2017年12月06日

【#エア再小次】其の十「告白」の巻

男は、責任を取ろうとするとき、男になるのかもしれない。
小次郎の「そうです」は、
最高の芝居だったと思う。



このシリーズの大一番です。
僕の監督生命を賭けた勝負作でした。
受けてよかったです。


僕は「風魔の小次郎」が腐女子向けと言われることに納得がいっていません。
もともとは少年漫画で、
だから少年や元少年だった人向けだと思うのです。
腐女子はあくまで裏であり、表は普通の人向けでいいと思うのです。

あえて「腐女子向け」と強調する制作委員会
(制作委員会とはスポンサー集団のこと)の意図が分からない。
まあ「なぜ今更風魔?」に対する回答として、
「テニミュの成功を見ても、
美男子たちが熱い戦いを繰り広げるのが、女子に人気である、
それは腐女子と呼ばれる、
男子たちのストーリーにBLを重ねて楽しむ人たちに受けているのだ。
だから風魔もそれに倣う。テニスラケットを木刀に代えて」
という理屈が成り立つからではあります。
ビジネスチャンスとしての理屈は分る。
でも、だったら、BLを最初からやればいいのに。
俺の大好きな風魔をその餌食にするのは、
各方面に間違った対応だと思うよ。

ちなみに、ホモと腐女子の好きなものは違うんだよね。
ほんとうのホモが見たいなら淫夢とかゲイのAVにすればいい。
僕は男子校育ちなので、そういうビニ本やビデオは出回っておりました。
裏ならなんでもよくて、そういうキワモノもたくさん見た。
腐女子が好きなのは、たぶんもっと違うやつ。
もっとドリームが入ってるやつ。
だって女子はそもそもドリームが好きなんですもの。
人は、現実に嫌気がさしているから、ドリームを信じるのですもの。
腐というのは、それがちょっと特殊な性癖なだけ。
(「腐は性癖」ということに気づいてから生理的嫌悪感はなくなった、
という話はどこかでしたかな。
そうか、オレの脚フェチと似たようなものか、と思ったら、
突然理解できた)

ということで、僕は、
腐女子要素など存在しないような、
少年漫画の実写化にふさわしい、
熱い男たちのドラマにしたつもりです。
妄想するならどうぞ、ふつうのやつより多めに餌はありますけど、
くらいの匙加減のつもりです。

今回のエア再放送に参加してくれている人で、
多分男子はほとんどいないかと思うので、
腐女子についての僕のスタンスをちゃんと書いています。
僕はあくまで、
かつて風魔が好きだった男子に向けて作っています。
脇がちょっと腐女子に甘いだけです。

前置きが長くなりました。
だって、本気のラブストーリーを、
オリジナルで書くんだぜ。
脚本のクレジットは政治的理由で笹野さんになってますが、
彼女の書いたセリフは、
「会場の外に聞こえるように声を出せ!」一行のみで、
あとはすべて僕が書いています。
勿論、メインプロットから全て僕です。
だからこれは、僕の完全オリジナルストーリーです。
本気でやりました。
切ないラブストーリー、人の心に触れるやさしい温度感、
それとトンデモコントが僕の持ち味だとすれば、
それを最大限に開放した一篇です。

今でも心の奥底に、大事にしまっている人がいるといいなあ、
と思っています。

さあみんなできゅんきゅんしよう。




原作では、
最初にギャラクティカマグナムと同じエフェクトで、
BAKOOOOOMと姫子の写真に恋をしたはずの小次郎は、
結局一度も恋の話をしていません。

僕はリンかけの石松の、
剣崎に決闘を挑む話が大好きなのですが、
そういう恋の顛末を描いた話は、
車田正美の漫画ではあれだけではないでしょうか。
加奈ちゃんはどうなったんだっけ。
矢吹丈に告白する白木葉子なみのドラマが欲しかったなあ。
聖闘士星矢でも、シャイナさんってどうなったんだっけ。
城戸沙織もお飾りっぽかったなあ。

原作「風魔の小次郎」は忍者漫画でありバトル漫画ですが、
その根底には「硬派漫画」というカテゴリがあります。
本宮ひろ志から始まる、
ヤンキー(ろくブルとかビーバップとか)でない、硬派の漫画。
(過剰に受け継いだのが宮下あきら。
ボギーザグレイトのころはまだハードボイルドだったんだけど)
ケンカにあけくれ、女は従えず、猿山のボスになることが目的。
たとえば応援団や不良軍団が舞台になることが多いけど、
いわば「任侠ものの学生版」というのが正しいと思います。
バンカラという言葉を覚えている人はもういないかもなあ。
「男坂」は、そのルーツに車田がファンタジーなしで挑んだ作品でしたが、
「時代が違っていた」というのが、
なんとなくの結論のような気がしています。
未完ネタだけが残ってしまった。
(その反動でファンタジーバリバリの聖闘士星矢ではじけるんだから、
やはり御大はすげえよ……。ちなみに男坂二部は未読)



