2017年12月17日

どれくらい過去を設定するといいか

使う分だけ。
その見極めが難しい。
料理の材料を買うのと同じ。


使わなかった設定というのは、
意外と沢山ある。
特に慣れてない人ほど大目に用意して、
その殆どを使わない経験をすることになる。

余り物の材料で作ったのがスピンオフか。

じゃあどれくらい最初に用意しとけばいいのか。
足りない時には作ればいい、
と、少なめから始めるのが実はコツだと思う。

だからといって、
「書きながら考える」ことを推奨しているわけではない。

事前に用意するのはプロット(レシピ)であり、
キャラクター(食材)でないということ。

大概これを逆の分量で用意してしまう。
キャラクター設定ばかりあって、
ストーリーがちっとも生まれないのは、
スーパーマーケットにただ食材がごろごろ並んでいるだけだ。
必要なのはレシピである。

レシピが先に完璧にあり、
あとはそれに適した食材を買いに行けば、
料理は無駄なく出来るのだ。

もっとも、
レシピにない、ものすごいいいネタに出会うことも、
稀によくある。
こういうときは、
食材を生かしてレシピを変えるか、
その食材を諦めるかだ。
旬のネタなら、レシピを変えることになるだろうか。

でもそれはすぐ腐るんだよね。
つまり、ネタの鮮度も大事だけど、
そのネタはいつまで持つやつかな、
と少し長期的な目で見ることも必要だ。


話がそれた。

キャラクターの設定や過去ばかり作っていても、
ストーリーはちっとも生まれない。
あなたは八百屋や魚屋の、仕入れ係ではない。

本題は過去設定だった。

もし過去設定がないままに人物を登場させると、
「あなたの中にあるテンプレキャラ」にしかならない。
代表的な人物像を、たいてい数人は飼っていると思うが、
その範囲内でしかない。

もっとも陳腐な人物テンプレは、「主人公テンプレ」だ。
「ヒロインテンプレ」「クールライバルテンプレ」
「師匠テンプレ」「敵テンプレ」あたりが、
典型的なテンプレだろうか。
「ボクっ子テンプレ」「ツンデレテンプレ」
「ワイルドテンプレ」「DQNテンプレ」「デカブツテンプレ」
「内気覚醒テンプレ」「悪い女テンプレ」
などもあるかもだ。
これに適当な属性をひとつまたは複数乗っけるのが、
浅くて間違ったキャラクターメイキングである。
(なぜなら、誰にでも出来るから。
ということはそこから頭一つ抜けれないということ)

こうしたテンプレでないキャラクターを作るには、
過去を設定するとよい。
その人独自の過去を創作することで、
「それがあり今のその人があるから、
単なるテンプレとは違う深みがある」
というところまで可能だ。

単純に、「孤児で泥棒として生きてきた」
「部活で決勝まで行ったが、自分のミスで負けた」
と付け加えるだけで、
それぞれのテンプレが違って見えてくる。

コツとしては、
表面に見えているのと逆の過去を作るのが王道だ。
クールだけど本当は熱い心を持っていて、
しかし酷い目にあったので心を閉ざしている、
なんてのは基本中の基本だろうね。
家庭環境のせいで不良だけど、
ほんとは子猫を拾う優しい番長は、
永遠のイコンであるしね。

熱血な人が熱血な過去を持っていても、
そりゃそうだろとか、まあ予想通り、
となるので、わざわざ作る意味はない。
意外な過去を作っていくとよい。

そういうことを作っておくと、
キャラクターが生き生きする。
自分で書くときに役に立つのだ。

クールなキャラクターが実は鉄道オタクで、
そのことだけは熱く語るという設定にしておくなら、
電車移動のシーンは面白く書けるだろう。
社員旅行の幹事になったら、
電車移動を強く主張するだろうし。
人はガラリと別人にならないから、
その電車のことがかつては熱いなにかの象徴で、
なにかのきっかけでクールになり、
しかし電車だけは夢中になってしまう、
なんて風に過去を設定すると、
そのキャラクターに厚みや深みがでるし、
それをストーリーに応用できる。

もっとも、一回も使わないなら、
たとえば一度も電車に乗らないし、
電車を目撃するシーンもなければ、
それはないのと同じで、
使わずに捨てられる食材と同じだ、
ということである。

それでも、あなたが、テンプレ的でない、
生きたキャラクターが書けるようになるなら、
あったほうがいいことではある。
しかし気をつけるべきことは、
「本編にないなら、ない」
ということだけだ。
これを分かっているのなら、
そのキャラクターを生き生きと、
かつ本編に絡めて使いこなせるだろう。


「ファイブスター物語」は、
エルガイムで使い切れなかった、
膨大な裏設定をもとに始めたスピンオフ
(もしくはリブート)である。
一本の話にするには食材が多すぎて、
煮込んだスープより食材の山の方が沢山ある、
一番の例だと僕は考えている。
もうそういうエンターテイメントだと考えるしかないが、
プロのストーリーものとしては、
最悪の部類であるということを肝に銘じよう。
永野護はデザイナー(食材調達者)であり、
ストーリーテラー(シェフ)ではないということだ。
(まあ二次創作用の食材調達者としては、需要はあるかも知れない)


気をつけるべきことは、
過去を被らせてはいけないということ。
意外とやっちゃうんだよね。
妻を失った人の隣に、妹を失った人がいたりね。
それで共鳴してストーリーが生まれるなら強い要素だけど、
ストーリーに関係なかったりすると、
もうそれは属性テンプレでしかなくなる。


どれくらい過去を設定することよいか。
こういうものは、会見が出るところ。
料理初心者は大目に買っちゃうよね。
何回か失敗しながらやっていこう。
足りなきゃ漁りに行くスタンスでやってみよう。
(中盤で考え始めることもよくある)
料理と同じで、あれあそこの棚にしまっといたはず、
というのもあったりする。
posted by おおおかとしひこ at 13:03| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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