親指シフト(Nicola配列)は効率がいい。
それはデフォのローマ字(以下Qwertyローマ字)や、
デフォのカナ入力(以下JISカナ入力)に比べて、の話だ。
親指シフトより効率がよく、日本語入力によいと思われる配列は、
少なくとも10ある。
親指シフト(Nicola配列)の欠点を上げていこう。
まず指の使用度分布の話。
以下に示すのは、
新下駄配列、月配列、薙刀式の指使用度分布である。
(文字の使用頻度はkouy氏の100万字日本語統計から。
各文字の頻度をもとに濁音、半濁音、拗音別のデータを適宜換算、
各キーの使用頻度、8指の頻度、シフトの頻度を計算。
分母は「8指の全打鍵数」とした。
従ってシフトの頻度は、
「8指の打鍵中に含まれるシフトの割合」である)
中段(ホーム段)を最も使用し、
人差指から小指にかけてなだらかに使用率が下がっている、
という傾向が読み取れる。
人間の指は、どの指がもっとも器用で強いか?
親指をのぞけば、人差指>中指>薬指>小指の順であろう。
かつ右利きの人が多いため、右手をより使ったほうが合理的だ。
(配列の中には、右利き用/左利き用と、
鏡面対称の二つを用意してあるものもある)
小指や薬指を沢山使い、
人差し指や中指をあまり使わない配列は、
合理的とはいわない。
三者の中ではとくに薙刀式は、
上段中指の使用率を増やしてでも、
薬指小指の使用率をさげようという意図が読み取れる。
次に親指シフトの指使用分布をあげる。
新下駄配列、月配列、薙刀式にくらべ、
小指などの外側の使用が多い。
これは弱い指に負担が多いということ。
その代わり、左人差し指右中指の使用頻度が低い。
とくに左人差し指中段の使用率の低さ、
右薬指中段の使用率の高さが突出して異常だ。
なおQwertyローマ字、JISカナの指使用分布は以下である。
Qwertyローマ字は、
ホーム段(中段)を使わずに上下に分散している、
左小指の酷使、
ホームキー(両手人差し指中段)をほとんど使わないなど、
不合理だらけだ。
JISカナ入力は、
指の範囲が恐ろしく広く
(そもそもブラインドタッチを想定していないらしいが)、
両小指の使用頻度が高すぎる。
ホーム段を使う合理性もなく、
突出して使うキーがある。
(6.1, 9.3はそれぞれ「い」「゛」)
これらから言えることは、
親指シフトの指使いの合理性は、
Qwertyローマ字とJISカナよりましだが、
新下駄配列、月配列、薙刀式よりは劣る、ということだ。
また以下に、
飛鳥配列、新JIS配列、SKY配列、カタナ式
の指使用分布を示す。
それぞれに合理的指使いであることが読み取れる。
(TRON配列、蜂蜜小梅配列、けいならべは割愛する)
飛鳥は右手偏重主義であることを明言している。
新JISは右薬指の「゛」が使用分布の偏りの原因だが、
それ以外は非常に合理的だ。
(これを改良したのが月配列で、
それはこの頻度表からも読み取れる)
SKY、カタナ式はそれぞれに美しい分布を示している。
どれだけの文章を打つのかによって、
指の疲労度は変ってくる。
一日2000文字(ブログ一記事、メール数通)程度であれば、
どの配列を使ってもたいして差はないだろう。
しかし一日5000文字、一万字を打つ人にとっては、
指の疲労度は死活問題である。
合理性のある配列のほうがいいことは論を待たない。
親指シフトは作家に好まれた過去がある。
しかしそれは80年代の、
Qwertyローマ字かJISカナ入力しかなかった時代のことであり、
他の十傑がなかった時代の話である。
親指シフトは、「先駆けとしては優秀」というだけにすぎない。
次回は親指シフトの批判その2として、
運指の問題をとりあげる。
【入力の話3】につづく。
http://oookaworks.seesaa.net/article/456684495.html?1565860229
2018年02月05日
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