登場人物の内面を描く場面を考えよう。
その人はどういう人か?
性格や哲学や考え方、指向性、
何が目的で、どういう思いでそうしているか、
それらをうまく描くことが人を描くことである。
僕は、過去を描く方法と、現在で描く方法の、
二種類があると考える。
過去を描く方法の方が、簡単である。
その人物がどうして今そうなっているのかを、
わりと簡単に説明できるし、
感情移入しやすいからである。
人嫌いな人物がどうしてそうなったか、
などの複雑なことは、
過去を描かない限り難しい。
「そういう人」であることまでは、
現在で説明できるが、
感情移入するためには、
その過去をうまいこと描かないと難しいだろう。
「そうか、そういうことがあったのなら、
それは今そうなっているのもわかる」
というのが、感情移入の最初の糸口になるだろう。
問題は、過去をどうやって語るかだ。
過去は回想シーンを伴う。
ということは、現在の物語の流れを止めることになるということ。
とすると、論理的に過去シーンの入れどころは、
二つしかない。
物語がまだ始まっていない冒頭か、
途中の「いったん集中がきれた一休みポイント」
である。
冒頭が過去から始まるのはよくあるパターンで、
このときに気を付けることは、
あんまり長くしないことである。
いつまでたっても現在の物語が始まらないなら、
人は飽きてしまう。
せいぜいワンシーン、
理想は1分半(600字)、
長くても3分(1200字)
以内で書くことだ。
これに収まらない過去については、
冒頭に出すことは諦め、現在から始めたほうがいいと思う。
なにが注目しなければならない現在の焦点なのか、
早めに示して、
物語本編に巻き込んだほうが得策だ。
冒頭以外の、途中で過去の回想を挟む方法については、
現在の乗りや流れを邪魔しないように挟むのがよい。
ということは、一番ありがちなのが、
いったん休憩しているところで挟む方法である。
追手から逃れ、一休みしているとき。
待ち時間のとき。
あとは寝るだけのとき。
話すこともなくなって、ついつい過去の話になったとき。
あるいは、夢で見る、というのもよくある。
いったん焦点が落ち着いて、
新しいブロックへ移行したときもチャンスだ。
それはそこの冒頭部の役割の場所であるからだ。
本人が誰かに話す直接形式でもいいし、
ただの回想(夢含む)で、
観客だけが知っててもいいし、
本人のいないところで誰かが誰かに、
真相の暴露という形で話す、でもいい。
あるいは、
本人だけがばれてないと思っていることを、
そこの全員が共有しているという形式でもいい。
問題は、次にどのシーンを持ってくるかだ。
それを知った人のリアクションで、
それを示すことができるだろう。
それに対して反応や行動がないのなら、
そこに挟んでいる意味がないと思う。
それに対して、なんらかの反応や行動があった時、
それをそこに挟む意味があると考える。
(単純に伏線としてそこに置いておく場合もあるけど、
そうすると物語の停止時間が長くなってしまう、
という冒頭と同じ注意点が出てくることに留意されたい)
過去をうまいこと挟む方法もあるが、
現在でその人物の考え方や性格や、
どうしてそうなっているのか、
示すのも有用な方法である。
たとえば、
「シェイプオブウォーター」の、
悪役である監視官は、
新品のキャデラックを買うという、
「現在のエピソード」で、彼の人となりを示している。
しかもそれがのちのち壊されるという伏線にもなっているわけだ。
現在のエピソードは、物語の進行を止めない、
優秀な方法である。
例に挙げたものでも、
前の焦点が一回落ち着いたあとに、
新ブロックの冒頭としておかれていることに、
注目されたい。
もっとも、いつこれを持ってくるかは、
構成段階で考えることは難しいかもしれない。
その人物紹介のときに出来るか、
ということもある。
(件の監視官の人物紹介のエピソードは、
「トイレで先に手を洗う」であった。
理想は、この紹介が伏線になって、
テーマに直結することであった。
キャデラックのエピソードのほうが、
のちのち使われていた。
ということは、この脚本をリライトするなら、
「新品のキャデラックで出社する、成功を自慢する男」
であるべきだったということがわかるだろう)
したがって、執筆中に、
ちょっとこの人物に深みが足りない、
と感じて、どうにかしてひねり出すことのほうが、
多いような気もする。
構想段階であるのは、
おそらく初登場シーンでの人物紹介レベルか、
設定段階で多少考えてある、
という程度だろうね。
ということで、
うまいこと現在のエピソードで処理していくのが理想だけど、
それだけじゃまとまらないこともある。
過去をどう挟んで、深く作っていくか、
考えていくとよい。
あるいは、
人物によって、
一人は過去を静かに語る、
一人は現在のエピソードでうまいこと語る、
などのように使い分けて、
コントラストを作っていくことも、
考えたほうがいいかもね。
色々なアプローチがある。
最善は何かなんて、全部の技をつかえるようになるまでわからない。
色々なやり方ができるようになっておくのに、
こしたことはない。
2018年03月15日
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