で、そもそも硬派漫画にラブコメはない。
男はだまって○○の時代だし。
でも風魔の初期はラブコメになりかけていた。
けどできなかった。
たとえば「コータローまかりとおる!」のようなものが、出来なかった。
そこに、僕は決着をつけたいと思っていました。
石松の顛末のように。


ただお飾りでヒロインキャラがいるだけではなく、
「物語のヒロイン」になるべきだと考えていました。
原作の姫子はただの記号です。
なんなら夢の中で出た全裸がピーク。
ドラマの姫子は人間になるべきだと考えていました。
蘭子さんは……えっと、ギャグ枠かな。
(でも蘭子さんのラブストーリーが人気なんだよね。
小次郎と姫子はもっと心に秘めた完成品の宝石のようで、
いじってはいけない感じのものになっている気がします)


遊園地は、実は僕の得意なモチーフです。
学生映画でも遊園地でデートシーン撮ったし、
出世作クレラップのCMでも遊園地編がありました。

夢のような世界がそこにあるから、
現実と対比させやすいのです。
「みんなあんなに楽しそうなのに、私たちと来たら」
が言いやすい場所だから。
「楽しい場所」は、ドラマではそうではない場所に変わるものです。
(小次郎と姫子がしゃべったベンチは実在します。
まだあるかどうかわからないけど、聖地めぐりコースにどうぞ)


蘭子と小次郎は姉弟のようですね。
僕は弟一人で、姉の存在もよくわからんのですが、
なんか二人の関係はいいと思います。
「竜魔 竜魔 竜魔……」は最高に好き。
今時の子たちはこういう恋をしてるのかねえ。
フリックで書いてたりして。
好きな人の名前を書くだけでドキドキするよね。
おれはやったよ。
この二人の会話は、原作にないのに、なぜかあるような気がするよね。


絵里奈の「十年」は、とても重い。
それは最終回に向けたフラグでもあります。
でもこの時点ではラブコメなので、
あまり匂わさないようにはしています。

ちなみに、「GとIの間にあるもの」という架空タイトルがとても好き。
「自慰」と「愛」にもかかっているという神タイトル(自画自賛)。
没タイトルで「四十八手百選」「世界のピロートーク」
というのもあったなあ。
(腐の方が過剰に反応するということで却下)
今だにどれも秀逸。


副団長のラブストーリーはとても切ないですねえ。
この応援のシーンの為だけに、
応援団にしたからねえ。
最初はチアガール部だったんだけど、
このシーンを思いついてから男っぽい応援団にしたんだった。
「どうせこの世がままならぬのなら、
泣かせて見せようホトトギス」は僕の作詞作曲です。
嗚呼バンカラ。


竜魔と小次郎は、対比的に恋に対して行動します。
己の心を押し隠す、伝統的な忍び。
己の心をあけすけにして相手の懐へ飛びこむ、新しい忍び。

後者がリーダーでは皆が困るんだろうけど、
竜魔が末っ子だったら、彼も自分の心をオープンにしただろうか。
オープンにしたからこそ、片目をうしなったのだろうか。
(はい隙間与えました)



恋ってなんだ。愛ってなんだ。
僕は、少なくとも男にとっての恋とは、
「理解者を得ること」だと考えています。
自分を理解してくれる人で、
かつその人も十分に理解していること。
その心の通じ合いこそ、恋や愛ではないかと。

硬派ですから、男所帯です。
先輩や先達に認められることが、猿山では大事なことです。
能力、考えている事、これまでの流れと行く先、
これらが男所帯のコミュニティで一角をなすことが、
男にとってのアイデンティティです。
男は男に認められて、一端の者になる。
ドラマ風魔の小次郎は、ただの小次郎が「風魔の小次郎」
になる話として僕は位置付けました。
子供の山猿が組織の中で一員として認められるまでの、
アイデンティティ模索の話でもあると。
高校生の話だし。

で、
その「認められる」は内輪に認められるということ。
自分の所属している組織内の話だからね。
父親がその代表になるのが思春期で、
部長や社長がその代表になるのがサラリーマン時代です。

男にとって認められたいものはもうひとつある。
外界です。
外界に漕ぎだして、認められて、初めて男は男になれる。
武者修行はそれだし、上京や渡米はもちろんそうです。
同時に、女という外界に認められることも、
男が男になるということです。

