では以下に、10の配列を紹介する。
系列の歴史順に紹介したほうが、
どういう合理を人々が考えてきたかがわかりやすい。
新JIS配列
スペースキーと押しながら打つとシフト側の文字が出る。
(センターシフトという)
右親指、左親指と使いわけなくてよい。
濁音、半濁音はあとづけ(清音+゛の二打で濁音)。
JISカナ入力の不合理は、当時の人々が気づいていないはずはなかった。
とくに4段使う範囲の広さ、
ブラインドタッチをするときの指の効率について、
改良が加えられた。
また運指や左右交互打鍵についても考慮され、
たいへん完成度の高い配列ができた。
しかし本来のシフト方式、センターシフトが、
なぜか小指の(普通の)シフトに改悪されて実装される。
さらにJISカナ配列を廃止しなかったことから、
あたらしく使う者がいなく、廃止の憂き目にあった。
合理が時代に早すぎた、不遇の配列である。
この合理を現代に復活させようという流れが月配列である。
月配列
親指シフトは、親指シフトキーがあるキーボードでしか使えない。
いや、たとえば「スペースキーを左親指キーに、変換キーを右親指キーに」
という考え方で、今のキーボードで親指シフトを再現する流れがあり、
これが今では主流の親指シフトである。
しかし、現行のキーボードでは、最下段キー(無変換や変換キーなど)が、
バラバラな位置にあり、どのキーボードでも親指シフトが快適に使えるわけではない。
それに対して、
「中指シフトならば、どのキーボードでも同じように押せる」
という合理で「中指シフト」が誕生。
中指前置シフト(★キーを一回押しても何も発行せず、
そのあとに何かを押したときだけシフト文字になる)
の採用により、
特別なエミュレータなしでも、
ローマ字テーブルの変更だけで実装できるという利点を持つ。
廃止された新JISを惜しむ2ちゃんの有志たちが、
新JISを現代の事情に合わせて復活させるためにつくったもの。
新JISの運指バランスもさらに改良されている傑作配列で、
前に見たように、指の使用分布も改善されている。
欠点は一部のマイナー音で打鍵数が増えてしまうこと。
この欠点や、濁点、半濁点後付けを嫌い改良した、
改良バージョンが多数あることで知られる。
この最初の月配列は2-263式とコードネームがつけられ、
月3-285改、幸花配列(月4-698式)、
ぶな配列(月5-315式、5-532式、5-680式の統合)、
月U9RC2、月E-X、月K、月Tx、月Yx、月S、ハイブリッド月、
ミズナラ配列、弓配列、朧月配列、叢雲配列、
などの派生版が多数ある。
(月に関してはよく知らない部分もあり、月派生が間違っていたり、
漏れがあるならご指摘ください)
一方、親指シフト機構はそのままで、
配列を改良していこうという流れもある。
「親指シフト」は「親指でシフトする機構の名称」だと考えれば、
なにもNicola配列の専売特許ではない。
Nicola配列の問題点は配置のまずさによるもので、
それらを解消すれば、より良い配列になるという考え方だ。
TRON配列
現在のキーボードに固定される前の、
独自のTRONキーボードで実装された配列。
親指シフト機構を採用していて、
単打率が高い、つまり高効率で知られる。
濁音に関して排他的配置をとることで、
「逆手シフトで濁音化」のルールを守りつつも、
運指がよくなるように各音を配置できている。
特殊なTRONキーボードでは高効率だが、
現行キーボードで実装するには、
端のキーの多用(「っ」「れ」「ら」「ま」「ょ」「き」)
が仇となる。
飛鳥配列
右親指シフトと左親指シフトの関係性をなくし、
ただ「ひとつのキーに3つの音を乗せる」だけとする。
濁音も一キー扱いで、徹底した運指考慮が特色。
欠点はやはり見た目が複雑で、
習得に時間がかかる点であろう。
特徴的なのは、親指シフトキーを押しっぱなしでよいとする、
「連続シフト」で、
連続シフト中運指をよくするなど、
随所に運指の工夫がしこまれている。
運指がぬるぬる繋がるといわれている。
蜂蜜小梅配列
TRON配列の「濁音に関する排他的配置」を採用、
飛鳥配列ほど過激にせず、かつ配字は合理的なものを追及。
特徴的なのは、
「蜂蜜マトリックス」と呼ばれる、
