2018年05月11日

表現の社会性

なんでメアリースーが良くないのかを考えよう。
単純に面白くない以外に、
僕は問題があると思う。

つまり、表現には社会性があると思うのである。


たとえば謝罪会見で、
「何が悪いんだよ、気持ちよかったからいいだろ」
と本音を言う人はいない。

発言は社会的なものであるからだ。


どんな言葉でも、
社会で発言されたことは、
社会性がある。

一方、相手のいない発言がある。
ツィッターなどだ。

ついつい本音を書いてしまい、
炎上発生器になる原理は、
本人は誰にも言わない独り言のつもりで書いたものが、
社会的発言と解釈されることによる。

そもそも呟きなんだから、
僕は独り言でいいと思うんだ。
じゃあチラ裏に書いとけ、
と言うことになり、
全方位に発信する意味はねえだろ、
ということになる。

表現となったら、それはどうなったって社会的である、
ということの例である。



ところで、
「物語を書く」という行為は、
独り言だろうか、社会的だろうか?


誰にも見せない、自分だけの愉しみとして、
芸術というのは最初にあるものだ。

いやあ、いいものが出来ちゃったねえ、
という自慢の会こそが、
同好の士の集いというものだ。

絵描きたちや音楽屋とかダンサーたちとかは、
自分たちの創作物を、
そうやって同好の士の集まりで披露したりする。


物語はそうだろうか?

独り言のツイッターのような、
自分のためだけの物語とはどういうことか?

それは大抵の場合、
「今のダメな自分を否定せずに受け入れられ、
最強の全能感を味わうことで、
現実逃避の道具、つまり慰みものとする」
というものではないか?
すなわちメアリースーである。

自分だけの物語なんだから、
いくらでもそうしたほうがいい。

仕事の厳しい医師や弁護士や政治家ほど、
赤ちゃんプレイが好きなのだそうだ。
自分は無能だが最強な赤ん坊になって、
ビッグマザーに抱かれたいのだ。

プライベートなプレイであれば問題ない。
外に一歩出たら、
有能な医師や弁護士や政治家であればよいだけだ。


だから、自分だけの物語を楽しむ時は、
別にどんだけメアリースーでもいいんじゃないかと思う。

あなたがそれを書き、再読することで、
癒され、明日への活力になるなら、
酒を飲んだりジムに通うことと、
なんら変わらないと思う。



問題は、その物語が、
他人へ開かれたものかどうか、
ということだ。


他人に開かれた瞬間、
それは社会性を帯びる。

他人の前で赤ちゃんプレイをする人はいない。
謝罪会見で「気持ちよかったから」と本音を言う人はいない。

メアリースーは、他人の前に出してはいけない。
何故ならそれは社会性の仮面を被っていない、
モロだからである。



物語を書くときに、
ついつい自分の愉しみとして書いてしまう。
その書き方は、
「他人に見せる物語」として、
間違っている、
ということである。

独り言のツイッターを、公開してはいけないのだ。



同人出身は、
この辺を間違いやすい可能性がある。

何故なら同好の士の集まりでの突出とは、
メアリースーの競い合いであるからだ。
「萌え」度合いの競い合いは、
所詮赤ちゃんプレイの内容違いだ。

同人でやる分には構わない。
それは、他人に開かれていない、
という閉鎖空間だからである。


同人出身がいきなり、
「他人に開かれたもの」を作ることは出来ない。
一からそれを勉強する必要がある。
小学校から社会性を学んできたことと、
同じことを「表現」で学ばなければならない。

それが、これまでのノリで、
やってしまうから問題なのだ。


他人に開かれたものと、
自分(と同好の士)の為のものは、
180度違うものである。

その混同こそが、
メアリースーを他人に晒してしまうことである。


メアリースー的主人公を書いてしまう人は、
丸裸で人前を歩いているのである。

ちんこを隠せ。



人前に出るには、
服を着て、仮に勃起しててもしてないような振りをし、
社会を論じ、人の道を論じなければならない。


もっとも、それは他人行儀のことで、
親密になるにはその自他の境界線を越えて、
「あんたもお好きねえ」と、
同輩になることが必要だ。

男よりも女の方が友達を作るのがうまいのは、
他人との境界線を引くよりも、
簡単にそれを超えるのが上手だからである。



表現とはなんだろう。

他人と仲良くなることだろうか?
人前に出ることだろうか?

どちらもうまいことこなせるべきだと、
僕は考えている。

適度に社会性を持ち(テーマ)、
適度に親密性を持つ(感情移入)べきだと。


その両方を何も考えていないメアリースーは、
無知のふるちんでしかないのだ。
posted by おおおかとしひこ at 11:16| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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