さらに続き。
たとえば「刑事」というキャラクターで考えてみよう。
刑事のイメージはどういうものだろうか。
あるいは、社会的役割期待はどのようなものだろうか。
職務に忠実で、時間を丹念に調べ、
少しずつ真実に近づいて行き、
チームワークを大事にし、
腕っ節もそこそこあり、
人徳や正義心もそなえる、
「ちゃんとした人」というイメージだろう。
ここに矛盾はない。
だから、「通り一遍のキャラクター」という印象になる。
いわば、「普通の刑事」だ。
勿論この刑事が脇役や端役ならば、
普通の刑事でも良いだろう。
仕事を忠実にしてくれて、
いざという時には犯人と格闘してほしい。
しかしこれがメイン登場人物になると、
物足りなくなってくる。
典型的な刑事でしかないからだ。
こういう時に矛盾を入れていく。
刑事は、よくある矛盾を詰め込みやすいキャラクターだ。
たとえば、
「普段はだらしなくて書類とか書けないし、
部屋もぐちゃぐちゃで、服もヨレヨレだが、
いざ事件解決になると眼光鋭くなり大活躍」とか、
「頭脳は明晰だが子供っぽい」とか、
「科学知識は沢山あるが格闘はダメ」とか、
「正義の守護者のくせに、嫁にはDV」とか、
「格闘は出来るがバカ」とか、
「人情がありすぎて犯人に騙される」とか、
色々な矛盾のパターンがありえる。
つまり、「刑事としてのキャラクターに、
相応しくない部分がある」
ということを盛り込むのだ。
本人のその部分と、刑事の部分が矛盾するようにすると良い。
だってそうだろう?
男として期待されることを、我々男は100%出来てない。
女として期待されることを、
サラリーマンとして期待されることを、
父として、姉として、年長者として期待されることを、
サービス業として期待されることを、
国民として期待されることを、
善良なる市民として期待されることを、
〇〇県の人として期待されることを、
子供として期待されることを、
我々は100%出来ていない。
それが人間だ。
内部に矛盾が沢山あるわけだ。
勿論この矛盾をいちいち描いていたら、
話が一向に進まなくなるので、
適宜切り分けたほうがいい。
よくあるのは、「シラフだとまともなのに、
酒が入るとめちゃくちゃになる」というのは古典的で、
酒が入ることがストーリー上のターニングポイントにすることが出来るわけだ。
刑事の話に戻ると、
「刑事」として生きているのは、
その人の何割かでしかなく、
それ以外は刑事以外のなにかなのだ。
そしてそれらは「刑事」と大抵矛盾しているのである。
しかしその人の中では、
矛盾を知ってて放置している。
「使い分け」をしているからである。
自分の中の刑事的な部分と、
刑事的でない部分を、
場面場面で使い分けて生きているはずだ。
これが矛盾であり、
矛盾があってもその人なりに生きていく方法で、
それが人間臭さというものである。
刑事はこういう人間臭さのテンプレみたいなキャラクターになることが多い。
それだけ職務が厳しいのかも知れない。
刑事という職務が人間と遠いからこそ、
人間っぽい部分を作ってバランスを取るのかも知れないね。
だからむしろ、
メインキャラで刑事が出てきたら、
「普段はだらしなくてやるときはやる」までが、
テンプレになってるぐらいだろうね。
逆に、なぜか「軍人」は、
人間臭さと対極にあって、
職務遂行のマシンのように扱いが違う。
矛盾を抱えてしまうと、軍人足り得ないのかも知れない。
ベトナム帰りの心の矛盾は、
ベトナム戦争直後のアメリカ映画の主要テーマの一つだった。
戦争は矛盾の代表だ。
刑事と似たような人間臭さのテンプレには、
「裏ですけべなことをしている神父」
「汚職だらけの医者」
などがある。
職務に要求される基準が人間臭さから遠いほど、
人間臭さでバランスを取りたくなるのかも知れない。
こういった矛盾が、
人間とはどういうものかを浮き彫りにし、
ストーリーに関わる人間のあり方を、
より深く、面白くしていくわけだ。
ということで、
矛盾をつくろう。
その矛盾は、その人の中ではどういう使い分けになっているのか。
その使い分けを崩された時に、
その人はあたふたし始め、
勝手な行動を取り始めるだろう。
2018年03月28日
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