調査の結果、なかなか興味深い結果で出たので、述べてみる。
日本語は膠着語なる言語に属する。
世界でもまれな言語種で、日本語と韓国語のみがこれに属する。
特徴は、主語や述語が次々に法則なく連接していくことだが、
今回は、活用語尾について特に考える。
膠着語の活用語尾は、
語幹と語尾の間になにかが張り付く。
たとえば、
「書く」の語幹は「書k」までだ。
これが「ない」に接続すると、
「書k」「a」「ない」と、「a」が接着剤になり、
「書かない」と未然形をつくる。
母音が接着剤になった例である。
(これは五段活用の未然形すべてにいえること)
他にもたくさん類例があるが、
語幹+接着剤+定型語尾
という活用の仕方をするのが膠着語であるところの日本語の特徴である。
まあここまでは文法の話だけど、
ここから打鍵の話である。
結論からいうと、
カタナ式は、
「すべての活用形において、
(一部の例外をのぞき)88%アルペジオ打鍵で対応する」
という結論が出た。
この場合のアルペジオは、
母音連接(子音を除いて母音だけでみたもの)であるとする。
つまり、右手で打つ母音部が、活用するとアルペジオで変化していく、
ということがいえたのだ。
活用形は、
動詞、形容詞、形容動詞、助動詞において存在する。
語幹が意味を決め、活用が文脈の流れをつくると考えると、
流れの制御において、
「アルペジオで流れを変えていく感覚である」
ということがカタナ式の優れたところである、
ということだ。
(アルペジオ打鍵は打鍵の種類の中で、
一番速く楽なものである。
次点が左右交互打鍵であろうか。
最悪なのは同手の段越え(上段から下段、または逆)だ)。
これは、今までのカナ配列や行段系にあった特徴であろうか。
すべてを調べたわけではないが、
おそらくカタナ式がはじめて到達した打鍵感ではないか?
その大きな理由に、カタナ式の右手三段に組まれた母音配置がある。
復習しておくと、
あい おう えい あう あん おん うえ(やややりにくい)
がアルペジオになり、
あお いう
が同指隣段になり、
おえ いん えん
が段越えになる。(逆順含む)
この配置のおかげで、活用変化がほぼアルペジオになる(後述)。
カナ配列はそもそも子音母音を分離していないので、
語尾変化を同一方式では打鍵できない。
(語尾につくひらがなで運指が変わってしまう。
すくなくとも、行の数だけパターンがある計算だ)
なので、活用変化については、バラバラ、というのが現実だろう。
行段系で見るならば、
SKY配列やDvorak(JP)は母音が一段だ。
人差指中指のアルペジオはそれぞれ、あお おう、うえ えい
であり、それ以外のアルペジオは著しく劣るだろう。
(ピアニストのような四指が器用な人は例外だと思う)
けいならべや和ならべの二段配列は、
カタナ式程度に母音アルペジオになるため、
以下の調査結果同様のものが得られる可能性がある。
(カタナ式の当初もそのようにしていた。
しかし右薬指が「お」「え」とふたつ母音に取られるので、
薬指が痛くなり、
より頻度の低い「y」担当とした経緯がある)
では、その調査結果。
動詞 五段活用 上一段活用 下一段活用
下二段活用(「得る」のみ) サ変(「する」のみ)
ラ変(「来る」のみ)
形容詞
形容動詞
助動詞 (動詞、形容詞、形容動詞と同じ活用の仕方のため、省略)
についてしらべた。
結果だけ知りたい方は、だいぶ先まで飛ばしても大丈夫。
それぞれ/で区切られたものは、
未然形、連用形、終止形、連体形、仮定形、命令形。
打鍵連接を見る目的で、あとにつく代表的な助動詞、助詞
(ない、う、れる、られる、せる、させる、た、て、
った、って、んだ んで、ます、ば)も込みで記述。
なお、これらのうち「んで」のみが段越えで、あとはアルペジオ。
動詞
五段活用 書く、行くなど
aない oう れる られる せる させる
/iた iて った って んだ んで iます
/u/u/eば/e
アルペジオ13/段越え1(んで)/単音3
上一段活用 起きる 過ぎるなど
