2017年12月25日

ストーリーには、目的語が必要だ

ストーリーとは一語の動詞で書けるべきだ。
これは今までも書いてきた。
しかしメアリースー症候群は、
これを自動詞にしてしまう。


倒す。悪を。
告白する。あの子に。
謝る。あの人に、あのことを。
持つ。荷物を。
壊す。ビルを。

これらは、目的語を持つ、
他動詞である。

動詞には二種類ある。
自動詞と他動詞だ。
目的語を持たないものを自動詞、
持つものを他動詞というのは、
大昔文法でやっただろう。

メアリースー症候群は、
目的語を持たない、
自動詞で書くことだ。

泣く。
立つ。
一歩踏み出す。
辛いと感じる。

大体この辺の自動詞が多い。

あるいは、他動詞でも受身形になる。

ありがとうと感謝される。
ごめんねって言われる。
よく頑張ったと励まされる。
認めてもらう。
実は好きでしたと言われる。
幸せにしてやるぜと言われる。
プロポーズされる。

僕がいわゆる少女漫画に昔から馴染めなかったのは、
このただ一点だ。
大人になってからは、
シンデレラ症候群でない、
女の作家の書いた話もあると知ってからは、
少女漫画に二種類あることを知ったけど。
たとえば萩尾望都はいい。

シンデレラ症候群、のび太症候群、メアリースー症候群は、
物語を書く上では、
殆ど同じ意味である。

自動詞か、受身形という動詞をメインにする、
という点で。


努力せずに幸せにされたい。
その胎児のような心がその正体だ。

それ自体は人間全てが持つもので、
それに関して責めるつもりはない。
だけどそれを人前で言うかな、
ということだろうね。


メアリースー症候群は、
私と、他人であるところの、物語の主人公が分離していない状態のことである。
私が努力せずに幸せにしてほしいのと、
全く同様に、
他人であるところの、
主人公も努力せずに幸せにされたい、
と捉えているのだ。

身内ならまあわかる。
妹を傷つけずに幸せに出来る男を求めたり、
後輩にひどいことを言う輩から守りたいのは、
人ならばやる。

だが、主人公は身内ではない。

作者にとっては身内の意識がつい強くなってしまうが、
全ての観客にとって、身内ではない。

他人の子供の運動会ビデオをよく例に出すけど、
他人の身内話なんて、
ほんとにどうでもいい。

それを、作者の身内意識が、曇らせる。


主人公は身内でも作者でもない。
どこかで野垂れ死にしそうな、
どこかの別の人だ。

どこか別の人が、
自動詞したり受身形されることを見て、
何が面白いのだ。


身内でもなんでもない人が、
面白くなるには、
「何かを」「何かする」しかないのだ。
つまり、目的語を、他動詞するのだ。

あなたの主人公は、
目的語を持っているか?

なければ、それはシンデレラかのび太かメアリースーだ。


怠惰なる我々は、
心根のところはシンデレラかのび太かメアリースーだ。
それが主人公の私小説は、
やっぱり何もしないだけの語り上手でしかないと思う。

それは世界に愚痴って何もしないことと同じだよな。



この原稿は、1500からのメアリースーとの打ち合わせのために、
冷静になるために書いている。
posted by おおおかとしひこ at 12:45| Comment(2) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰してます。
長く格闘していた作品がひと区切りつき、コメントできるほどの余裕が生まれたところです。
自動詞と受け身の指摘は、面白いですね。「一歩踏み出す」なんかはついやってしまいそうな感じがして、ドキッとしました笑
1500からの打ち合わせ、がんばってください。
Posted by phan at 2017年12月25日 14:54
phanさんコメントありがとうございます。

1500からの打ち合わせはプロデューサーに阻止されました。
会わずにコントロールされていることに、
不信と憤りを感じており、
もう勝手にやるぞと。
こういう一枚岩にならないのが、
昨今の映像業界のダメなところですね。
Posted by おおおかとしひこ at 2017年12月27日 10:13
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