2018年02月05日

【入力の話4】親指シフトは最善の配列ではない3

親指シフト(Nicola配列)は、
なるべく動作を直観的に覚えられるように工夫されている。
「逆手の親指のシフトで、濁音化する」
という「クロスシフト」方式によってだ。


これによるメリットは、
「配列表がシンプルになり、覚えやすくなること」だ。
当時はブラインドタッチが主流でなかったから、
キーボードの印字が複雑にならない、
配列表がシンプルになることは重要だったと考えられる。

(真の配列図)
Nicola.jpg

(濁音を省略した配列図)
NICOLA_J.png


実際、親指シフトという機構は、
「ひとつのキーをそのまま打つ」(単打)
「そのキーを左親指キーと同時に打つ」(左シフト)
「そのキーを右親指キーと同時に打つ」(右シフト)
の、
「ひとつのキーに3つの音を対応させる」
機構だ。

しかし3つ目の音を濁音にすることで、
「ひとつのキーをそのまま打つ」(単打)
「そのキーの同じ手の親指キーと同時に打つ」(同手シフト)
「そのキーの逆の手の親指キーと同時に打つと、単打の濁音」(逆手シフト)
の法則とすることで、
配列の文字(濁音)をひとつ減らし、
「一見、単打とシフトの2つの文字しかないように錯覚させる」
ことに成功している。

これは一種の詐術であるが、
一見さんのハードルを下げるという点において、
たいへん有効な方法だと思う。
(じっさい、飛鳥配列や新下駄配列の配列表は、
初心者は泣きだすだろう)

しかしこれは使い込むと、
そのせいで合理性が奪われていることに気づく。


「濁音化する音」が単打側に、
「濁音化しない音」がシフト側に、
おかれていることがそれである。

濁音化しない文字の中には、
頻度がそこそこ高く、
連接に使われやすい文字がある。
「の」「ょ」「ゅ」「に」「れ」などだ。

「使う文字をいい場所に置く」が合理のはずが、
濁音のルールを優先させたせいで、
これらの文字をシフト側においてしまったことが、
親指シフト(Nicola配列)の欠点であると思う。


TRON配列やその影響下の蜂蜜小梅配列では、
「『濁音化する音』は、単打側にもシフト側にもおく。
ただし濁音化する音は1キーに2つ置かない。
逆手シフトしたとき濁音化する音を一意に決める為である。
つまり『濁音は逆手シフト』のルールは守りつつ、
単打に優先していい音を置ける」
という回避策を設けている。

これを「濁音に関して排他的配置」ということにする。

ちなみに薙刀式では、濁音、半濁音、小書きカナ、拗音、外来音の
すべてに関して排他的配置が実現している驚異的工夫がある。

飛鳥配列や新下駄配列では、
「濁音文字も単打におけばいいじゃん」
というシンプルな発想で、
置く文字が多いというビハインドはあるものの、
単打に濁音文字を置くというアドバンテージを得ている。

これがこの二つの配列の、スピードの秘密だ。

よく打つ文字は、手間のかかる親指同時押しでなく、
シフト機構が不要の単打であるべきだ。


「配列表を簡単にするために、
打鍵行為の合理(手間、速度)を削いでいる」こと。
それが親指シフトの欠点であると僕は考えている。


次回は、僕が親指シフト(Nicola配列)より
優れていると思う10の配列について、簡単な解説をし、
親指シフトなんて「昔の合理」でしかないことを示したい。


【入力の話5】につづく。
http://oookaworks.seesaa.net/article/456684781.html?1565860370
posted by おおおかとしひこ at 18:16| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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