2017年12月20日

【#エア再小次】其の十二「決戦」の巻

ウルトラマンはなんで3分しか戦えないかって?
予算の関係さ。
30分でバトル3分が、ふつうのドラマの予算の限界なのさ。
でも、バトルてんこ盛りが許されるときがある。
それが第一話と真ん中と、最終回だ。
第一話は少林サッカーや吊りや地下駐車場と三回バトルやった。
真ん中(8話)はサイキックバトルと聖剣バトルの二回やれた。

ラス立ち(ラストの大立ち回り)、やるぜ。
これまでのドラマが全部収束する、大河の結末。


市野さんお疲れさまでした。
クランクアップは同じ最終日でしたね。
誠士館の夜叉姫の間。
小次郎が夜叉面を割る大ラスの前に、
市野監督は「笑わせるな!」のシーンを撮っていた筈。
でも小一時間しかやらず、僕の最終回と12話の撮影のために時間を空けてくれました。
同じ日にクランクアップができて感慨深かったです。
たぶんプロデューサーが同日になるように、
狙っただろうな。
(ドキュメント的には、
小次郎が夜叉面を割るところでクランクアップですが、
我々技術班には、いろいろ素材を撮ることもあり。
なんと撮影最後のカットは、
魔矢の矢を鞭が落す、CG合成用の誰もいない空舞台という)


夜叉姫(岡本奈月)はいつもこの部屋でしか出番がなく、
絡みづらい曲者ぞろいで、怖かったとのちに言っています。
意外と素顔は普通の女の子だったんだねえ。
女優ってすげえや。


さてさてさて。
大一番、姫子がさらわれました。
待ったなし。
忍び文字を読むのは原作どおり小龍の役割。
燃えるのも原作通り。
(矢文を放ったのは陽炎ですが)
いよいよ小次郎の目標であった、石灯篭が割れた時。

彼岸の向こうに、風になったやつらが現れます。

僕はこれを脚本を書いたときに思い付き、
「麗羅(鈴木拡樹)は涙のクランクアップをしちゃったよ」
とプロデューサーにぼやかれたのを覚えています。
泣きのもう一回。
でも最高の手向けになった、重要なシーンですよね。

実は風魔が全員そろっている絵は、
これとオープニングとエンディングだけなんですよ。
「5話で琳彪書き忘れた事件」があったけど。

原作でも一回もそろっていないのに、
風魔の歴史通じて全員そろっているのはここだけなんて、
なかなか粋だと思うんだよねえ。


風林火山を風のように使う。
麗羅の言ったことは風林火山のヒントでした。
琳彪アニキも、兜丸アニキも小次郎に託す。
項羽は小龍に、羽使いのメッセージを託し。
俺たちは風だ。
ゆくぞ風魔の小次郎。
最高のタイトルコールになったと思います。

最終回間際に来てタイトルの意味が明らかになるタイプのやつ、
僕好きなんですけど、この感覚分かる人いるかなあ。
永遠の刹那は名曲。
いろんな意味を重ねてあります。
もともとは
「このドラマが全部終わったとして(未来から回想した)、
小次郎が去ったあとの姫子の寂しさ」
みたいなことをテーマに描いてくれ、
と僕がオーダーしたものです。

男女特定していないことで、
色々に想像できる、
いい歌詞になりましたね。
誰もが誰かを思い浮かべながら歌える、いい曲です。
「この別れが二人の定めでも」。
どの二人を想像しますかね。

終わってしまったあとは、もう一度小次郎に会いたい、
僕らの気持ちを代弁しているともいえます。
みんな、東宝さんに続編希望のメールを!



誠士館で出てきた下忍たちは、全部合成です。
カメラを動かさずにおいて、
階段を何回もおりて階段ごと合成しています。
だってあの夜叉の制服9着しかないからね。
(あとあと死んでるやつらも全部合成)

風に舞う木の葉とともに、スローで歩いてくる風魔の五人。
最高にカッコイイぜ。
ああ、ヒーローものを俺はやってるんだなあと、
ようやく思えます。
ようやく、バトル漫画風魔をやれる。


実写でただバトルしていると、
ほんとに詰まらないんですよ。
ダンスシーンやミュージカルシーンと同じで、
5分もすればすぐに飽きちゃう。
ダンスや歌やバトルなどの刺激的な要素は、
実はストーリーが密接に関係しています。

たとえば昔僕はカンフー映画が大好きで、
中学生のころ、
カンフーシーンだけ集めた二時間ビデオとかつくったことがあるんです。
どんなに鼻血が出るほど楽しいビデオになるだろうという、
期待とは裏腹に、
10分過ぎたら、まったく退屈なものになったことがあり、
これが現在の僕のストーリー重視の考え方に、
強く影響を与えています。
ただバトルを映していても、
なんにも面白くないんだと。

ウルトラマンの闘うシーンだけ集めた番組
「ウルトラファイト」をご存知でしょうか。
子供は闘うシーンだけ見て満足するんだけど、
大人はそれじゃつまらないんだよね。
「なんでこいつらは闘うのか」というストーリーがいる。
プロレスだって、抗争や因縁があるから盛り上がるわけで、
ただのバトルだけ出されても面白くない。
アクション監督はすごいアクションを考えるのが仕事だから、
監督・脚本家の仕事というのは、
「なぜ彼らは闘うのか」
に答える、すごい、面白い、ひりひりする、わくわくする、
ストーリーを用意しなければならない。
極端にいえば、
じゃんけんして勝ち負けを決めたって、
なお面白いストーリーを考えるのが、
脚本家の仕事なのですよ。