小次郎は、そんなことは理屈化せずに、
ただ姫子が好きなだけです。
好きな人に認められたくて、
小次郎は闘う。
命を懸けて夜叉と闘い、
命を懸けて風林火山を修行するのは、
仕事だからしかたなく嫌々やっているのではなく、
忍びだから本能でやっているわけでもなく、
姫子の為に必要だと考えているからです。
でも姫子に心配をかけるわけにはいかない。
だから黒い手袋は、小次郎の仮面です。
(裸学ランに黒手袋という、変質者レベル3のビジュアル)

それを取ったとき、ほんとうの小次郎が出て来る。
お調子者で、ぴょんぴょん飛ぶのが小次郎の本性じゃない。
それはあくまで表面の小次郎で、
ほんとうは何を考えているかなんて、
小次郎はなかなか言わない。
好きな人にはなおさらかも。
だって嫌われたくないからね。


小次郎は、死ぬか、武蔵を殺して風魔の里へ帰ってしまう。
姫子にとって辛すぎる二択。
それでも小次郎は前に進む。風と共に。
それは姫子が好きだから。

鉄塔の上で見た風景は、
いつもの風景だけど特別な風景です。
好きな人と見る風景は、なんだって特別ですけどね。
好きな人と見れば、屋台のおでん屋だってシンデレラ城以上だよね。



姫子は悩んでいます。
「強い善人であれ」と諭した先代の謎かけに、
答えきれない重圧を感じている。
総長代理の代理を名乗る、まだまだ弱い十七歳。
(僕は昔女子高生ではなかったですが、
十七歳であったことはあります)

でも弱い人間でも、強くなれる瞬間がある。
認めてくれる人がいれば。
その人のことを、深く知ることができれば。

「告白」は、「好きです付き合ってください」という儀式ではない。
あなたのことを認めていて、
私はこういう人間です、
と、宣言することかもしれない。

「私のいいとこ、十個言って?」というのは、
どっかの雑誌で見た、アホカップルの奴です。
それを言うと女は満足する、みたいなやつ。
でも姫子が言うことで、
キャラにない事なので面白かったかなと。
優等生の姫子を崩したいというのがありました。
ただの十七歳の女の子なんだという、
ただの人間なんだという。

姫子は不安だったのだと思います。
小次郎はそれに答えた。
小次郎だって不安。
でも姫子は小次郎の手を握ることで、
小次郎の仮面でないところを認めた。
永遠の理解者を、二人は得たのです。

この別れが二人の運命でも。


こういう恋は、物語の中でしか描けません。
リアルだと、ここまでプラトニックになることはないかもしれない。
どっかで我欲が入ってしまいがち。
物語だからこそ、こういう「理想」が描けるのかもなあと。

女子のみなさん、男子を認めてあげて。
ポイントあがるよ。
男子のみなさん、女子を認めてあげよう。
たぶん仲よくなれる。
好きな人の味方になってあげることは、
たとえ恋が叶わなくてもいいことだと思います。
(おれは味方になると厳しくしてしまうからなあ……)

味方がいると分かったら、
命を捨てる覚悟ができる。
それが人間ではないでしょうか。





縁側の二人の寝そべりはとても好きです。
風魔は青春ドラマでもあるんだよね。
今青春ドラマってあるのかな。若者は悩まないのかなあ。

さて、壬生が最後のひと暴れをしますよ。
陽炎の「ほんとうのチェスとは、部屋の中で籠ってないでこうするのさ」の台詞大好き。
陽炎には名セリフ多いなあ。俺が好きなキャラだからねえ。
(未来警察ウラシマンのルードヴィッヒに、
田代スパイスをかけると出来ます)

渋谷のスクランブル交差点に武蔵がいるってのが、
当時は衝撃でしたねえ。
この世界とつながっているのかよと。
9話の警察の件といい、ちょいちょいリアルを持ち込んで、
この世界とつながっている感じが、いい距離感だと思います。

ちなみにコンテでは壬生のアップで終わっているんだけど、
撮影現場で、
「小次郎が壬生の気配のような運命のようなものを感じて振り返る」
というラストに変えました。
なかなかいい続く感になったかな。


さあ、いよいよ第二ターニングポイント=風林火山の完成に、
最後のピースがはまるとき。

燃やせ命の炎。
麗羅も、兜丸も、武蔵も、絵里奈も、
壬生も小次郎も。


もうあとは「あああああああ」しか言葉が出ない。
全速力で走っていくぞ!
クライマックスとはそういうものです。

(DVDの巻構成が僕はちょっと不満。
#1#2
#3#4#5
#6#7#8
#9#10#11
#12#13
が、ストーリー的に正しい構成だよね……)

では、また来週!!!
posted by おおおかとしひこ at 23:35| Comment(0) | 実写版「風魔の小次郎」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。