正直、沢山あるカナ配列のどこを見て選べばいいのか?
経験者が語るいくつかのポイント。
シフト方式、濁音の打ち方、拗音の打ち方、記号配置
の4つの観点を出してみよう。
1 シフト方式
キーボードの30キー程度に50音以上を乗せるため、
単打だけでは間に合わず、カナ配列にシフトは必須だ。
(どうしてもシフトが馴染めない人は、ローマ字系列をやったほうがいいかも)
どういうシフト方式を採用するかで、
その配列の個性がまず出る。
文字キー外にシフトキーを定義するか、
文字キー内にシフトキーを置くかで大きくふたつに分類できる。
文字キー外は以下の三つ。
小指シフト(シフトキー):押しづらいのでマイナー。JISカナ
親指シフトふたつ:専用キーボードでない場合、変換キーとスペースキーで代用
(無変換と変換もある)。キーボードを選ぶ。
同時打鍵にニコラ配列、トロン配列、蜂蜜小梅配列、
同時打鍵かつ連続シフトに飛鳥配列。
センターシフト:スペースキーひとつでシフト。
前置きかつ連続シフトに、新JIS配列、薙刀式、カタナ式。
文字キー内には、以下の組み合わせがある。
中指同時シフト、中指前置きシフト(このキーを押した後の一文字だけシフトがかかる)
薬指同時シフト、薬指前置きシフト
人差し指同時シフト、小指同時シフト。
人差し指前置き、小指前置きは見たことがない。
普通は中段だが、上段に追加する場合(月の派生版など)もある。
左右対称に置くこともあれば、右だけ多い(新下駄)のもある。
文字キー内のシフトは、
キーボードを選ばなくて良い利点がある。
しかし4指が忙しくなるという欠点もある。
親指シフトやセンターシフトは、
文字入力時に遊んでいる親指を活用しようという考え方だ。
(そのかわり親指同時押しに適したキーボード必須)
文字キー内の前置きシフトは、
そのキーに文字を置けないため配字に制限が加わることになる。
同時シフトならばそのキーにも文字が置けるが、
「同時打鍵と、そのキーと別の音の二打」の分離区別が難しく、
設定と打鍵感に苦労する。
(コツはメトロノームのように一定のリズムで打っていくこと。
しかしローマ字などは高速時にロールオーバーといって、
「ある文字を打ったら、指を離さないまま次を打っていく」傾向がある。
これが同時打鍵と誤判定されがちなのだ。
前置きシフトはそんなの関係ないので、
バリバリロールオーバーで打てるため高速打鍵に向く。
しかし打鍵数が多い感触はある。同時打鍵はアクション数は少ないが、
かといって二打打つ手間は変わらない。
どちらも一長一短なので、どっちが好きかということ)
中指前置きシフトは月配列系列、
薬指前置きシフトは月配列系列。
中指同時シフトは新下駄配列、下駄配列。
薬指同時シフトは新下駄配列、下駄配列の拗音部分。
小指同時シフトは下駄配列の拗音部分。
人差し指同時シフトは、薙刀式の濁音部分、下駄配列の外来音部分。
また、シフトは「ひとつの音にしかかからない」が普通だが、
「連続シフト」といって、シフトキー押しっぱなしで、
複数の打鍵に効くように設定されているものもある。
飛鳥、薙刀式は、連続シフト前提で運指を計算している。
これは運指を効率的に出来る利点があるが、
実装を選ぶことと、「シフトを離すかどうか」
という新しい判断が必要になるため、嫌う人もいる。
2 濁音の打ち方
濁音、半濁音の打ち方には、大きく分けて3つのやり方がある。
濁点半濁点あとづけ
濁音半濁音シフトキーと同時押し
濁音は清音と別のキーにおく(清濁別置)
日本語の文字の清音は50だが、
濁音は20、半濁音は5ある。
清音の半分も種類があるわけである。
しかし全ての濁音半濁音を合計しても、全頻度の10%程度なのが問題だ。
たいしてケアしなくてよいと考えると、
濁点半濁点を後付けする二文字入力が合理的だ。
しかしそこだけ二文字になると気持ちわるいという直観や、
打鍵数が多くなるという欠点がある。
二文字でよいとわりきると、配列面は少なくなり、
記憶負担が小さくなるのが利点で、
伝統的にはこれが主流だった。
が、濁音全体の出現率が10%ということで、
「濁点キーがもっとも使うキー」となってしまう。
(最高に使う「い」でも6・6%程度)
たいていの濁点キーは右端の薬指か小指担当であることが多く、
指使用率のバランスを崩すことになる。
しかし同時押しによる、
1アクションで濁音入力できる親指シフト(ニコラ配列)が登場すると、
その直観的な気持ちよさ、
頻度を散らせる合理に追随する配列も現れる。
これは、清音と濁音シフトキーを同時押しすることで濁音化する、
清濁同置方式が一般的だったが、
「同時押しなどやめて、濁音は別キーでもいいじゃないか」
