2018年02月18日

複雑な状況、偉大なる決断

なぜ物語は面白いのだろう。
それは、普通によくあることでないことで、
何かが起こるからである。
つまり、異常な状態が起こることだ。
これが非日常であればあるほど、
我々の日常から遠くなるほど、面白くなる。

事務のお姉さんは、
「今四半期の書類が明日までに間に合うか?」
なんて映画は見たくないだろう。


で。
異常な状況を面白くする手っ取り早い手は、
複雑にすることである。

危険が単純な線では語れず、
リターンとリスクが複雑に入り組んでいればいるほど、
観客は思う。
「これをどうやって解決するんだ?」と。

もっとも、ここまでで引き込めていないと、
複雑な状況は、ただのめんどくさいものである。
最初は簡単に解決できそうな状況から始まり、
いつの間にか、にっちもさっちもいかない、
複雑な状況になっているのが望ましい。

どんな物語でも、
最初はすぐ解決できそうな顔をするものだ。
そこで気を引く為である。

これで解決できるだろう、と安易に手をだしたら、
中々に解決できない、複雑な事情が芋づる式に出てくる。
それが面白い話の必要条件かもしれないね。


で。
そうだからこそ、
皆は思うのだ。
「どうやって解決をするのか?」と。

「どうせこうなるんだろうな」と思われては意味がない。
誰もがあっと驚く解決法が理想だ。
しかし毎回毎回そううまい方法なんて思いつかない。

こういう時は、
「その時はベストだとおもえる判断」
をとらせるといい。

そこにリスクや多少の傷はあっても構わない。
誰もがハッピーになれる選択肢がベストだが、
その選択肢を複雑な状況が選ばせない状態になっているのがいい。
しかし決断しないと、状況はさらに悪化するときは、
どこかで決断させるしかない。

苦渋の決断になるかもしれない。
その決断をしたことで、
一部の人に非難されることになるかもしれない。
つまり、その決断には責任や覚悟がついて回る。

誰もが決断するには難しい状況をわざとつくり、
そのことで、もはや手をこまねいてはいけない状況をつくり、
ある種痛みを伴う決断をさせよう。

それが、あとになって偉大なる決断であった、
と分かれば、
その勇気は称賛される。
それが失敗に終われば、
それ見たことかとフルボッコだ。
そのエッジに、主人公が立つことだ。

どっちに転んでも辛いことになる。
しかしその複雑な状況を進めるには、
このギャンブルしかない、
ということが話を面白くする。

勿論、その決断が称えられるように、
リアリティあふれるその後の成功を描くべきだが。



そういう複雑な状況を作り、
かつうまい脱出法や、その難しい決断をつくることが、
私たちの仕事であると思ったほうがよい。

どうその複雑な状況を観客に楽しませるか、
まで気を配れれば、
一級品のエンターテイメントになるだろう。
posted by おおおかとしひこ at 00:56| Comment(2) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
漫画「キングダム」はこういうの凄く上手く描かれてると思います。
テーマも多角的に描かれているので、読み応えあります。
最近知って読んだのですがオススメです!
Posted by モンスーン at 2018年02月18日 17:11
モンスーンさんコメントありがとうございます。

いつか読もうとしてる漫画の棚には入ってますが、
それよりはじめの一歩の方が大丈夫かいなと心配しており。
狂四郎2030も読みたいし、電子書籍に手を出すか…(紙派)
Posted by おおおかとしひこ at 2018年02月18日 17:55
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