小道具の効果的な方法にはいろいろある。
割と簡単なのは、
「それがその人のメッセージになっている」
というやつ。
・食卓に離婚届とハンコが置いてある。
・前の走者が区間記録を出して渡したタスキ。
・死んだ母の残した、成人式用の着物。
・彼女に贈る指輪。
・仲直りのためにお菓子を買ってくる。
・タイムカプセルに入れた、集合写真。
これらは、そのモノを贈った人間の、
メッセージが込められている。
それぞれ、
「離婚しましょう」
「たのむ」
「着てほしい」
「結婚しよう」
「ごめんね、仲直りしよう」
「もう一度みんなで会おう」
だろう。
逆に言うと、
こういう台詞を書くとき、
台詞を使わずに、
小道具で代用したほうがぐっとくる。
何かを伝えたいときに、
直接台詞で言ってもいいし、
小道具で伝えてもいいということだ。
二種類あるのだから、
どっちも使えるようになろうということだ。
直接いうのは馬鹿でも出来るから、
ちょっと粋をこらしたり、
含みを持たせようということだ。
小道具で伝えるメッセージは、
時に台詞を上回る。
バレンタインにチョコをもらうだけできゅんきゅんする。
小道具が時に雄弁になるのは、
私たち日本人が、意思表示が下手な文化だからだと思う。
普段思っていてもいえないことや、
いざという時に言いたいことを、
モノに託すのは、
平安時代からの伝統かも知れない。
小粋なものがベストだ。
そこに文化がある。
でも、文化の匂いがなにもなくても、
意味が登場人物と観客に伝われば、
それが文化になることがある。
昔の映画か漫画か忘れたけど、
まだ缶ジュースのトップが取れるやつ(プルトップ)
の時代のとき、それを婚約指輪がわりに彼女にしてあげるシーンがあった。
それを伏線に使って、
結婚式の指輪の交換の時に、
ダイヤモンドを捨てて缶ジュースを持ってくる、
という場面があったと思う。
たかが100円(当時)の婚約指輪だが、
二人にとっては一番大事なものになる、
そういう場面だった。
これを台詞で説明したって野暮なだけだ。
無言こそ雄弁になるだろう。
もう一つ小道具が印象的になる理由は、
「百聞は一見にしかず」だからだろうね。
どんなに説明したって、
一発動画を見ればわかることは山ほどある。
(逆にyoutubeの発達で、
私たちは説明能力を鍛えるチャンスを奪われている。
見たことない人にもその面白さや凄みを伝える能力こそ、
私たち作家に必要な文章力だ)
説明には時間がかかるが、
絵なら一秒だ。
その伝わり方のスピードこそが、
強い表現になる。
もっとも、「普段言わないこと」を、
あえて台詞で言うのは、
それはそれで効果的だ。
結婚後何年もたった夫婦が、
互いに「愛してます」なんていわないけど、
それをあえて言わせることで、
日常に波風を立てることが出来るだろう。
つまり。
普通のことを普通に言ったり、してても、
ストーリーになんかなりゃしない。
効果的な方法で、
ノーマルな日常を切り裂いていくのだ。
2018年01月24日
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