクターは横軸。
ストーリーは縦軸。
両方ないと走れない。
2017年11月19日
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