前半と後半の折り返しです。
聖剣がついに登場。
あ、名オープニングはこれで見納めだよ!
来週からアレンジ版が来ちゃうぜ!
(それはそれでいいけどね)
前半戦は、
原作のエピソードにドラマを付加して膨らませていく、
という手法を取りました。
しかしアニメ夜叉編を見ても分かるように、
原作のエピソードだけでは6話で終わってしまう。
これを13話に引き延ばすには、
当然オリジナル展開が必要なわけです。
だからここ以降は原作ファンはついてこれないかもしれない。
でも、
ここまでついて来た人はドラマ版のファンになっていると、
僕らは確信していました。
ちゃんと面白い、心に来るドラマになっていると。
だからここらあたりからオリジナル展開をやっても、
ドラマならではのうねりがあれば受けるだろうと。
そういう読みをしていました。
我々は面白いドラマを作れると信用される必要があります。
1、2話の小次郎のぶっ飛んだ感じ。
3話の竜魔のストイックさと、伝統的忍び観
(小次郎を押さえつける淘汰圧。
これを覆すことがドラマの本当の主軸)。
4話、5話の双子の絆。
6話の感情を押し殺す、もう一人のもがく男。
7話の、守るべき人々とのドラマ。
風魔五人衆を各回にフィーチャーしながらも、
着実にドラマツルギーをはぐくんできました。
どうだ、我々に風魔という題材を任せてくれないか?
悪いようにはしない、むしろ楽しんでくれてるだろ?
そういう前半戦プレゼンだったのです。
もちろん、脱落した人はいるでしょう。
筋金入りの原作ファンは怒る人もいました。
チャラチャラしたホストが何やってんだと。
全然硬派じゃないよと。
ちなみに、一応硬派で真向勝負した「魁!男塾」という
実写映画があります。惨敗だと僕は考えます。
「現代」にふさわしくない内容だったからと考えます。
「現代に風魔をよみがえらせるとしたら」。
これが僕の大きなテーマでした。
当時に実写化すれば、確実に、
「スケバン刑事」「セーラー服反逆同盟」「少女コマンドーいずみ」
「ビーバップハイスクール」のようになっていたでしょう。
当時はそれで面白かったかもしれない。
しかし「現代」でそれを見て夢中になれるのか?
ということをずっと考えていました。
もちろん、僕が「今実写化したい」といってビジネスが始まったわけではありません。
「イケメンたちを集めてチャラチャラやった、
テニプリの真似ができないか」というのが、
恐らくは始まりだったと想像します。
テニスみたいに金がかからないのがいいぞ、となり、
風魔の木刀アクションに白羽の矢が立ったことは、
容易に想像できます。
聖闘士星矢はクロスに金がかかるし。
(スマップの舞台版は、写真を見る限りひどい)
美形を集めれば、腐女子がホモォォォォってついてきそうだね、
と、安易な考えで企画を進めたことはあきらかです。
だって「腐女子向け」って公言するような委員会です。
僕はそれに反対でした。
風魔はそういうものじゃない、
僕にとってはもっと神聖なものです。
ホモォォォォな作品でもないし、
もっと熱くて疾走する、同時代を駆け抜けた流星のような存在です。
しかし不本意な完結であった、
中途半端な作品もありました。
リンかけのあの最終回からの盛り上がりが、
風魔のラストには欠けていました。
聖剣戦争までは良かった。
しかし作品全体としてはイマイチだった。
車田正美も、「風魔にはもっと可能性があった」
とのちに述懐しているように、
風魔は「可能性」でした。
それを、ホモォォォォみたいな、
イケメンパラダイスにするのは俺が許さん、
そう思っていました。
監督というものは、
企画ができて、金集めの算段が立って、
大体の脚本の構成ができてからプロジェクトに入ります。
しかしそこで見た脚本の出来の悪さに、
僕は驚愕します。
一体あの風魔をなんだと思ってるんだと。
同時期にオンエアされた「ネギま!」をご覧になった方は、
どれくらいいるのかな。
とても志の低いドラマでした。
深夜に色々な若いキャストを集められる、というだけの企画で、
面白さは皆無でした。
それならストーリーじゃなくてバラエティやっとけや、
と怒ったものです。
これがのちに、ストーリーじゃなくてバラエティのみになってゆく、
AKBビジネスに化けていくとは、
当時の僕らは知る由もないでしょう。
風魔を、そういうものの餌食には絶対しない。
それくらい、僕は風魔が好きなのです。
そして不本意に終わったことが嫌いなのです。
だから「今、風魔を復活させる」というのを、
僕はチャンスと見ました。
あの不本意な感じを、ここで払拭できるかもしれないと。
風魔の本質とは何か。
今それを現代によみがえらせる意味は。
そういうことに正面から取り組まない限り、
風魔というドラマツルギーを、
今放送する意味なんてないのです。
若手イケメンを集めて、腐女子たちをキャーキャー言わせればいい、
だからこれだけの予算しかない、
という安直な制作委員会に対して、
言うこと聞いたふりをして、
