2018年03月10日

文化とはなにか

トンキさんの質問が面白かったので、
ちょっと長く書いてみます。
文化とはなにか。
なにが文化たるか。


僕は、文化には男的なものと女的なものがあると考えています。
ジェンダー論がやかましくいったとしても、
それは伝統的な人間が継いできたものなので、
男的、女的とよぶことにします。

男的なものは、
世界を前に進めるものです。
こういう新しい考え方がある、
こういう新世界がある、
こういう改良をすると、もっと良くなる、
それはリスクを伴い、死ぬかもしれないが、
家族や一族をよりよい方向に導く可能性があるなら、
それに賭けてゆく、一種の冒険です。

女的なものは、世界をいやすものです。
傷ついたものをやさしく包み込み、
自信を回復させ、再び立ち上がる元気や勇気をわいてこさせるもので、
ちいさな差異を重視して、
攻撃をしないもので、
同質性の確認でつながっていくものです。

男的なものは、
同質性よりも異質を尊びます。
今までの世界から比べて、
新しいものであるからには、
異質なものでないと意味がないからです。

女的なものは、世界の維持、
男的なものは、世界の革新に、
関係していると考えます。

もちろん、男の中に女的なものがあってもいいし、
女の中に男的なものがあってもいいです。
各自の性と性質が一致しなくてもよく、
それらを便宜上そう呼んでいるだけです。

ある人に向かって、
「あなたはこういう人なのね、そのままで素敵よ」
といやすのは女的な文化、
「お前それじゃだめだろ、新しいものを持ってこい」
と鼓舞するのは、男的な文化です。

で。

メアリースー的な文化の話をしましょう。


メアリースーはサービス業です。
キャバクラ嬢がわかりやすいでしょう。
なにを言っても聞いてくれて、すごいと言ってくれる、
そういうものです。ほんとはすごくないのに。
でもすごいと称賛されたくて、
人はそのようなサービスに金を払います。
「あなたが苦労することはなくて、
そのままでいいのです」というサービスはすべてこれです。
たとえば、家にいながらにして、
色々なものを買えるアマゾンは、サービスです。

で。
物語はどうあるべきでしょうか。

サービスに慣れきって、
苦労しなくて傷をなめてほしい人は、
メアリースーの物語を喜びます。
わたしは悪くないと言ってほしいのです。
自信がなく縮こまっている人が、
そのままで全能感を味わいたい人が、
メアリースーの物語を喜びます。

メアリースーが完全な悪かどうかでいうと、
存在しててもよいと思います。
それは女的なものがない場合、
人は傷ついて死んでしまうからです。
癒しがないと、強い人以外は生きていけない。

同時に、それは温室にしかならないときもあります。

温室育ちを作り続けるだけの罪も、同時にあります。

男的な、鍛えるものがあるべきで、
世界に冒険して、死んでも果実をとりにいくものがあるべきで、
それが新しい発見をもたらし、
新しい知見をもたらし、
新大陸を発見させるべきです。

そうやって人類は進化してきたのだと、
僕は考えます。

そのどっちもが、文化を作ってきました。
文学も、演劇も、音楽も、その他もろもろも。

昨今、女的なものが支配的になっているような気がします。
女は暴力が嫌いで、名誉や主張を好みません。
くどいようですが、女の性とは関係なく、
便宜的にそうよぶものと思ってください。
(統計的には、女性に女的な成分が多く、
男性に男的なものが多いのはありますが)

で、そうすると、
男的なものの価値がさがります。

いまや、人類は、
女的なものに囲まれて、
衰退がはじまっているのではないでしょうか。

新しい考え方や発展がなく、
文化も停滞し、
子供を増やそうともしない。
探検するべき世界はもうどんづまりで、
地球は一周してしまった。
(月はなにもないし、火星は遠すぎる)
あとは後進国や下級国民を食い物にして、
上級国民が搾取を続けるだけになるでしょう。
現状維持こそが女的ですからね。

男的なものは、
破壊とセットです。

なにかを壊さないと、
前には進めません。
砕氷船のへさきが、男的なものの代表です。


メアリースーそのものに、
たいした罪はないかもです。
単純に、傷ついたものをいやす効果もあるでしょう。
でも、物語に癒されるのではなく、
現実の人間が、現実の人間をいやしてあげるべきではないでしょうか。
それができない大人がふえたのでしょうか。
現代人は、孤独になってしまったのでしょうか。


僕は、
文化とは、
人類を前に進めるべきものであると考えています。
現状維持で「それな」を確認するものではないと。

だからメアリースーを否定します。

メアリースーは、パクリの温床でもあります。
だって新しいものを尊ばないからね。
現状確認しかしないからね。


冒険は痛みを伴うものです。
破壊を伴うものです。

みんな痛いのが嫌いなのでしょうか。
その先にある成長や発展や、
改善や理想を、見ないのでしょうか。
posted by おおおかとしひこ at 15:46| Comment(2) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大岡さん。
とても詳しく深い返信、ありがとうございました。

> 文化とは、
> 人類を前に進めるべきものであると考えています。
> 現状維持で「それな」を確認するものではないと。
> だからメアリースーを否定します。

胸にぐっと迫る言葉に、体の中から熱いものが込み上げてきました。

今後も大岡さんの作品を楽しみにしております!
ちなみに、風魔は原作を越えた傑作中の傑作だと思っています。10回以上見ました!
Posted by トンキ at 2018年03月11日 10:15
まだまだだな。俺は風魔を100回は見たぜ。笑

逆風のなか頑張って行こうと思います。
CMですが、なかなかの自信作が3月末から流れるので、
そのときは告知します。
Posted by おおおかとしひこ at 2018年03月11日 15:47
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