その脚本はほんとうに面白い?
どんな素人にでもわかる方法を教えてあげよう。
もし面白いと感じたポイントがあれば、
列挙してみるとよい。
それが、点の面白さなのか、線の面白さなのか、
チェックする。
点の面白さとは、
時間軸に影響を受けない、場面単位の面白さだ。
主人公のキャラクター、告白する場面、飛び降りる場面、
アクションシーン、オープニングで引き込まれた、
あのシチュエーションが好き、あの台詞がよかった、
テーマ、
などなど。
時間的変化がない面白さ、と考えるとよい。
これに対して、線の面白さとは、
時間軸を持つ面白さのことだ。
時間変化というと、頭のなかではとらえにくいので、
「最初は○○だったけど、最終的には△△になったのが、
面白かった」
という捉え方で考えるとよい。
たとえば、
最初はよわっちい主人公が、最後には勇気が出て、成長した
一見価値のないものが、最後にはすごい価値になっていた
最初はすごい悪いやつが、最後にはいいやつになった
最初は○○になると思ったけど、最後は△△になってよかった
などだ。
これが沢山あればあるほど、
重層的複合的変化を描いており、
その脚本は重厚なものである可能性が高い。
それがたった一個しかないから面白くないというわけでもない。
重厚だが一個一個が小さい面白さしかなく、
一個しかないがそれがすごい面白い場合もある。
だから個数は関係ない。
問題は、線の面白さ、変化の面白さが、
あったか/なかったか、
それが面白かったか/面白くなかった(無理がある、ご都合など)だ。
最初は○○になると思ったけど、途中△△になって、
どうなるのかと思いきや結局それは投げっぱなしだった
は、線の面白さの中途半端なものなので、
減点対象である。
あるいは、
初登場のときはワクワクしたが、結局それは何にもならなかった
(出落ち)
も同様だ。
最初は○○、最後には△△、という変化がきちんとしていて、
しかもそのルートが、興味深く興奮したものであれば、
それは線の面白さを有していることになる。
脚本の面白さは、点の面白さと線の面白さがある。
点の面白さは、実は誰にでもできる。
パッと面白いことを思いつけばいいからだ。
グラフィックデザイナーが作る映画は、
このようなものであり、線の面白さがない。
(世紀のコケ方で、ADKが傾きかけ、
最初の監督が自殺した、大貫卓也の「flowers」を僕は許さない)
あるいは中途半端な漫才師が作る映画も、
落ちきっていない、場面だけの映画であることが多い。
(例「ドロップ」)
あるいは、現実があまりにも大きすぎて、
変化を期待せずなにも起こらないくそ映画もある。
(例「セトウツミ」「エキストランド」。
最近見た二本のくそ映画は、奇しくも同じ監督であった)
あるいは、CM出身が作ったくそ映画をみるとよい。
(「kino」「survive style 5+」「鈍獣」「犬と私の10の約束」
「ホノカアボーイ」「ナイスの森」「beautiful sunday」「好きだ。」)
点の面白さの才能は、
絵描きの才能、しゃべりの才能、
ちょっと面白い仕掛けを思いつく才能、
などでカバーすることができる。
しかしながら、
線の面白さの才能は、
ストーリーテリングの才能にしか書けない。
そのストーリーが面白いか?
を問うとき、
それは点の面白さなのか、線の面白さなのかを、
常にチェックしよう。
たとえば漫画「ファイアパンチ」も「GANTZ」も、
もとをたどれば「AKIRA」も、
点の面白さでしかなかった。
それは場面やキャラクターやエフェクトが面白いだけで、
なぜそうなったか、結局どうなったか、
それが何を期待させどう変遷したか、
最終的にどう満足したか、
などの、ストーリーそのものの面白さではなかった。
(「ファイアパンチ」はまだ連載中だが、
恐らくストーリー的な線の面白さには収束しない)
ドラマ「風魔の小次郎」の脚本がなぜ面白いかというと、
主人公小次郎の変化(成長)と、
ライバル壬生の変化(堕落、翻意、成長)が、
線の面白さとして結実しているからである。
これは原作版になかった、ドラマだけの線の面白さだ。
脚本の面白さは、
点の面白さと線の面白さで決まる。
点の面白さだけで線の面白さがないものは、
派手なだけで中身のないくずだ。
線の面白さだけで点の面白さがないものは、
見世物として引き付けが足りない。
両方のバランスが、脚本の面白さを決める。
製作委員会よ、映画に投資する人よ、
脚本のそこをチェックしなさい。
映画文化に寄与したいと思うなら、
その脚本のなにが面白いか、書き出してみなさい。
「最初は○○、最後には△△」が、
面白かったかどうかだ。
それにはある程度の文学や映画のリテラシーや教養が必要だけど、
どんな素人にでも訴えかけるほど優れているかもチェックしなさい。
2017年11月20日
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