前記事のつづき。
長編漫画で詰まらなくなるのは、
拡大を用意できなかったときではないか。
インフレという言葉がある。
ジャンプ漫画の、主にバトル漫画で、
敵が次々に強くなり、
それを倒す主人公や味方も強くなり…
という、いわば修羅の螺旋を登っていくことである。
ドラゴンボールは、
ここが最高に良かった。
天下一武道会→ピッコロ→神→サイヤ星人の、
一連の流れは最高だ。
ちなみにこの元祖は、
番長ケンカ漫画、本宮ひろ志あたりまで遡れるだろう。
車田正美がリンかけで様式美として完成させたが、
最近の人たちは知らないかもしれない。
北斗の拳もラオウまでは最高のインフレ感であった。
キン肉マンも、悪魔将軍までは最高だな。
はじめの一歩は、伊達からバトンタッチまでか。
しかし。
インフレの宿命として、
どうしても、「それ以上の世界の拡大」が出来ない。
北斗の拳は、カイオウまでは頑張ったが、
その後は散々だ。
ドラゴンボールは、セルとフリーザまでは高原状態として、
ブウあたりでそろそろいいやと思った。
キン肉マンは王位継承編の頭くらいまでは良かったが、
そのあとぐだりまくり。(最高と噂の「続き」は未読)
はじめの一歩は、宮田戦をやれば良かったのに。
負けてリベンジを誓い、さらに新型デンプシー開発にいけば、
鴨川過去話やブライアンホーク、板垣なんかに頼る必要はなかったはずだ。
つまり、
世界が拡大するスピードが速いとき面白く、
それが鈍ってきたり、
0になったり、
縮小すると、
詰まらなくなる。
(喧嘩商売は、トーナメント開始までの方が面白かったね)
インフレとは、
「想定された拡大感より、速い感じ」
に感じるのかもしれない。
だからジェットコースターのように、
振り落とされそうなスリルを感じるのだろう。
しかしそれは麻薬だ。
いずれ世界の拡大は、止まってしまう。
世界の拡大速度があるうちに、
上手に終わらせるのが、
正しい物語の作法であると思う。
しかし長編は、商売上引き延ばしを要求される。
そこが辛いところだね。
ワンピースも途中で脱落したが、
引き延ばしのせいで、
世界の拡大感は衰えていると思う。
つまり老人なんだ。
面白いのは若芽が芽吹き、葉を広げる瞬間なんだ。
さて。
あなたが映画脚本を書くのなら、
ここまで「世界の行き止まり」を、
考えなくて良いかもしれない。
長編漫画に起こる病と、まずは認識すれば良い。
しかし、
たかが二時間の尺にさえ、
この病があるかもよ、
ということを前記事は言っているわけだ。
我らが風魔の小次郎も、
聖剣戦争までは良かったが、
反乱編は微妙だった。
4000千年の決着と神が出てきちゃったからなあ。
だから僕は柳生暗殺帖の内輪揉めの世界の狭さが、
実はあんまり好きじゃない。
もう一回聖剣戦争があるくらいじゃないと燃えられないんだよなあ。
聖闘士星矢も十二宮までの世界拡大速度に対して、
ポセイドン編はいまいちで、
ハーデス編に至っては焼き直しの繰り返しにしか見えなかった。
僕がクライマックスからまず書け、
なんてアドバイスをするのも、
「世界の拡大の果てをまずつくれ」
ということに等しいかもしれない。
それ以上には世界は拡大しないわけだ。
マトリックス23が微妙なのも、
拡大速度が落ちたからだと思う。
世界は拡大する。
それが展開だと思うと、
その速度コントロールこそが、
展開の調整かもね。
2018年04月10日
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