「二文字拗音を、右手イ段文字と左格子フィルタの、
左右同時押しで一発で出す」
というもので、
Nicolaの特徴、
「清音、濁音を1アクションで出す」を、
「清音、濁音、拗音を1アクションで出す」に進化させた。
親指シフト機構は、
「実装するキーボードを選ぶ」という欠点がある。
両人差指の直下に親指用のキーが来ているキーボードは、少ないからだ。
「なにもシフトキーは親指である必要はない」
という考え方に基づき、
中指同時押し、薬指同時押しをシフトキーにしたものがある。
新下駄配列
どんなキーボードでも実装可能なことが特徴だ。
同時押しにしたことですべての音が1アクションで打て、
打鍵が爽快で高速であることが特徴である。
拗音シフト(右手上段中指または薬指と、左手の同時押し)
によって、
「清音、濁音、拗音を1アクションで出す」を実現。
アルペジオが多く、シフトキーとのアルペジオも含めれば、
言葉を打っている時はほぼどこかでアルペジオ。
最速の配列と噂され、マスターすれば最強か。
「かえうち」の調査でも、親指シフトに続いて使用されている配列。
でも初心者には複雑な配列図であることは確か。
薙刀式
新JISと同様、センターシフトでシフトする。
また、濁音キー(中段人差し指)、
半濁音キー(中段薬指)との同時押しで濁音化、半濁音化を行う。
注目するべきは拗音外来音同時押しで、
「一音目の文字と二文字目に来る文字を同時押し」することで実現。
(「しょ」=「し」+「よ」、
「じょ」=「し」+「濁音キー」+「よ」、
「てぃ」=「て」+「い」など)
蜂蜜マトリックスの拗音、新下駄の拗音同時押しは、
別の配列面を覚える必要があったが、
薙刀式のそれは「該当二文字を同時押し」するという、
記憶負担最小のやり方をとったのが特徴。
配列図がシンプルになり、覚えやすく運用がしやすい。
また、「ある」「ない」「する」など、
「日本語の中核となる言葉」がアルペジオで打てるように、
配置が工夫されているのも特徴である。
ローマ字配列三傑
カナ入力は押すべきキーの多さから、
全ての運指を合理的に出来ない欠点がある。
どうしても無理な配置が出て来るものだ。
しかし文字数が少ないローマ字ならば、
合理的な運指が実現しやすい。
Qwertyローマ字が不合理なのは、
あちこちに散らばった配字にあるのであり、
「ローマ字で日本語を打つこと」そのものではない。
たとえば、
「左手に子音、右手に母音を割り振れば、
子音→母音の左右交互打鍵になる」という考え方がある。
行と段を指定する方法から「行段系」といわれるもので、
多数の提案がある。
カナ入力よりも打鍵数は増え、疲労はしやすいが、
使用キーがすくないことから、運指が練りやすい。
これも歴史順に見ていこう。
SKY配列
左子音、右母音の左右分離系の草分け。
注目するべきは「Aん」などの撥音を置いたこと
(ローマ字では、「ん」の前は必ず母音になる)、
二重母音キーを置いたこと、
などで打鍵数をへらしていくことだ。
けいならべ
母音を二段にすることで、
三大頻出二重母音「ai」「ei」「ou」をアルペジオで打てる。
(二重母音キーは不要となった)
また日本語でもっとも使う二連接は「ょう」だが、
これを「yo」「u」のアルペジオで打てるのが特徴だ。
カタナ式
「薬指や小指で打つから遅く、疲れるのだ」
という思想を元に、
両小指不使用、左薬指不使用に成功した配列。
両手人差し指、中指と、右薬指のみで打つ。
母音は三段にすることで、「ai」「ei」「ou」「you」
をアルペジオで打ちやすくしている。
さらに注目すべきは、BS、エンター、カーソルを中央に置くことで、
文字入力だけでなく変換や文節変更まで手を動かさなくとも出来る点である。
とくに僕が親指シフト(Nicola配列)よりも優秀だと思った、
10に絞って紹介した。
次回は、選に漏れた優秀な配列を紹介する。
【入力の話6】につづく。
http://oookaworks.seesaa.net/article/456685251.html?1565860431
2018年02月05日
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