小道具をうまく使え。これは何度か書いてきた。
「アパートの鍵、貸します」に使われる小道具はとても良い。
最近書いた話から、いくつかの例を。
(母に長生きして欲しくて、
彼女が頂戴と言った)タバコを捨てる。
(周囲の噂が気になっていて、
ずっと見ていたスマホを)落として割る。
(リハビリの為の杖に)エールを落書きする。
(母が祝ってくれた誕生日祝いを台無しにした、
罪滅ぼしに)同じケーキを買ってくる。
などなど。
特徴が二つある。
「小道具がこれまでの文脈を意味している」、
「小道具への動詞で意思を示す」だ。
それぞれ、
長生きしてくださいと言うこと、
周囲を気にしないという決意、
頑張れという励まし、
罪滅ぼしと謝罪、
を示すために、
「代わりのものを使う」。
しかも、
捨てる、落として割る、書く、ケーキの箱を開ける、
という、「動詞で示す」。
映画において、
最も激しい表現は、
動くことで示すことだ。
ムービーだからムーブだ。
小説なら台詞が強いかも知れない。
言葉だけの世界だからね。
漫画なら、見開き(の静止画)が一番強いだろう。
ムービーの一番強い絵は、動詞だ。
映画とは、動詞でなにかを表現するメディアだと言っても過言ではない。
動くといっても色々あるが、
手話やパントマイムでなく意思を伝えるには、
小道具を使うのが手っ取り早いわけだ。
で、小道具に何かを象徴させておいて、
それに対して動詞で強い表現をすることで、
映画は最も強い表現を得るのだ。
泣き叫んだり好きですと大声で言うのは、
強い表現ではない。
舞台では大声は強いかもしれないが、
映画ではただうるさいだけだ。
映画で一番強い表現は、
むしろ台詞がないことのほうが多い。
だとすると、
台詞なしの、動詞で意思を示す時が、
最も強い表現になる。
ここに音楽を絡めれば鉄板になるわけだね。
強い場面を書きたかったらどうするか?
まず強い意思を示す場面をつくろう。
曖昧ではっきりしないのは、強くない。
台詞でまず叫んだり囁いたりしてみよう。
それでも足りなきゃ、
動詞で表現する。
小道具を、
叩く、壊す、捨てる、燃やす、折る、などの壊す系は否定に、
組み立てる、おさめる、しまう、なでる、などは肯定系に、
それぞれなるだろう。
何かを何かで代わりにする。
それが象徴表現だ。
そこに込められた意味と、強い動作があり、
かつ劇的なターニングポイントになれば、
それはその物語のイコンになるだろう。
2017年12月29日
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