2018年01月17日

ストーリーとは、他人と自分を幸せにすることだ

他人を幸せにするだけでもだめだ。
自分を幸せにするだけでもだめだ。
リアル社会と同じで、
全員が幸せになるのがベストということ。


四文字熟語では、
自他共栄とか自他共楽などという。
急に宗教くさくなるね。
でも、以下のダメな例を見ると、
そりゃそうかと思えるよ。

・単に他人を助けるだけ。
それは仕事の範囲だ。
警官や消防隊や軍隊は他人を助けるヒロイックな職業だが、
あくまでそれは自分の能力を普通に使う、
日常茶飯事のひとつだ。
事務のおばちゃんが伝票を切るのと同等である。
それは日常茶飯事であり、物語ではない。
もしそんなスーパーヒーローに助けられる話があるとしたら、
主人公はスーパーヒーローではなく、
助けられる側である可能性が高い。

・自己犠牲で他人を助けるだけ。
痛みのない「他人を助ける」だと、
ドラマチックに欠けるという直感が働くのか、
こういうラストにもっていくパターンは、
まああったりする。
でもこれで満足するかなあ。
「マトリックス・レボリューションズ」(3)
のラスト、ネオが死ぬのは良くなかったよね。
自己犠牲は、現実では尊いかも知れないが、
物語のなかでは魅力に欠ける。
感情移入していればなおのこと。

それでもラストに死ぬ「あしたのジョー」は、
「真っ白に燃え尽きたい」という、
主人公の望みが叶えられたハッピーエンドだからこそ、
人の記憶に残った。
最初からジョーは乾いていた。
力石の死後も乾いていた。
だから乾かなくなった、が終わりなのだ。

もし自己犠牲をラストに持ってくるなら、
それが最初からあった、
「主人公が幸せになる方法」だとすれば、
問題ないかも知れない。

マトリックスのネオは、
「これが本当の世界でない」
と疑問を感じていたのが最初だから、
その帰結として自己犠牲というのは、
辻褄が合わない。
だから違和感があるラストになっている。

逆にいうと、その辻褄を合わせること、
すなわち当初の主人公の望みが叶うことが、
ストーリーである。


・自分からは何もしない癖に、他人に幸せにしてもらう。
出たメアリースー。
これは作者の怠惰な無意識の現れで、
作者だけの自己満足(サービスされたい)であることは、
既に沢山書いている。
他人ののび太はケツを蹴り上げたくなる。
私はのび太だがお前は違うと、全員が思っている。

・自分だけ幸せになり、他人は全員不幸。
ただの悪人じゃねえか。
でも最近、不幸に追いおとす他人は、
そもそも悪人である、
というパターンは多い。
悪人なら全員不幸にして構わないという言い訳で、
そいつらを不幸に追いおとすことに、
暗い喜びを感じる話は、
ダークファンタジーなどと言う。
勿論ファンタジーだけでなく、
現実を舞台にしてもよい。

もし不幸にされる人々が、
悪人でなければ、
主人公も悪ということになる。
これはなんか気持ち悪い。
勝手に修羅の国で殺し合いしてれば、
となってしまう。
修羅の国が好きな人だけの、マイナー作にとどまるだろう。

そういうこともなく、
ただ主人公が幸せになって他人が不幸になるなら、
それはなんだか面白くない。
視野が狭い印象を受けるよね。


・全員不幸に。
短編ならよくある。
でも二時間付き合わせて全員不幸はないよなあ。
時間を損した感じになるよなあ。

・主人公とヒロインが結ばれ、あとはしらん。
セカイ系。
セカイ系の問題は、主人公とヒロインの、
第1者第2者はいるが、第三者がいないことだ。
つまり客観性を欠いている。
つまり、バカップルは勝手にやってろとなる。
所構わずキスするカップルとセカイ系は同一の心理である。
メアリースーと同じで、
気持ちいいのは作者だけだ。

そうそう、ファイアパンチのクソエンドがこの例だ。




などなど、
色々な裏のパターンを見る限り、
主人公は自らを幸せにし、
かつ皆を幸せにすることが、
ベストだと思う。(背理法)

(ちなみに「バタフライエフェクト」という傑作では、
ひとつだけ例外のあるラストとなっている。
もうそれがたまらなくいいのだ。未見なら是非)


自分一人で幸せになっても、
自分が他人に助けられるテイクだけでも、
他人を助けるギブだけでも、
面白くない。

ああ、なんかめでたしめでたしだねえ、
見て良かったなあ、
というカタルシスの為には、
最終的に全員が幸せになるのがよい。
それを解決したのが主人公だ。
そういうものが、ストーリーであるべきだと思う。

つまり主人公は、
最終的には自力で、
自分の問題を解決し、
かつ、世界の問題(世間の問題)も、
同時に解決しなければならない。

勿論他人の助けを借りてもよいが、
概ねその人がいたから全部が進むべきだ。

これをまず思いつかなければ、
ストーリーなんて全部オナニーだよ。

難しいね。
だから尊い。
posted by おおおかとしひこ at 10:53| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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