キャラクターメイキングあるいは分析に使うときに、
非常に強力な武器ではある。
しかし使い方を誤ると薄っぺらいものになってしまう。
キャラクターにはそれぞれ属性がある、
なんて言われ出したのは最近だ。
(最近っても2000年代くらいから?)
ツンデレ属性とか、妹属性とか。
○○らしさを示す言葉であるが、
元々はRPGが起源だと思う。
炎属性魔法とかね。
それがキャラクターにも類推的に、
○○属性というテンプレを貼りつけることで、
おもにゲーム世界を世界観の根底におく、
アニメやラノベ、及びその延長の日常系で、
キャラ特性の分類に使われてきた概念だと思う。
この属性というのは便利なタグのようなもので、
いくらでも貼りつけられる。
あるキャラクターには、
ツンデレ属性があり、妹属性とお姉ちゃん属性もあり、
巨乳属性もあり、料理ベタ属性もある、
みたいに御札を貼り付けられれば分類できたかのように見える。
これは大きく言うと、ラベリングという行為だ。
複雑なものにレッテル付けをすることで、
情報を圧縮して噛み砕く方法論である。
博物学や哲学は、ラベリングによって発展してきた。
ここまでは、
複雑なものを理解するのにラベリングは有効ということだ。
功罪の功である。
功罪の罪のほうはどういうことかというと、
ステレオタイプでしか物事を判断できなくなるという、
思考の浅さだ。
キャラクターにいくらラベルを貼っても、
キャラクターは人間にならないのである。
ためしに視点を逆転してみる。
あなた自身に属性をつけ、あなたを表現してみなさい。
いくつの属性をつければあなたという複雑怪奇な人間を表現出来るだろう?
ちなみに僕は何属性かな。
ここのブログの人格で言えば、
歯に衣着せぬ属性、下ネタ属性、分析属性といったところか。
しかしこれは僕の100%を表現していない。
おれはもっと色々あるし、
その属性じゃないときだってある。
あなたはどうだろう。
有限個の属性であなた自身を記述できるだろうか。
答えはノーだろう。
仮に有限個の属性で現在のあなたを記述できたとしても、
あなたが次に何を思い、何をするかまでは、
その属性の支配下にないかも知れない。
つまり、
属性は固定している。
その人が成長したり、
逆に後退したり、
考えを変えることがあったり、
気分を変えたくなったり、
状況に応じて変化しながら対処したり、
あるいは熟成されていくことなどについて、
属性は記述できない。
属性は分類だ。
ラベリングは、世界が固定しているときにしか出来ない。
世界の不変性に依存している。
博物学は世界が安定している前提で役に立つ。
仮に地球環境が激変し続けて、
種の進化や淘汰が無視できないスピードで進めば、
分類は常に後追いにしかならず、ラベリングに意味はないだろう。
つまり、フロンティアでは属性は役に立たない。
キャラ設定を作ってもストーリーが出来ないと悩む、
作劇初心者はとても多い。
それは、キャラクターを属性で制作してしまっているからではないか?
何枚ラベルを貼り付けたって、
それは固定したものでしかないのだ。
ストーリーとは、
固定された世界を端から端まで描写することではない。
それは地獄巡りと一緒で、
ただの現状説明や紹介である。
ストーリーとは、
それらが時間的にどう変化していくかということに、
面白味を見いだすことを言う。
属性は常に変化する。その変化がストーリーだ。
勿論、属性による分類は、
一定の強力な効果がある。
「既に完成した」作品を分析するときだ。
しかしあなたの作品はまだ完成していない。
まだ確定していないからだ。
あなたが死ねばあなたの属性は確定するかも知れないが、
あなたが生きている以上、
あなたの属性は日々変わって行く。
逆に、そのキャラクターの初期属性が、
どういう属性に何回チェンジしたか、
それがどれくらい劇的で面白いか、
というあたりを基準に、
ストーリーを組み立てることは可能かもしれない。
それでも、
属性によるラベリングは目が粗い籠のようで、
繊細な思いとか複雑な面白さをスルーしてしまう。
あなた自身を属性で記述するのが、
あまりにもステレオタイプとしてしか理解できないのと、
同じことだ。
キャラをたたせるために、
単純化して強くしていくことはよくあることだ。
そういうときにテンプレ属性は強い。
しかし所詮はテンプレで、
類型でしかなく、
オリジナルでないことは簡単に予測できる。
むしろ、テンプレとテンプレに収まらない何かの組み合わせが、
分かりやすさと新しさのバランスが取れるはずだよね。
属性は強力な武器だが、
限界がある。
万能ではない自覚を持ち、限定範囲内で使うならばよい。
しかしその外には、その範囲以上に広大な、
ストーリーなるものが存在していることを、
忘れてはならない。
2017年11月28日
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