2018年01月24日

小道具の使い方:メッセージにする

小道具の効果的な方法にはいろいろある。

割と簡単なのは、
「それがその人のメッセージになっている」
というやつ。


・食卓に離婚届とハンコが置いてある。
・前の走者が区間記録を出して渡したタスキ。
・死んだ母の残した、成人式用の着物。
・彼女に贈る指輪。
・仲直りのためにお菓子を買ってくる。
・タイムカプセルに入れた、集合写真。

これらは、そのモノを贈った人間の、
メッセージが込められている。
それぞれ、
「離婚しましょう」
「たのむ」
「着てほしい」
「結婚しよう」
「ごめんね、仲直りしよう」
「もう一度みんなで会おう」
だろう。

逆に言うと、
こういう台詞を書くとき、
台詞を使わずに、
小道具で代用したほうがぐっとくる。

何かを伝えたいときに、
直接台詞で言ってもいいし、
小道具で伝えてもいいということだ。
二種類あるのだから、
どっちも使えるようになろうということだ。

直接いうのは馬鹿でも出来るから、
ちょっと粋をこらしたり、
含みを持たせようということだ。

小道具で伝えるメッセージは、
時に台詞を上回る。
バレンタインにチョコをもらうだけできゅんきゅんする。


小道具が時に雄弁になるのは、
私たち日本人が、意思表示が下手な文化だからだと思う。
普段思っていてもいえないことや、
いざという時に言いたいことを、
モノに託すのは、
平安時代からの伝統かも知れない。

小粋なものがベストだ。
そこに文化がある。
でも、文化の匂いがなにもなくても、
意味が登場人物と観客に伝われば、
それが文化になることがある。

昔の映画か漫画か忘れたけど、
まだ缶ジュースのトップが取れるやつ(プルトップ)
の時代のとき、それを婚約指輪がわりに彼女にしてあげるシーンがあった。
それを伏線に使って、
結婚式の指輪の交換の時に、
ダイヤモンドを捨てて缶ジュースを持ってくる、
という場面があったと思う。
たかが100円(当時)の婚約指輪だが、
二人にとっては一番大事なものになる、
そういう場面だった。

これを台詞で説明したって野暮なだけだ。
無言こそ雄弁になるだろう。

もう一つ小道具が印象的になる理由は、
「百聞は一見にしかず」だからだろうね。
どんなに説明したって、
一発動画を見ればわかることは山ほどある。
(逆にyoutubeの発達で、
私たちは説明能力を鍛えるチャンスを奪われている。
見たことない人にもその面白さや凄みを伝える能力こそ、
私たち作家に必要な文章力だ)

説明には時間がかかるが、
絵なら一秒だ。
その伝わり方のスピードこそが、
強い表現になる。


もっとも、「普段言わないこと」を、
あえて台詞で言うのは、
それはそれで効果的だ。
結婚後何年もたった夫婦が、
互いに「愛してます」なんていわないけど、
それをあえて言わせることで、
日常に波風を立てることが出来るだろう。


つまり。
普通のことを普通に言ったり、してても、
ストーリーになんかなりゃしない。

効果的な方法で、
ノーマルな日常を切り裂いていくのだ。
posted by おおおかとしひこ at 14:41| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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