iない iよう iられる iさせる
/iた iて
/iる/iる/iれば/iろ iよ
アルペジオ9/同指隣段2(いる)/段越え1(いろ)
下一段活用 見える、受けるなど
eない eよう eられる eさせる
/eた eて
/eる/eる/eれば/eろ eよ
アルペジオ10/隣段1(えよ)
下二段活用 得るのみ
eない eよう/eた
/uる/uる/uれ/eよ
アルペジオ6/隣段1(えよ)
サ変 するのみ
iない iよう/iた
/uる/uる/uれば/iろ eよ
アルペジオ7/段越え1(しろ)
ラ変 来るのみ
oない oよう/iた
/uる/uる/uれば/oい
アルペジオ5/隣段1(来ない)/段越え1(来い)
形容詞
かろう/かった くない う(なる)
/(し)い/い/ければ/かれ
アルペジオ12
形容動詞
だろう/だった でない に(なる)
/だ/なので/ならば/×
アルペジオ7
助動詞 五段、下一段、形容詞、形容動詞のパターンがあるが、
同様なので略
結果
計 アルペジオ69 単音3 隣段5 段越え4。
連接を考えるときに単音をのぞくと、
じつにアルペジオ率は88%。
同指隣段も打ちやすい次善の選択肢であるから、
活用変化において、
打ちやすい運指率が95%という驚異的な結果となった。
(うちアルペジオ88%)
このパーセンテージは組み合わせ数のパーセンテージであり、
実際の日本語の出現率ではない。
段越え4のうち「来い」「しろ」が2/78出現するかどうか、
調査がないのでなんともいえない。(たぶん少ないだろう)
なので、95というのはあくまで目安だ。
にしても、優秀な結果だと僕は思った。
つまり、
カタナ式は十中八九、
活用変化するとき打鍵がアルペジオになる。
カタナ式の打鍵感覚、
「流れが変わるところ、変化部分をアルペジオで打って行く」
が、調査の結果裏付けられた。
たとえばこれを下駄配列と比較すると、
下駄配列では、
先日、「〇る」という動詞形の終止形に多くアルペジオが発生することを評価した。
ところが、未然連用などの活用になると、
そことは関係ない所へ運指しなければならない。
「する」がアルペジオでも、「しない」「すれば」はアルペジオではない。
(「れば」が右中指薬指、左薬指小指のアルペジオではあるが、
僕はこれは苦手で苦痛だ)
それが惜しいと書いたことについて、
じゃあカタナ式はどうだろうと思い、
詳細に調査してみた次第だ。
僕は理系なので、国文法については中学レベルだから、
もっと詳細な議論があるかもしれない。
各言語の変化と打鍵方法について、
比較して論じられるような、
比較言語学出身の配列作者などいると、
面白いんだけどなあ。
(知っているうちでは、ドイツ語の格変化とかね)
カタナ式は流れに強い。
短く縮めるとそういうことなんだけど、
その根拠のひとつを証明できて、非常に興味深かった。
先日加速ワードについても書いた。
よく出て来ることばにアルペジオが頻出する。
そして語尾変化にもアルペジオが頻出する。
そういう配列だといえる。
僕はタイプウェルが文章の打鍵の目安にはならない、
と以前から考えている。
名詞が中心であり、動詞が終止形のみだからだ。
文章は、静止した単語を並べればできるものではない。
流れが存在する。
流れとは何か、がなかなか言えないけど、
少なくとも活用についてはその一部であるといえる。
勿論、そもそもの指を動かすことを鍛えるのに、
タイプウェルは役に立つ。
しかし、いくらタイプウェルをやっても、文章が速くなるわけではない。
精々「これタイプウェルで出た単語!」が速くなるだけだ。
(副次的に指の連接が鍛えられるということはありそうだが)
それ以外のボキャブラリーで主に書く僕は、
あまり役に立っていないかもだ。
ことばは流れ。
意志や考えや主張も、物語も流れ。
配列の連接が、それに効率的に寄与するべきだと、僕は考える。
2017年11月24日
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