二つ名。なんと中二心をくすぐるものか。
あなたもかつての創作黒歴史のなかで、
二つ名のみっつやよっつついたキャラクターを、
創作したことがあるだろう。
ないわけはないんだぜ。
さて、二つ名は、
「盛る」のに丁度いい道具だ。
道具に溺れずに使いこなすには、
どうすれば良いのか考えよう。
たとえば、風魔の例から、
二つ名の「独眼竜の竜魔」を考えよう。
一つ目の竜。カッコイイ。まさに中二だ。
独眼竜正宗のパクリだけど、カッコイイ。
しかしこれは、盛っているだけなのに注意。
つまりこれは「設定」に過ぎない。
この二つ名は、
「一つ目から超能力を発揮する」
ということの言い換えである。
つまり、別の設定を、
キャッチコピーのように、
短く、印象的になっているのが二つ名である。
(伊達正宗は、とくに設定なく独眼竜だよな。
幼少の頃片目になっただけで、竜らしき活躍をしていない)
「音速の貴公子」はセナだっけ、シューマッハだっけ。
「キング」はカズで、「爆弾膝小僧」はシウバだった。
スポーツ選手にはこういうあだ名がつきやすい。
それはキャッチコピーをつけて、
キャラを立たせたほうが覚えやすいからである。
アイドルもそうだよね。
沢山いる中から覚えてもらうには、
目立つ二つ名が重要だ。
さて、ここからが本題。
二つ名だろうが、その元になっている設定だろうが、
それは設定に過ぎない。
それは現在ではなく、過去である。
物語は、
「今何をするか」
「未来に何をしようとしているか」であり、
「過去何があったか」でなはい。
(「過去何があったか」は歴史だよな)
勿論過去の何かが現在や未来に影響を与えるため、
それらを設定していることは望ましい。
過去もないのに現在も未来もない。
で、
二つ名なんかに溺れてしまうと、
過去の方が重要で、現在や未来が、
それに負けてしまうことがある、
というのが本題。
独眼竜正宗の場合、つまり独眼竜の二つ名(過去)の方がカッコよくて、
実際はなんもしてない。
だから設定だおれだ。
(史実だからしょうがないが、物語なら失格のキャラだ)
独眼竜の竜魔の場合、
二つ名もあれば、現在することもある。
つまりは死鏡剣である。
一つ目、超能力、それを使う。
それらが線になっているわけだ。
ドラマ版の場合さらに盛っていて、
「超能力を使うとひどく消耗する」
というリミッターをつけた。
これにより、
「死ぬかも知れないが、闘う」を、
よりドラマチックに演出できるわけだ。
物語とは行動であり、
行動には理由が必要だ。
そうまでしても闘わなければならない理由とは何か、
ドラマ版の場合、「仕事の遂行」である。
仕事原理主義者というわけだ。
だから小次郎はそれに反発し、
「そうじゃない仕事のあり方」を模索する。
どちらにせよ、
「命の使い方」という同じものに、
戻ってくるんだけどね。
(竜魔の場合は主君のため、
小次郎の場合は姫子のため。
実に同一人物であるところが対比的で面白くなっている)
このように、
二つ名を過去の遺物にせずに、
現在、未来に、「使う」ことが必要だ。
つまり過去は伏線にならなければならない。
爆弾膝小僧シウバは、
その膝蹴りの威力で二つ名を持つが、
それを、いつ、どう、なぜ、使うかが、
物語になるということなのだ。
それに比べると、
「キング」とか「音速の貴公子」は、
ちょっと二つ名としては、
物足りない設定だね。
能力設定がよくわからんものね。
どっちかというと、性格とか風格、イケメン、
みたいな見た目のことに過ぎないね。
で。
二つ名のコツは、「あとで盛ること」だと僕は考える。
先に二つ名を作ってしまうと、
それに相応しい、現在や未来を作ることは相当困難になる。
「今から面白いこと言います」と、
ハードルを上げてしまっていることになるわけだ。
なので、
まず面白い物語を作ってから、
それに相応しい設定をつくり、
それから盛ることを考えるべきだ。
当たり前だけど、順序を逆にしては作れないのだ。
ちなみに今僕が書いている話では、
「紅き貴公子」「神の左手」と二つ名(三つか)を持つ、
天才ピアニストが出てくる。
彼が世紀の難曲に挑むというのがメインプロットなのだが、
それを盛るために作った二つ名だ。
輪島塗りで全部が朱に塗られた、
ウィーンの名門メーカー、ベーゼンドルファーのピアノを使う、
という中二盛りである。
実はこれには意味があって、
愛妻家で彼女の出身地が輪島だから、ということと、
ベーゼンドルファーのピアノは低音が出る、
ということに引っ掛けてある。
そして妻のエピソードと低音部が、
そもそもメインプロットで重要な役割を果たす。
どっちが先にできたわけでもなくて、
ベーゼンドルファーというピアノを調べていたら、
プロットも二つ名も、同時に出来たようなものだった。
紅き貴公子はあとづけで、
妻のプロットが出来てから、
キャラを立てようとして後付けしてみたわけだ。
先に二つ名をつくり、それを十二分に生かすストーリーを作るか。
先に面白いストーリーをつくり、
その特徴部分を前振れる二つ名を、
あとづけで考え出すかだ。
前者のやり方は失敗しやすい。
後者の方が成功しやすい。
2018年05月13日
この記事へのコメント
コメントを書く