親指シフト(Nicola配列)は、
なるべく動作を直観的に覚えられるように工夫されている。
「逆手の親指のシフトで、濁音化する」
という「クロスシフト」方式によってだ。
これによるメリットは、
「配列表がシンプルになり、覚えやすくなること」だ。
当時はブラインドタッチが主流でなかったから、
キーボードの印字が複雑にならない、
配列表がシンプルになることは重要だったと考えられる。
(真の配列図)
(濁音を省略した配列図)
実際、親指シフトという機構は、
「ひとつのキーをそのまま打つ」(単打)
「そのキーを左親指キーと同時に打つ」(左シフト)
「そのキーを右親指キーと同時に打つ」(右シフト)
の、
「ひとつのキーに3つの音を対応させる」
機構だ。
しかし3つ目の音を濁音にすることで、
「ひとつのキーをそのまま打つ」(単打)
「そのキーの同じ手の親指キーと同時に打つ」(同手シフト)
「そのキーの逆の手の親指キーと同時に打つと、単打の濁音」(逆手シフト)
の法則とすることで、
配列の文字(濁音)をひとつ減らし、
「一見、単打とシフトの2つの文字しかないように錯覚させる」
ことに成功している。
これは一種の詐術であるが、
一見さんのハードルを下げるという点において、
たいへん有効な方法だと思う。
(じっさい、飛鳥配列や新下駄配列の配列表は、
初心者は泣きだすだろう)
しかしこれは使い込むと、
そのせいで合理性が奪われていることに気づく。
「濁音化する音」が単打側に、
「濁音化しない音」がシフト側に、
おかれていることがそれである。
濁音化しない文字の中には、
頻度がそこそこ高く、
連接に使われやすい文字がある。
「の」「ょ」「ゅ」「に」「れ」などだ。
「使う文字をいい場所に置く」が合理のはずが、
濁音のルールを優先させたせいで、
これらの文字をシフト側においてしまったことが、
親指シフト(Nicola配列)の欠点であると思う。
TRON配列やその影響下の蜂蜜小梅配列では、
「『濁音化する音』は、単打側にもシフト側にもおく。
ただし濁音化する音は1キーに2つ置かない。
逆手シフトしたとき濁音化する音を一意に決める為である。
つまり『濁音は逆手シフト』のルールは守りつつ、
単打に優先していい音を置ける」
という回避策を設けている。
これを「濁音に関して排他的配置」ということにする。
ちなみに薙刀式では、濁音、半濁音、小書きカナ、拗音、外来音の
すべてに関して排他的配置が実現している驚異的工夫がある。
飛鳥配列や新下駄配列では、
「濁音文字も単打におけばいいじゃん」
というシンプルな発想で、
置く文字が多いというビハインドはあるものの、
単打に濁音文字を置くというアドバンテージを得ている。
これがこの二つの配列の、スピードの秘密だ。
よく打つ文字は、手間のかかる親指同時押しでなく、
シフト機構が不要の単打であるべきだ。
「配列表を簡単にするために、
打鍵行為の合理(手間、速度)を削いでいる」こと。
それが親指シフトの欠点であると僕は考えている。
次回は、僕が親指シフト(Nicola配列)より
優れていると思う10の配列について、簡単な解説をし、
親指シフトなんて「昔の合理」でしかないことを示したい。
【入力の話5】につづく。
http://oookaworks.seesaa.net/article/456684781.html?1565860370
2018年02月05日
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