「ほんとうの風魔」を作らなければならない。
面従腹背という奴です。
僕がほんとうに従うのは、
風魔という物語性に対してだけです。
数回で離れてしまった、元風魔ファンには申し訳ないことをしました。
安い予算で絵が安くて、あの車田世界の実写化としては、
物足りなくてすいませんでした。
実情をいうと、一話1000万です。
特撮の雄、仮面ライダーは一話3000万です。
大河ドラマは一話6000万です。
日本映画は、一本一億から三億です。
その差は、僕じゃ埋められないのです。
しかし、その差を埋める方法が、
たった一つだけある。
それが脚本です。
ストーリーです。
だから、僕は全てをひっくり返して、
一からストーリーを再構成しました。
壬生の離反は、最初からありました。
武蔵をその役にしてもよかったのですが、動機がない。
(蘭子と恋仲になり謀反する、という没プロットもありました)
自由になるキャラクターは、壬生を第一回で死なせなければいい、
と考えました。
原作の壬生は、第一話で死んだ。
二話以降の、松葉杖をついている壬生は、
この時の為に作った、
ほぼオリジナルキャラクターだといえます。
風魔夜叉編は、
風魔サイドと夜叉サイドの二大陣営の話だから、
風魔サイドの主役は小次郎、
夜叉サイドの主役は壬生、
だと僕は考えています。
ここを武蔵にするべきだったかどうかは、
今でも悩ましいところです。
そこまで改変したら、風魔であるかどうかのアイデンティティが保てない。
風魔世界において、
武蔵は最強かつ孤高かつお兄ちゃんでなければならない。
そこがぶれるのが嫌で、壬生にぶれぶれになってもらいました。
さあ、壬生の離反ドラマ。
我々は、ここまでで、信用されたと信じています。
なんせ7話は完全オリジナルだぜ。
どうだ、面白かっただろ?
じゃあ、これからも面白いぞ。
俺たちの、俺たちなりの、ドラマなりの、
風魔の小次郎を、味わってくれよ。
原作にあった疾走感、無常観を、
ドラマなりの形で表現して、
ストーリーは違うけど、
風魔っぽいものにしていくぞ。
もうひとつの風魔として、恥じないものをつくる。
僕はずっとそう考えていました。
制作委員会はどう思っていたかは、分かりません。
彼らの思い描くビジネスは、
おそらく「Rh+」以降に実現したはずです。
それが「面白いドラマ」になっていたとは、僕は思えません。
僕が従うのは、制作委員会ではなく、風魔です。
柳生屋敷で聖剣が激突する。
これは最初からあったプロットです。
白虎が狼煙を上げて風魔の居場所が知れたら、
それを襲撃することは戦術の必定だから。
(劉鵬回を挿入したくて、ちょい遅れの伝書鳩に活躍してもらった)
あれ? なんで白虎は柳生屋敷がわかったんだ?
……詰め甘し。
夜叉は風林火山などを探している。
それは関東制圧の真の目的、ということにしておきました。
聖剣奪取こそ、日本支配を裏から実現する手段であると、
そう考えていたはずです。
十聖剣の行方をどれだけ把握していたかは、謎のままとしておきます。
原作では、小次郎は灯篭を木刀で割ろうとしています。
武蔵を倒す為の修行です。
「木刀なんかで灯篭が割れるか」と蘭子さんは言うけど、
アンタ鞭で割っとるやないか、という原作ツッコミは、
残念ながら実写化されませんでしたね。
僕なら入れるけどなあ。
あと、サイキックソルジャーをどう入れ込むかは、
悩んだけど、もう堂々とやるしかないと開き直ります。
竜魔vs武蔵のサイキック戦、
小次郎vs壬生の聖剣戦を、
二部構成でやるというのが、
今回の大きなアイデアです。
特撮大会、吊り大会。
おれが監督したい重要回でしたねえ。
おれ、一話でしか結局吊りを経験できなかった。
(市野回のときの小次郎は、どうしてか武蔵に執着があるんです。
これは僕の解釈と一番異なるところです)
でも監督は二話ずつ交代なので、しょうがない。
まあ次の9話も陽炎の重要回だし、大一番の10話もあるし。
武蔵が死鏡剣をやり、
それを風林火山が割るのは、
もうクライマックスでやるつもりでしたから、
その竜魔武蔵の因縁をここで仕込んでおくことは、
きまっていたようなものです。
勿論、これで竜魔が倒れ、
小次郎が責任を感じていく、
というのも決まっていたこと。
大きなうねりが生じはじめました。
これが大河ドラマというものです。
原作は、ここまでうねっていない。
うねる前に疾走するような漫画でした。
そのスピード感は維持しながら、
それより長いマラソンを走る。
それがドラマ風魔です。
原作のあっさり感、べたついてない感が好きな人は、
原作をどうぞ。傑作です。そして惜しかった作品です。
俺たちは俺たちで、与えられた枠の中で、
最も風魔らしいドラマをつくろうと、もがいていました。
次回。このうねりのバトンは、小次郎に渡されます。
風林火山という重いバトンが。
2017年11月22日
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