2017年11月18日

あちらを立てればこちらが立たず

執筆中、特にリライト中、迷うことがある。
AにすべきかBにすべきか。

原稿に向かっている状態では近視眼的になる。
一端白紙に問題点を書き出すとよい。


たとえばシーンPとシーンQがあり、
PQと並べる選択肢をA、
QPと逆順にする選択肢をBとすることにする。
Aが優れているのかBがよいのか、
決定しない限りリライトは進まない。

しかしAを選ぶと利点と共に問題点が多々あり、
Bを選べばそれはそれで利点と問題点がある。
そういうややこしい状況が、
リライト中は頻発するものだ。
あちらを立てればこちらが立たずの状況だ。
たとえばAだとラインXの伏線と回収の関係がおかしいが、
BだとラインYの伏線と回収の関係がおかしい、
などである。
どちらも正解ではないときに、
複雑な要素において、あちらを立てればこちらが立たず、
のデッドロックに陥りやすい。

どっちが正解なのか?を判定するときに、
原稿を睨んでも答えは出ない。
もう一段引いた目で見ることだ。

そのためには、
白紙に表をつくって検討するのだ。

Aにした場合、Bにした場合と表を作り、
それぞれの利点と問題点を列記するとよい。

わざわざこういうことをするのは何故かというと、
「人が短期記憶で比較できるのは、精々3要素」
という経験則に基づいている。

あちらを立てればこちらが立たず、
の状況に陥っているときは、
短期記憶の範囲内で条件比較が出来ないときだ。
頭の中で全条件を入れ換えたり比較することは、
混乱するのである。

ということで、その複雑な条件を、
紙に書き出して表を作り、
一度に全部を眺めるようにするのである。


一覧性は、紙の最大の利点であり、
デジタルの最大の弱点だ。
短期記憶の範囲内で処理しきれないものは、
紙で一覧するのがよい。


たとえば引っ越す場所を選ぶときに、
ある選択肢が全ての要素で他より勝ることはほとんどない。
自由が丘と足立区と品川を比較するとき、
それぞれに利点と問題点がある。
それらを一覧するために紙に書き出す。
そうすると、
「自分の中で大事にしている要素」
「これがダメだと破綻する要素」を、
洗い出すことが出来るのだ。

引っ越しの選択肢を創ることは出来ないが、
リライトならば、選択肢CDEを新しく創ることも可能だ。
そのときの利点と問題点が、
またあちらを立てればこちらが立たずになるのなら、
それも表に加えて仔細に検討するとよい。


引いた目で見るということは、
短期記憶の範囲内で処理できないものごとを、
一度全部書き出して、
その中からまた短期記憶内で処理できる程度の量に、
本質を凝縮していくことに等しい。

結婚相手を決めるときにも使える方法論だけど、
それをリライトの選択肢に使ってダメな法はない。


あちらを立てればこちらが立たず。
その複雑な状況で、
外せないのはどれか。
一番大事なのはなにか。
それを見極めるために、
一端一覧するのである。

一番大事なことさえ決められれば、
他の要素を再創造して最高の選択肢に作り替えることは、
意外と簡単に出来たりする。
そうすれば、AでもBでもない、
第三の選択肢に収まることが多いよね。


リライトが難しいのは、
複雑な状況を一覧することが、
短期記憶で処理できる範囲を越えて困難だからだ。
じゃあ、紙の力を借りるのだ。
posted by おおおかとしひこ at 14:14| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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