2018年01月30日

発見があること

よく言われることだ。

それは「へえそんなこと知らなかった」
という、雑学や蘊蓄を混ぜることではない。


まあ、最悪なにもないよりかは、
雑学蘊蓄でごまかしていく手もある。
知られていない史実を掘り起こして、
「本当はこうだったのに、誰も知らないんだなあ」
と感心させるのも、発見ではある。

しかしそれは、
「ストーリーとは発見である」ということから少し遠い。

正しい発見とは、
「人間にはこんな面がある」とか、
「これまで考えもしなかった考え方」とか、
「これは不思議だがありえることかも」とか、
「こうだとすると、このような新しい考え方になるのか」
とかのことだ。

つまりガワでなく、
ストーリーの本質部分に発見がある(点)、
または、その本質の変容や影響(線)に発見がある、
ということ。

「賢者の贈り物」を例に取れば、
二人の記念日に、
夫は自慢の時計を売って妻の美しい髪をとく櫛を買い、
妻は自慢の髪を切って売り、夫の時計のバンドを買う。
ここで私たちが発見することは、
「お互いが思うあまり似たような行動をして、
偶然の奇跡が起こることもある不思議(シンクロニシティ)」だ。
それが対称形になっていることで、
私たちは夫婦の理想を見るのである。


これは、ストーリーにしか出来ない発見である。
ストーリーにおける発見とは、
人間の本質、人間関係の本質、人間社会の本質を、
ストーリーによって、
さも新しく発見したかのように思わせるのだ。

ああ、人ってそういうことあるよね。
ああ、人間ってのは。
ああ、そうだそうだ。
ああ、そういう風に出来てるよな。

そんな風なことで、
かつ、新しい何かを提供することが、
私たち作家たる者のするべきことである。

そもそもそれが新鮮で手垢のついてないことを、
しなければならない。

人生経験が足りないと、
その発見が幼いことがある。
幼いなりの七転八倒がうまく描けていれば可愛げもあるんだが、
幼いやつが幼い悟りを開いてドヤ顔していると、
我々大人は嘲笑する。

分かりやすい例は意識高い系だ。
小さい知識でドヤ顔してる馬鹿を見ると、
火炎放射器で燃やしたくなるよね。

幼い悟りでも、
謙虚で必死で向上心があれば、
まだ緩い目で見ていられる。

問題はそこで完成だと胡座をかくことだ。



私たちは日々発見をするべきだ。
人間にはこういうところがあると。

そしてそれを、上手にストーリーの形式に落とし込めたとき、
オリジナルの物語になる。
それがストーリーを書くという行為のことだと、
僕は考えている。

勿論、ストーリーによって、
皮肉、批評、批判から、
応援、推薦、賛歌から、
第三者的判断保留、冷徹な突き放しまで、
様々にあるだろう。
それはストーリー形式と、描く本質的発見によって、
異なってくることは間違いない。


なにも発見がないから、
あなたのストーリーはただ形式をなぞっているだけなのだ。

(この文章は「地獄楽」批評を兼ねています)
posted by おおおかとしひこ at 10:47| Comment(2) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
気になったので地獄楽読んでみました。
記事で幼い発見を批判してらっしゃいますが
具体的にどこらへんでしょう。
処刑人の女が「殺しには殺す覚悟が必要だったんだ」
と悟る場面や
主人公が自分は実は空っぽじゃなかったんだと悟る場面とか。
こういう心はすでに描き尽くされていて
手垢まみれだよ、ということでしょうか。

この作品の批評も兼ねた記事とのことですが、
具体的指摘をお願いしたいです。
もしかしたら大岡監督の批評を勘違いしてるかもしれないので。
スッキリさせときたいのでどうかよろしくお願いします。
Posted by モヤットボール at 2018年01月31日 23:11
モヤットボールさんコメントありがとうございます。

細かいところが色々あって全部指摘するのも面倒なので、
「ごく普通の平凡な内面の女を愛するところ」
一個を上げるにとどめます。
ビジュアルが醜女というのは気に入りましたが、
あまりにも内面が面白くない。
何かありそうだから後々明かされるのかも知れないけど、
第1話だけで「生きて君の元へ戻る!」というほどの動機にはなりえないと思います。
本人がそう思ってるだけで、我々読者は、
「その通りだ!」と思えていない。

どうして主人公はそう思うに至ったのかが面白くないと、
そこは面白くないポイントになります。
ただ逆目の設定を出していて本人だけが面白がってる感じが、
師匠に似てないか?と。
Posted by おおおかとしひこ at 2018年02月01日 01:03
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