2018年05月26日

不気味の谷と近親憎悪

不気味の谷現象というものがある。

ロボットやCGなどが、
人間と違うもの(金属の物体とかおもちゃみたいなやつ)
なら可愛くて感情移入可能だが、
人間に近くなればなるほど、
急に不気味になる現象のことだ。

リアルなCGに気持ち悪さを感じた経験は、あると思う。

この心理って、近親憎悪と関係するだろうか。


成長期の女子が、パパのパンツ臭いから、
一緒に洗わないでというのは、
成長期における近親憎悪である。

人間は自分の遺伝子と近いものは、
嫌がる本能がある。

なるべく遠いものと混合したほうが、
遺伝子の多様性を保てるからで、
逆にいうと自分より近い遺伝子ばかり好むような一族は、
滅びたという結果論でもある。

(実際、似たような遺伝子プールばかりになる、
つまり近親婚の繰り返しをしてきた一族は、
遺伝病が蔓延し、同じ病気で一斉に死ぬ可能性が高まる。
旅人に妻を差し出す田舎の習慣は、
全く違う遺伝子を村に加えたい、
本能的な習慣の一つである)

で、
だから、人は、
自分と違うものを好む。

近親憎悪がプログラムされているのである。


しかし現代は多様性のヘイトも同時にある。
違いを認められず、なぜ同一化しないのかと、
俺の意見に同一化せよと、ネットではあばれ者が多い。

違いは敵か。
それとも同一遺伝子が敵か。


それは、結局何が敵味方なのかを、
本能が判断するのではないかな。
理性で制御できない部分だから、
そこがややこしいんだと思う。

理性で制御できるなら多様性は正しいし、
ホモフォビアが起こらないはずだ。
(ホモを嫌うのも、遺伝子多様性を保ちたいことへの、
近親憎悪ではないかと思うが)



不気味の谷現象というのは、
人間の話ではなく、
人間に近いものに起こる現象の総称だ。

おおむね、ロボット工学か、CGのジャンルで使われる。

人間にリアルに近すぎないように、
デザイン上気をつけることが行われているらしい。
(映画ファイナルファンタジーの失敗の原因の一つ。
リアルに近すぎて、不気味の谷に落ちたのだ)


人間は、違いを検出するセンサーを持っている。
ついでに、同じものを検出するセンサーも持っている。

ピノキオみたいな、
自分と全く違う木の人形に、
まるで人間であるかのように感情移入するのが、
物語であった。

ということは、
外見に不気味の谷現象が起こり、
内面に共感や感情移入が起こる、
ということが、
我々の感覚として正しそうだ。


これらのルールを壊すのが双子という現象で、
だからこれはよく物語の題材になるよね。

俺と同じ顔の気持ち悪さ、
俺と同じ顔の安心、
違うところと同じところ。

これらは、
別に双子という道具(モチーフ)を使わなくても表現可能だ。
二人のキャラクターに、
共通点と異なる点を用意してやれば良い。


ラブストーリーで考えると、
最初は全然違っていたのに、
共通点を見つけて仲良くなり、
相手が自分に合わせてくるのが、
最初は楽しかったが、
やりすぎると腹が立ってくる、
という現象は、
不気味の谷現象であり、近親憎悪かもしれないね。

不気味の谷現象は、
あくまで現象としての経験則でしかなく、
その科学的正体は議論されていない。

でも、ピノキオが人間になったあとの話がないことから、
近親憎悪を刺激しないように、
配慮がなされていたことは想像できる。


後輩が出来ないときは可愛いが、
出来る後輩に成長して、
自分を脅かすようになってくると、
心理的に距離を置きたくなる現象も、
不気味の谷現象に近い近親憎悪かもしれないね。


人は大きく自分より劣るものは可愛がり、
自分に近づいてくると憎悪や忌避が始まる、
という性質を持っているのかもしれない。

それは何か守ってるものを脅かされるという感覚で、
その守ってるものがなにかを設定できれば、
動機になり得るよな。


「人間ならざりし者」の物語を書くときの、
参考に。


「アイアンジャイアント」では、
軍隊で攻撃までして、不気味を攻めたよな。


今後、ロボットでなくAIが、そうなっていくだろうね。
つぎの仮面ライダーの敵は確実にAIだな。
posted by おおおかとしひこ at 15:39| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。