親指シフト(Nicola配列)の運指には問題がある。
それを検証していこう。
日本語の五十音は、バラバラの出現頻度である。
つまり等確率で出現しない。
「あ」が1/50では出てこないということだ。
文字を習う時は50をただ等価に並べるから、
一見どの文字も等価値に見えるが、
実は、「メジャーな文字」と「マイナーな文字」がある。
kouy氏の100万字統計によれば、
出現頻度のベスト20とワースト20は以下である。
(原本は拗音別にカウントしているため、それを換算しての数字)
ベスト1〜10
い う ん か の と し た 、 く
ベスト11〜20
な て に こ は る 。 が で っ
ワースト20〜11
ぎ び ざ ぐ ぜ へ べ ゆ ぼ ぷ
ワースト10〜1
ぞ ぱ ぽ づ ぬ ぴ ぺ ヴ ぢ ゎ
統計の取り方によって多少の前後はあるが、
どの統計を見ても、偏っていなければ傾向は同じだ。
文字入力を考えるとき、
これらのメジャーな文字が打ちやすい所にあり、
マイナーな文字がマイナーな場所にあると、
合理的な指づかいになる。
打ちやすい場所にマイナーな文字があるのは無駄だし、
打ちにくい場所にメジャーな文字があるのは不合理だ。
各カナ配列について、
メジャー20文字がどこにあるか赤い円で示す。
(円の半径は出現率に比例、つまり面積は二乗に比例)
親指シフト(Nicola配列)の欠点は、
メジャーベスト3「い」「う」「ん」を、
人差指にも中指にもおかず、
小指と薬指に置いたことだ。
文字には、連接というものがある。
ある文字から特定の文字に繋がる傾向が強かったり、
逆もある。
メジャーな文字ほど、
強く連接する文字の種類が多いことが知られている。
つまりメジャー文字とは多連接文字でもある。
すなわち親指シフト(Nicola配列)は、
常に「い」「う」「ん」の「小指薬指経由の運指」を、
強いられている配列だといえるだろう。
他に上げた配列は、
ほとんどが「い」「う」「ん」を、
器用な人差指か、強い中指の担当にしていて、
滑らかな運指連接を実現していることが図から読みとれる。
(TRON配列の右小指の「ん」は僕はあまり納得していない)
また、運指の面では、
特定のメジャー連接が打ちやすい指運びになるように、
配慮してある配列もある。
飛鳥配列では、
「です」「ます」が指運びのしやすいアルペジオ運指
(隣合う指でタラっと打てる運指)を実現しているし、
薙刀式では、
「ある」「ない」「する」をアルペジオとしている。
また新下駄配列や月配列では、
「右手の文字に連接する文字は左手に、
左手に連接する文字は右手に置く」(左右交互打鍵)
という考え方で文字を配置し、
右→左→右……と高速に打鍵していくことを実現している。
ローマ字においては、
二重母音の「ai」「ei」「ou」や「you」が頻出するため、
カタナ式、けいならべでは、
それがアルペジオになるように母音を配置している。
親指シフト(Nicola配列)の配置上の工夫は、
「ち」「く」「つ」「っ」「き」のが右手にあることだ。
これは、
「漢語由来の漢字の二音目は、いうんきくつちっの8音しかない」
という法則を利用している。
漢字を打つ時に、
主に左手から右手の流れがあるということになるわけだ。
しかし、
漢字(この法則が使えるのは、漢語由来の漢字、つまり熟語のとき)
の含有量は、日本語において多いか少ないかでいうと半分以下で、
「少ない」とぼくは考える。
その少ない量のものにいい運指を与えすぎるのは、
合理ではないと考える。
もっとも親指シフト発表当時は、
かな漢字変換の初登場期であり、
そのウリであるところの漢字入力の動作を、
軽くみせようとしたことについては理解できる。
同音異義語から選択する単文節変換がメインであったことも大きい。
(文脈から類推する連文節変換は、予測変換の浸透した21世紀で、
ようやく実用的となった)
つまり現在は、親指シフトが前提としている漢字入力方式では、
もはやない。
次回の批判は、
表面と裏面の清濁同置について。
【入力の話4】につづく。
http://oookaworks.seesaa.net/article/456684652.html?1565860302
拗音拡張してもニコラの配列自体がすごくよくはないかなあと、
僕は考えています。
でもニコラで速い人もいるようだし、
指や書く文章の相性もあるのかなと。
配列変更は重たく考えず、数週間広く浅くやってみて、
ピンときたやつを試すのがいいのかなと。
ダメだったら戻ればいいし。
「自分の探している配列はどういうものか」は、
まず世の中にどんな配列があるか知ることからはじめないと、
いけないような気がします。
僕は全部の配列の経験者ではないので、
配列ソムリエになれないのが残念ですが。
参考までにニコラ拗音拡張の何が違和感があるかが分かると、
何か話が出来るかもしれません。
キーボードを変えるだけで劇的によくなるかもしれませんし、
(僕には合わなかったけど)音声入力もあるし。
沢山書く人かどうかでも変わってきますしねえ。
こう改めて考えると、飛鳥カナとか薙刀とか良さそうですね。色々と試してみようと思います。
とても分かりやすいサイト・まとめをありがとうございます。
親指だけが問題なら、押下圧の軽い30g、35g、45gあたりの高級キーボード
(リアフォやhhkb、メカニカルキーボード)に
投資する選択肢もあるかもしれませんよ。
親指シフトはキーボードを選ぶらしいし。
親指シフト(ニコラ)の親指以外の8指の指運びが気に入ってるかどうか、
でも考えるべきかと。
逆に親指を使わない配列の選択肢もあるし、
8指の指運びの視点でも考えた方が良いかと思われます。
そうそう、先日指摘されて改めて思い出したのですが、
3キー同時押しが確実に出来ないキーボードがあるかも知れないので、
薙刀式を試すときはその確認をしてから試してみてください。