2018年04月04日

全部入りプロットから、骨格を抽出する

どんな形でも良い
(セリフを書こうが途中で漫画が入ろうが、
文章になってなかろうが)ので、
頭から終わりまで、
全部が入ったプロットを書くことは重要だ。

それがあれば、プロットとプロットでないものを、
分けて考えることが出来るからである。



プロットに属するものはなにか。

それは、
「動詞のリスト」である。

つまり、誰が何をしたかのリストだ。
ランダムではなく順番も重要だ。
「あれをして、次にこれをして、次あれをして、
…最後にこれをする」の形式をしているだろう。

ストーリーの一番の背骨は、
この一連の動詞によって記述される。

あなたの書ききったものに、
赤い丸でもつけてみよう。
主人公の動詞、他の人の動詞と色分けしてもよい。

「言う」は動詞だろうか。
言うことによって行動が促されれば、
それは「促す」「決断する」「宣言する」などの、
動詞に読み換えることが可能だろう。
誰の行動も促さない発言は、ただのおしゃべりでしかない。


で。

横軸に各登場人物、縦軸に時間の順番を取り、
上から順に動詞が並ぶようにすると、
全体の骨格を見渡すことが出来る。

それには、
絵も設定もキャラクターも関係ないということがわかる。
それが多少変わったとしても、
「する」ことは変わらないからで、
これが骨格である。

(逆にいうと、同じ「する」のリストで、
絵や設定やキャラクターを変更することが可能だ。
骨は一定で肉と皮を変えるのだ)

ガワでなく中身とは、このことをいう。


動詞には「なぜそれをするのか」という動機がある。
(なんとなく、というのも動機に含むとしよう)

出来上がった動詞のリストに、
「なぜそれをするのか」「何目的か」などを、
逐一メモをしてみよう。

何かを目的として、その人は何かをし、
その結果、成功したり失敗する。
成功しても失敗しても、次にまた何かをする。

さらに欲をかいたり、諦めずに再挑戦したり、
別の動機を持ったりする。
これが支離滅裂であるものをデタラメなストーリーといい、
これが一連の淀みなき流れになっているのを、
出来たストーリーという。

それらの一本の線が、
その人物のストーリーライン(行動の軌跡)である。
軌跡というと、新橋から渋谷にいくルートのように思えるが、
空間的な軌跡ではなく、
時間的な軌跡であることに注意されたい。

時間的とはいえ同じところにいなくて移動しているので、
4次元空間的な軌跡だと思おう。
(空間移動を伴わないものがワンシチュエーション、
空間移動ばかりなのがロードムービーだ)

ストーリーとは、
何本かのストーリーラインで記述されるものをいう。
誰も何も行動しないものは、
ストーリーではない。
行動した結果が出ないものは、ストーリーではない。
動機なく行動するのは習慣や夢遊病であり、
これもストーリーではない。

さて。

あなたの抽出した骨はどうか?
行動しているか?
結果は出たか?
その動機は何で、それは果たせたのか?
何本のストーリーラインがあるのか?
それはバラバラに独立しているのか?
絡む(Aの行動や結果が、Bの動機や行動や結果に、
影響があるかどうか)か?

また、そのストーリーラインは何段階あるのか?
一回しか行動しないなら1ステップのストーリーだ。
(例: 好きだと言ってセックスする)
nステップの行動があるなら、nステップのストーリーである。
(例:一目惚れして、仲良くなるが喧嘩し、
一度大喧嘩するが本当の姿を知り、
再び惚れ直し、告白しようとするが出来ず、
ついに告白し、相手の気持ちも確認して、セックスする)


nステップとm本のストーリーラインで、
ストーリーの骨格を記述することが可能だ。

多くの初心者は、
1ステップで、1本のストーリーラインしか書けない。
だから、
「積極的なキャラクターが消極的なキャラクター(主人公)を、
何故か気に入り、何故か連れ回し、
何故か親友になり、
最後に主人公がワンステップだけ行動して話が終わる」
という展開的メアリースー(「落下する夕方」テンプレ)
の話になりがちだ。

主人公のワンステップ目は1/4より前であるべきで、
そのワンステップを踏み出した後、どうなって、
次に何があり、それに対して何をして、…
がストーリーである。
しかも意思を持った主体は主人公以外にも世界にはいるはずで、
それがm本のストーリーラインを形成する。
主人公とほかの登場人物は、
どちらも「それぞれの事情をもち、
それぞれの意思や目的を持って行動する」
という点では同じだ。
主人公と他を分けるものは、
「あなたが一番好きだから主人公」や、
「出番が多いから主人公」や、
「主人公っぽいから主人公」なのではなく、
「全体で一番活躍する人が主人公」にすぎない。



あなたのストーリーの骨格を、
こうして俯瞰してみよう。

複雑にしてもいい。
ステップかストーリーラインを増やすといい。
シンプルにしてもいい。
ステップかストーリーラインを減らすのだ。

長さを見積もろう。
それだけのストーリーは大体どれくらいの長さか、
分からないなら、他のストーリーから同様に抽出して、
比較してみよう。

あるステップがうまく行きすぎて不自然なら、
ステップを細かくわけよう。
あるステップがたるいなら、
一気に省略できる方法を考えよう。

あるいは、ストーリーが扱う期間はどれくらいか。
その半分の時間にすることは出来るか。
その倍の期間のストーリーにすることは出来るか。
そのストーリーの的確な期間はどれくらいであるべきか。
わずか一瞬か。3日の話か。2週間の話か。3ヶ月の話か。60年の話か。
それを短縮すると面白くなるか。
引き伸ばすと面白くなるか。

どれくらいのボリュームがそのストーリーに適切か、
削ったり増やしてみると良い。

これは、あなたのストーリーを、
骨格だけで見る方法である。


全部入りプロットさえ書き切れば、
これらの分析が可能になる。
最後まで書けないと、これは出来ない。

だからなんとかして、
後半息切れしても構わないから、
「おわり」まで書くと良い。
そうすると全体のバランスが見えるから、
ここは足りないとかここはオーバーとか、
見えてくるものである。


ここまできて、
あなたはようやくまともなプロットを書く段階に来たわけだ。
posted by おおおかとしひこ at 14:10| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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