2017年11月27日

動機は設定から作られる(こともある)

僕は設定とストーリーを分けて考えている。
設定は動かないものであって、
ストーリーは動くものであると。

動くもの、ストーリーの原動力は、
登場人物の動機、
そして登場人物同士の動機の、異なり具合だ。

この動機はどこから来るのかというと、
ストーリーの発端からも来るし、
設定からも来るのである。


つまり、設定とストーリーを切り分けて考えようとするのだが、
根っこのところが繋がっていたりする。

これが、ストーリーと設定を混同しやすく、
いつまでたっても、
ストーリーを作った気になって設定だけしか作っていなかったりする、
原因ではないかと考える。


なぜその人はそのようなことをしようとするのか。

そういう立場や責任があるから。
元々そうしたいと思っていたから。
それらが動機のとき、
その動機は設定に属しているといえる。

一方、
何かに出会って目標が明確になったとか、
誰かの目的を知り目的を切り替えるとか、
動機が失せてしまうとか、
などは、
ストーリーに属するものだと言える。

両者の差異はなにかというと、
「ストーリー開始時点より、過去にあるかどうか」だ。

ストーリー開始時点より以前に動機があるなら、
それは設定だ。
開始以後にその動機が形成されれば、
それはストーリーに属する。

つまり、動機が出来上がってる状態でスタートか、
動機が出来上がるところから描くかの違いだ。

「がんばれ元気」は、
最初からボクシングチャンピオンになるのが動機だった。
一方、
「あしたのジョー」は、
どこへぶつけていいか分からない情熱が、
ボクシングという矛先を得た。
矢吹丈の目的はボクシングを極めることだろうが、
本当の動機は「真っ白に燃え付きたい」だった、
ということが、後半になってようやく明らかになる。
(これは原作者高森朝雄(梶原一騎の別名)の用意した場面ではなく、
作画のちばてつやが作ったシーンとして有名だ)

僕の好みは後者だ。

動機が言葉で現せない、なにか不定形のものがあって、
それが物語のなかで具体的な目標を得て、
それが実現することで、
動機が実現する、というタイプが好きだ。
つまり、動機≠目的のタイプの話だ。

それは遅くとも第一ターニングポイントまでに確定していなければならないのは、
以前議論した通りだ。


なぜ前者があまり好きでないかというと、
話が一直線で、深みを帯びないからだと思う。

ただチャンピオンになりたいです、
チャンピオンになりました、
という話は、浅い気がする。

それよりも、
言葉に出来ない動機がもやもやとあり、
異物や事件と出会うことで、
それが具体的な形を持つようになり、
それが実現することで、
動機が昇華される、
という方が深いと考える。

何故なら、その方が感情移入の待ちが深く、
つまりは多くの人が感情移入しやすく、
カタルシス(代償行為による昇華、
つまり主人公の具体的目標の達成を見ることで、
主人公と同様に自分が何かをなし得たと全能感を得ること)
が深いような気がするからである。

ボクシングのチャンピオンになりたいんです、
はいなりました!は、カタルシスがないと思う。
そこに、「なぜ?」がないからだ。
なぜボクシングのチャンピオンになりたいのか?
それはスタート時点から決まっているから。
ああそうですか、設定ならしょうがないか、
となり、より深く感情移入出来ないと僕は思う。

「強いって何ですか?」
と知りたい(動機)主人公が、
偶然ボクシングに出会い、
それに取り憑かれていく(目的)、
という「はじめの一歩」は、
だから抜群に面白かった。
(あくまで伊達リカルド戦までだろう。
宮田戦が流れ、クロノスなんてどうでもよく、
テーマを見失ったままついに失速を始めた)



その動機は設定から来るものか?
だったら、
ストーリーの序盤で、
何かに出会うことで(異物)、
それを曲げてやろう。
最初の動機、獲得した動機のふたつがあり、
それらがクライマックスでアウフヘーベンするはずだ。


しかし、ストーリー上で0から動機を得ていては、
その主人公は誰でも良かったことになる。
じゃあ、最初に(別の)動機を持っていると、
逆算として面白くなるということだ。

バックストーリーは、つまりこの為に使うのだね。



その動機はどこから?
設定から来るし、
ストーリーからも来る。
動機や目的がひとつとも限らない。
複数あったり重ね合わせがあるときもあるよ。
posted by おおおかとしひこ at 22:39| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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