強力なイコンになるように、
問題と解決の絵を作ること。
それの利点について考えてみる。
問題が、絵によって記憶されることの利点。
途中で話を見失うことは、稀によくある。
しかしその場合でも、
「本当は何をしなければならないか」を思い出しやすい。
センタークエスチョンを常に絵として記憶出来ているからだ。
センタークエスチョンのサブ問題としての焦点が、
仮にあったとしても、
センタークエスチョンという大目標が絵になっていれば、
目的の構造化が、観客の中で起こりやすい。
(最終的なアレの目標のために、
今小さいこれを解決しようとしているのだな、
と無意識に理解できる。
逆にいちいち思い出して考えないといけないようなものは、
ストーリーとして三流だということだ。
いいストーリーは、無意識に見ていても面白いものだ。
観客に洞察や記憶想起を強要するのは傲慢だ)
また、
サブ焦点のほうが、
センタークエスチョンの絵よりも、
魅力的で印象的な絵になってしまうと、
本末転倒が起こりやすい。
小が気になり大を見失うことになるだろう。
絵の強力さ、というのは数字や文章にしにくいので、
そこはもう感覚としかいいようがないが、
ビッグビジュアルのほうが強力というわけではない。
あるいは、
定番のセンタークエスチョンの絵
(悪対正義)の場合は、
アレンジやサブストーリーの差異で勝負することになるから、
そっちのほうが魅力的な絵になるかもしれない。
しかしそればかり強調すると、
小粒な印象しか残らない。
センタークエスチョンとサブが、
うまく絡み合って一つのビジュアルをなすのが、
ベストだろうね。
絵の記憶のいいところは、
言葉を介さないところにある。
言葉は言葉の再生分時間がかかる。
絵は呼び出すのも見せるのも一瞬だ。
この時間差だけ、絵は得をする。
「分かりやすい」という印象は、
この時間差から来ている。
言葉を使う時間を、絵は省略できるというわけだ。
(図式やチャートのような、文字が中に入っている絵は、
言葉と対して時間差はないので、文字が入ってない絵が、
ベストだと思う)
解決の絵が印象的であり、
記憶に残ると、テーマの定着が永遠となる。
つまり、記憶に残る名作になる可能性が出てくる。
逆にいうと、ここがしっかり記憶に定着する絵にならないのなら、
どんなに素晴らしい話でも、
名作の条件に満たないということになる。
「青い鳥」は、問題設定と解決を、ペアにした、
ブックエンドテクニック(ビフォーアフターを同じ絵の差異で示す)
を用いた絵の使い方になっている。
「自分の家から外(幸せ)を眺めている」と、
「幸せは家にあったのだ、と家に帰る絵」の、
ペアによってである。
この分かりやすさ、記憶のしやすさがこのストーリーの肝で、
だから人の記憶に残る資格を得ているわけだ。
途中どんなことがあろうと、
この問題と解決のペアさえあれば、
名作たり得る、そのような構造をしている。
(ためしに、この問題と解決だけ残して、
中盤をまるまる違う冒険に変えることも可能である。
そのような翻案はたくさんあり得て、
たとえば「酔いが覚めたらうちへ帰ろう」という鴨ちゃんの考え方も、
これと全く同じである)
「青い鳥」と同じことを言っている諺に、
「隣の芝生は青い」があるが、
この諺が問題しか絵にしておらず、
「やはり家が一番だった」という解決を絵にしていないところが、
この諺の欠点ですらあるよね。
ただし、「青い鳥」は、問題をタイトルにしているところが巧みだ。
幸せという抽象的な概念を、
「青い鳥」という具体的な絵に設定することにより、
「それを追いかけて旅をする」
という目的語つきの動詞を作ることが出来るからである。
その問題の絵をタイトルにしておいて、
ラストシーンで「青い鳥は家にいた」という、
鮮やかなブックエンドでテーマを定着させるから、
永遠に印象に残るのである。
ひょっとすると、
「印象に残る」という我々の行為自体、
絵を記憶する、ということかもしれない。
「印象に残る言葉」や「印象に残る音楽」などの時間軸を持つものよりも、
時間軸を持たない絵の方が印象は強いのかも知れない。
そもそも印象に残る言葉や音楽なんて、
ワンフレーズ以内だろう。
つまりワンフレーズ程度の短時間で記憶から呼び出せる、
絵や言葉や音楽などが、私たちの記憶の性質である、
と考えることができる。
我々はそのワンフレーズ時間内に、
印象を残す何かを作っているというわけだ。
6秒動画やらCMやらはそれを狙って色々やっている、
ということになる。
私たちは、それに比べればごくごく長い物語を提供するのだがら
それ以上の印象をごつんと与えない限り、
それらに勝てないものになるだろうね。
あなたのストーリーのテーマはなにか?
それはどのような問題から出発したのか?
その解決でテーマになったのか?
絵で表現してみよう。
できるなら、強く印象的な絵で示せるのが良い。
2018年02月08日
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