2018年03月13日

何度も描かれた物語(「シェイプオブウォーター」評)

「ターザン」でも、「ダンスウィズウルブス」でも、
もっと昔の「異文明と出会い、恋に落ちる」物語は、
これまで何度も何度も何度も作られてきた。

今の時代に、それを更新するとはね。
手放しの絶賛。
これなら「パシフィックリム2」やらなくて良かったよ。


アカデミー作品賞は、
プロデューサーの賞である。

つまりこのストーリーを企画し、
資金を集め、
全ての造形をフィルムに定着させるために、
全部を用意した、
その計算に与えられる賞だと言って過言ではない。

素晴らしい世界観だった。
素晴らしい半魚人だった。
ベタベタの悪役は最高だった。
あの指が最初から最後まで生きていて、
キャンデーも良かった。

そして何よりあのラスト。
ああ、おとぎ話とはなんと素敵なものか。

この一瞬のために用意された、
全ての伏線の見事さに、
ぼくは映画館で拍手をした。


その後あの二人がどうなったか分からない。
上手な「ラストの省略」ってのはこうやるんだぜ、
「スリービルボード」さんよ。




物語は、
善の面から世界を照らしても良いし、
悪の面から世界を照らしても良いし、
様々な面から照らしても良い。
人類に幻想を与えても良いし、
絶望を与えても良いし、
リアリティを与えても良い。

最終的に、
これまでの歴史を更新し、
人類の宝になれば良いと思う。

この映画は、その品格に相応しい、
現代なりのおとぎ話を見事に更新した。


CGの上手な使い方の見本市だった。
スーツアクターも見事で、
両者の境目はシームレスで、
それを作るスタッフィングこそが、
プロデューサーの手腕だ。

過不足ない脚本も完璧な仕事ぶりだ。
なんと甘く、私たちに希望を与えるストーリーであろうか。
こういう完璧なものを作りたくて、
私たちはこの業界に入ったし、
こういう完璧なものを作れる、
ハリウッドに強烈に嫉妬する。


日本の映画はここに追いつけるのか?
東宝の映画館で見た予告はうんざりだ。

作品賞をとろうとするプロデューサーよ出てこい。
我が方に企画ありまくりだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:21| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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