という考え方が、清濁別置配置を生み出す。
記憶負担は大きく増えるが、
そもそも濁音は清音と連接が異なり、
清濁で運指を最適化したほうが合理的であるというのが、
清濁別置派の主張である。
(筆者はこの主張にある程度賛成だが、
二連接頻度表を観察する限り、
「清濁で別の連接が大きく発生している」ようには思えない。
記憶負担を増大させてまで採る合理かには、
疑問の余地があると考えている)
濁点半濁点あとづけ:
JISカナ、新JIS、月配列
濁音シフトと同時押し(清濁同置):
(すべて逆手による同時シフト)
親指……ニコラ配列、トロン配列、蜂蜜小梅配列
薬指……下駄配列
人差指、半濁点は薬指……薙刀式
センターシフト……カタナ式
濁音は清音と別のキーにおく(清濁別置):
飛鳥配列、新下駄配列
3 拗音の打ち方
濁音よりさらにややこしいのが拗音である。
以下の3つのやり方がある。
小書(ゃゅょぃぇ)をあとづけ
拗音シフト
その音二つを同時押し
拗音は全体の出現率は3%程度であるが、種類が非常に多い。
33種の標準的なゃゅょが付く拗音に、
ティやヴァなどの外来音用の拗音もある。
拗音は1モーラ(一拍)で発音する音であり、
しかし表記上は二文字だ。
これらも1アクションで出せると気持よい、
という考え方もある。
しかし3%程度の為にそこまでの記憶負担を強いるかどうかである。
(多くの拗音シフトのある配列では、
別に小書も用意することで、二通りの入力方法を実装している)
小書ゃゅょをあとづけ
JIS配列、新JIS、月配列、ニコラ配列、飛鳥配列、トロン配列
拗音シフト同時押し
下駄配列、新下駄配列……拗音別置
蜂蜜小梅配列、姫踊子草カナ配列……拗音はイ段と別キーの同時押し
「その音二つ」を同時押し
薙刀式
薙刀式配列が特筆すべきだ。
「し」「よ」の、使われる音二つを同時押しすることで、
「しょ」を出すようにした。
(濁拗音、たとえば「じょ」は、「し」「濁音シフト」「よ」の3キー同時押し)
この法則によって、
滅多に使わない拗音、外来音も、
1アクションで入力できることに成功している。
(ティ、ディ、ドゥ、フェ、ファ、フュ、ヴァ、など)
4 記号配置
句読点、長音(ー)、撥音「ん」の配置は、
その配列の考え方が出やすいところだ。
また、促音「っ」があるかどうか、
どこに配置して運指を組むかも重要である。
句読点は、
伝統的なqwertyと同じ位置にしたほうが使いやすいと考える考え方もあるし、
出現頻度でいえばベスト20に入るほどの頻出カナである、
と、独自の位置で運指を与える配列もある。
長音の出現率自体は全体ではたいしたことはないが、
外来語を含む文章では頻出し、
和語の多い文脈では全くでないということがある。
したがって頻度のわりにいい位置を与える、
という配列が多い。
(qwertyローマ字の一つだけ離れた最上段は最悪だ)
撥音「ん」は出現率三位に来る頻出ガナであり、
ベスト1、2の「い」「う」と共に、
最重要位置を与えられるべきだ。
しかも「い」「う」と違い、
どのようなカナとでも連接するから、
どこに配置するかでその配列の運指の性格が決まる。
たとえば「ん」がホームキーに配置されていれば、
ホームキー経由で全ての運指が設計されていることわかる。
促音「っ」は特定の音のあとにだけ出現する、
特別な音である。
(っと、って、った、っぴなど、濁音半濁音子音の前にしか現れない)
「つ」のシフトにするには特別な連接を持つので、
独自カナの位置を与える配列が多い。
また、エンターやBS、ESC、カーソルなどの
機能キーや「」()!?などの記号を独自配置するものも多い。
全部覚えられないとして、qwertyの印字通りをする配列もある。
これらの特徴を俯瞰してみよう。
シフト方式 濁音 拗音 句読点
JISカナ なし(4段) あとづけ 小指シフト qwerty
新JIS センター、連続 あとづけ 小書 qwerty
月配列 中指前置 あとづけ 小書 qwerty
ニコラ 親指同時2 親指同時 小書 両小指上段
飛鳥 親指2、連続 別置 小書 qwerty
トロン 親指同時2 親指同時 小書 qwerty
蜂蜜小梅 親指同時2 親指同時 半別置、同時 両小指上段
新下駄 中指、薬指同時 別置 別置、同時 左人指上段と右薬指下段
薙刀式 センター、連続 人指同時 その二文字同時 両人指下段
ざっと各配列の特徴を見るのには、
この表で十分かと思われる。(ずれてたらごめんなさい)
配列選びの参考にしていただきたい。
2018年02月16日
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