スポ根ムービーには、それぞれの時代に傑作があるものだ。
「ダンガル」もその歴史に刻まれるものになるだろう。
今年に入って二本ともインド映画にやられた。
新しいスポ根映画のマスターピース誕生に、
心から拍手したい。
インド映画のこの面白さはなんなんだろうと、
ずっと考えていた。
ベタベタのストーリーが面白いわけじゃない。
いや、ストレートすぎることが面白い可能性がある。
普通そんな場面は、
プレッシャーがきつくて避けるだろ、
と思う場面を、躊躇することなく書き切るのが、
インド映画の魅力ではないか。
たとえば、以下ネタバレだが、
国際試合に負け続けているときに、
父親に電話する場面の緊張感たらなかった。
あんな場面、書くのがきつくて、
並の脚本家なら裸足で逃げ出す。
ちょっとした脚本家なら、
どうにかしてセリフでまとめていく。
しかしこの映画は違った。
ただ泣くという、
ものすごいストレートを投げてきた。
何にもならない場面が、逆に印象的だった。
こんな単純な話の、
何が人を惹きつけるのか。
たぶん、素直すぎる人柄に、
みんな惚れ込むんだと思う。
日本人は複雑になりすぎて、
こんな目がキラキラしてる人々を見ると、
思わずどうしていいかわからなくなる。
誰も彼をも抱きしめたくなる、
人間の魅力があふれ出ていた。
父親の狂気とも思える、
ずっと一点を見ている芝居が素晴らしかった。
姉の迷いが良かった。
妹にもうちょっとサブプロットが欲しかったが、
姉に集中させるためにはしょうがないか。
もう最後のレスリングは、
30分以上あったんじゃないか。
ずっと夢中で見てた。
レスリングをはじめておもしろいと思ったよ。
攻撃か防御かに、焦点を絞ったのがよい。
成功したスポ根映画の特徴として、
マイナー競技を取り上げる、
というのものがあると思う。
みんながその競技に関して素人だから、
「その見方」を始めて体験できる。
それが面白さの結構な割合を占めると思う。
レスリングのルールはやっと分かったし、
いつ「5点」を出すのか、
私たちは固唾を飲んで見守るだけだ。
素直なことがインド映画の魅力だとすると、
僕は音楽こそが最もそうではないかと思った。
エンドロール中鳴り響いていたテーマ曲。
あんなに力強く、男のボーカルで激しく高らかに、
きちんと歌える音楽が、
今日本にある?
この王道ど真ん中の音楽こそが、
最も素直なのではないかと思ったのだ。
はあ?エグザイル?AKB?知るかぼけ。
強さ。
このことを最も素直に、私たちが拳を突き上げやすいように、
何から何かまできっちり表現したこのテーマ曲こそが、
この映画の素直な強さを、
象徴しているのではないか。
映画館で観るべし。
いいスピーカーで観るのは、
インド音楽への礼儀である。
音楽とは感情だ。
今の日本が詰まらないのは、
この王道ど真ん中の感情を失っているからではないか?
2018年04月12日
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