(最近ただセックスするだけのAVが詰まらなくて、
ストーリーのあるやつを好んでみています。
それが真実かどうかはおいといて、
プロレスのようにフィクションとして楽しめればよし、
と考えています。
ただセックスするだけのAVなんて、
ウルトラファイトと同じだぜ。
10分もしないうちに飽きちゃう。
やることは大体一緒だからね)



ということで、丁寧に丁寧に、
ストーリー=因縁を仕込んできました。
なぜ彼らが闘うのか?
もう感情移入しまくった我々には明らかです。
だから小次郎の、竜魔の、武蔵の、壬生の、陽炎の、
霧風の、小龍の、劉鵬の、姫子の、夜叉姫の、
一挙手一投足に我々は目が離せないのです。

そこまで仕込めば、
あとはあああといいながら闘いを眺めるのみ。
理想のラス立ちになったと思います。
ほんとにこれ30分だったの?
誰もが見終えた時にそう思える、
ものすごく濃い時間だったと思います。

「どきやがれドサンピン!」
ひさしぶりの車田台詞にしびれようぜ。
力持ちの劉鵬の、敵を持ち上げるやつもずっとやりたかった。
項羽も小龍も冠についていない、「白羽陣」を使う小龍、
というのも、このドラマの醍醐味といえましょう。

竜魔対武蔵の部屋内での戦いは、
本来外で撮るつもりだったのですが、
現場で雨が降ってきたので急遽部屋の中に替えたのです。
なんか異様な空間のバトルになったので、結果オーライ。
死鏡を木刀に乗せるのは、
編集中に思いついたアイデア。
格闘ゲームみたいでカッコイイ。

あと、武蔵が死鏡剣やるのずっとやりたかったんだなあ。
「不知火の目を通して」は聖闘士星矢ですな。
不知火の死は無駄にはしないぜ。

姫子と夜叉姫の頂上対談は、
原作になかったゆえに、
ぜひともやりたいと思っていた場面です。
結果、さらわれて転がされた、
かなりエロイ場面になりましたが。
なかなかす巻きにした女子高生撮る機会がないもので、
もっとエロイアングルを探すべきでしたかね。

壬生が最後に姉を振り返るショットは、
僕のこだわりの絵です。
あれが二人が最後にかわした視線なんだよね。
今週のハイライトでも使ってる、お気に入りのカットです。
カメラマンの菊池さんは、
こういうときにスーパーワイドレンズで煽るのが得意で、
特撮ファンからは、「菊池アングル」と言われてるのを、
後にしりました。
なんでこういうところから撮るんだろう、
ふつうロングレンズだよなあ、
と思うんだけど、カメラマンがそれがやりたいなら、
いい絵になるだろうと期待した絵だったりします。

夜叉姫の狂ったような高笑いは最高。
「見たか人間よ、これが忍びだ」は、
夜叉姫の一番お気にいりの台詞かなあ。
一応忍びには、いまだに戸籍がない、エタ非人の下、
というスタンスで描いており、
その立場が下の所ら夜叉姫は聖剣でのしあがろうとしていた、
ということに設定していますが、
それは続編で!

キャラソンが後半にしか間に合わなかったので、
今回はキャラソン消費回になっちゃってますね。
あと「魔矢に再出番を」と言ったのは、
プロデューサーの大滝さんだったと思います。
魔矢VS蘭子の絵は最高でした。
僕が脚フェチなので絵面は最高です。
蘭子の「飛び道具はいずれ尽きるもの」
という、人生にも通じる台詞は好き。


さて、みなさんは映像の現場など参加したことがないとおもいますので、
この前後編がどれくらい気合が入ったものか、
数字でご覧ください。
ハリウッド映画 一日一シーン せいぜい10カット
ハリウッドでも多撮りで有名な、マイケル・ベイ
一日25カット
日本のCM一日10〜30カット
朝ドラ 一日3ページ(3分相当)
日本の映画 一日4ページ
風魔 一日8ページ
最終回撮影時、一日最高108カット
倒れるかと思ったよ。でもこれ最高の仕事になった。
アクションは楽しいんだけど、
カット数が多いからほんとに体力がもたない。
(もちろん金があれば、一日に撮る量を減らせる。
しかしこれは深夜枠)

昔伝説に聞いた、
「レッド、敵を倒す。」という台本の一行を、
100カットに割って三日かけて撮った、
みたいなことが、日本の現場ではよくあります。
金と体力があるときはできるでしょうな。
まあ、最終回だから、気合が入ってできることでありますよ。


あとは壬生との最後の決戦かな。
もう何もいうことはない。
最高の決着だったと思います。
ありがとう壬生。君はもう一人の主役だった。
ここで武蔵に託された黄金剣が脱皮して、
原作に接続されるのは、
傑作アイデアだと思っています。
吠える二人。もう決戦しかないではないか。
最終回の一回前の役割、全てを収束させる神回でした。

次回、雪を降らせるのにどれくらい苦労したか。
泣いても笑っても最終回。
だったら笑って生きようぜ。


ほんとにあっという間のエア再放送でしたねえ。
最終回であいましょう。
posted by おおおかとしひこ at 23:32| Comment(0) | 実写版「風魔の小次郎」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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