トンキさんの質問が面白かったので、
ちょっと長く書いてみます。
文化とはなにか。
なにが文化たるか。
僕は、文化には男的なものと女的なものがあると考えています。
ジェンダー論がやかましくいったとしても、
それは伝統的な人間が継いできたものなので、
男的、女的とよぶことにします。
男的なものは、
世界を前に進めるものです。
こういう新しい考え方がある、
こういう新世界がある、
こういう改良をすると、もっと良くなる、
それはリスクを伴い、死ぬかもしれないが、
家族や一族をよりよい方向に導く可能性があるなら、
それに賭けてゆく、一種の冒険です。
女的なものは、世界をいやすものです。
傷ついたものをやさしく包み込み、
自信を回復させ、再び立ち上がる元気や勇気をわいてこさせるもので、
ちいさな差異を重視して、
攻撃をしないもので、
同質性の確認でつながっていくものです。
男的なものは、
同質性よりも異質を尊びます。
今までの世界から比べて、
新しいものであるからには、
異質なものでないと意味がないからです。
女的なものは、世界の維持、
男的なものは、世界の革新に、
関係していると考えます。
もちろん、男の中に女的なものがあってもいいし、
女の中に男的なものがあってもいいです。
各自の性と性質が一致しなくてもよく、
それらを便宜上そう呼んでいるだけです。
ある人に向かって、
「あなたはこういう人なのね、そのままで素敵よ」
といやすのは女的な文化、
「お前それじゃだめだろ、新しいものを持ってこい」
と鼓舞するのは、男的な文化です。
で。
メアリースー的な文化の話をしましょう。
メアリースーはサービス業です。
キャバクラ嬢がわかりやすいでしょう。
なにを言っても聞いてくれて、すごいと言ってくれる、
そういうものです。ほんとはすごくないのに。
でもすごいと称賛されたくて、
人はそのようなサービスに金を払います。
「あなたが苦労することはなくて、
そのままでいいのです」というサービスはすべてこれです。
たとえば、家にいながらにして、
色々なものを買えるアマゾンは、サービスです。
で。
物語はどうあるべきでしょうか。
サービスに慣れきって、
苦労しなくて傷をなめてほしい人は、
メアリースーの物語を喜びます。
わたしは悪くないと言ってほしいのです。
自信がなく縮こまっている人が、
そのままで全能感を味わいたい人が、
メアリースーの物語を喜びます。
メアリースーが完全な悪かどうかでいうと、
存在しててもよいと思います。
それは女的なものがない場合、
人は傷ついて死んでしまうからです。
癒しがないと、強い人以外は生きていけない。
同時に、それは温室にしかならないときもあります。
温室育ちを作り続けるだけの罪も、同時にあります。
男的な、鍛えるものがあるべきで、
世界に冒険して、死んでも果実をとりにいくものがあるべきで、
それが新しい発見をもたらし、
新しい知見をもたらし、
新大陸を発見させるべきです。
そうやって人類は進化してきたのだと、
僕は考えます。
そのどっちもが、文化を作ってきました。
文学も、演劇も、音楽も、その他もろもろも。
昨今、女的なものが支配的になっているような気がします。
女は暴力が嫌いで、名誉や主張を好みません。
くどいようですが、女の性とは関係なく、
便宜的にそうよぶものと思ってください。
(統計的には、女性に女的な成分が多く、
男性に男的なものが多いのはありますが)
で、そうすると、
男的なものの価値がさがります。
いまや、人類は、
女的なものに囲まれて、
衰退がはじまっているのではないでしょうか。
新しい考え方や発展がなく、
文化も停滞し、
子供を増やそうともしない。
探検するべき世界はもうどんづまりで、
地球は一周してしまった。
(月はなにもないし、火星は遠すぎる)
あとは後進国や下級国民を食い物にして、
上級国民が搾取を続けるだけになるでしょう。
現状維持こそが女的ですからね。
男的なものは、
破壊とセットです。
なにかを壊さないと、
前には進めません。
砕氷船のへさきが、男的なものの代表です。
メアリースーそのものに、
たいした罪はないかもです。
単純に、傷ついたものをいやす効果もあるでしょう。
でも、物語に癒されるのではなく、
現実の人間が、現実の人間をいやしてあげるべきではないでしょうか。
それができない大人がふえたのでしょうか。
現代人は、孤独になってしまったのでしょうか。
僕は、
文化とは、
人類を前に進めるべきものであると考えています。
現状維持で「それな」を確認するものではないと。
だからメアリースーを否定します。
メアリースーは、パクリの温床でもあります。
だって新しいものを尊ばないからね。
現状確認しかしないからね。
冒険は痛みを伴うものです。
破壊を伴うものです。
みんな痛いのが嫌いなのでしょうか。
その先にある成長や発展や、
改善や理想を、見ないのでしょうか。
とても詳しく深い返信、ありがとうございました。
> 文化とは、
> 人類を前に進めるべきものであると考えています。
> 現状維持で「それな」を確認するものではないと。
> だからメアリースーを否定します。
胸にぐっと迫る言葉に、体の中から熱いものが込み上げてきました。
今後も大岡さんの作品を楽しみにしております!
ちなみに、風魔は原作を越えた傑作中の傑作だと思っています。10回以上見ました!
逆風のなか頑張って行こうと思います。
CMですが、なかなかの自信作が3月末から流れるので、
そのときは告知します。