2018年05月13日

キャラクターの立て方: 二つ名をつくろう

二つ名。なんと中二心をくすぐるものか。

あなたもかつての創作黒歴史のなかで、
二つ名のみっつやよっつついたキャラクターを、
創作したことがあるだろう。
ないわけはないんだぜ。

さて、二つ名は、
「盛る」のに丁度いい道具だ。
道具に溺れずに使いこなすには、
どうすれば良いのか考えよう。


たとえば、風魔の例から、
二つ名の「独眼竜の竜魔」を考えよう。

一つ目の竜。カッコイイ。まさに中二だ。
独眼竜正宗のパクリだけど、カッコイイ。

しかしこれは、盛っているだけなのに注意。
つまりこれは「設定」に過ぎない。

この二つ名は、
「一つ目から超能力を発揮する」
ということの言い換えである。
つまり、別の設定を、
キャッチコピーのように、
短く、印象的になっているのが二つ名である。

(伊達正宗は、とくに設定なく独眼竜だよな。
幼少の頃片目になっただけで、竜らしき活躍をしていない)


「音速の貴公子」はセナだっけ、シューマッハだっけ。
「キング」はカズで、「爆弾膝小僧」はシウバだった。
スポーツ選手にはこういうあだ名がつきやすい。
それはキャッチコピーをつけて、
キャラを立たせたほうが覚えやすいからである。

アイドルもそうだよね。
沢山いる中から覚えてもらうには、
目立つ二つ名が重要だ。



さて、ここからが本題。

二つ名だろうが、その元になっている設定だろうが、
それは設定に過ぎない。

それは現在ではなく、過去である。

物語は、
「今何をするか」
「未来に何をしようとしているか」であり、
「過去何があったか」でなはい。
(「過去何があったか」は歴史だよな)

勿論過去の何かが現在や未来に影響を与えるため、
それらを設定していることは望ましい。
過去もないのに現在も未来もない。

で、
二つ名なんかに溺れてしまうと、
過去の方が重要で、現在や未来が、
それに負けてしまうことがある、
というのが本題。


独眼竜正宗の場合、つまり独眼竜の二つ名(過去)の方がカッコよくて、
実際はなんもしてない。
だから設定だおれだ。
(史実だからしょうがないが、物語なら失格のキャラだ)

独眼竜の竜魔の場合、
二つ名もあれば、現在することもある。
つまりは死鏡剣である。

一つ目、超能力、それを使う。

それらが線になっているわけだ。

ドラマ版の場合さらに盛っていて、
「超能力を使うとひどく消耗する」
というリミッターをつけた。
これにより、
「死ぬかも知れないが、闘う」を、
よりドラマチックに演出できるわけだ。

物語とは行動であり、
行動には理由が必要だ。

そうまでしても闘わなければならない理由とは何か、
ドラマ版の場合、「仕事の遂行」である。
仕事原理主義者というわけだ。
だから小次郎はそれに反発し、
「そうじゃない仕事のあり方」を模索する。
どちらにせよ、
「命の使い方」という同じものに、
戻ってくるんだけどね。
(竜魔の場合は主君のため、
小次郎の場合は姫子のため。
実に同一人物であるところが対比的で面白くなっている)

このように、
二つ名を過去の遺物にせずに、
現在、未来に、「使う」ことが必要だ。

つまり過去は伏線にならなければならない。


爆弾膝小僧シウバは、
その膝蹴りの威力で二つ名を持つが、
それを、いつ、どう、なぜ、使うかが、
物語になるということなのだ。


それに比べると、
「キング」とか「音速の貴公子」は、
ちょっと二つ名としては、
物足りない設定だね。
能力設定がよくわからんものね。

どっちかというと、性格とか風格、イケメン、
みたいな見た目のことに過ぎないね。



で。

二つ名のコツは、「あとで盛ること」だと僕は考える。
先に二つ名を作ってしまうと、
それに相応しい、現在や未来を作ることは相当困難になる。

「今から面白いこと言います」と、
ハードルを上げてしまっていることになるわけだ。

なので、
まず面白い物語を作ってから、
それに相応しい設定をつくり、
それから盛ることを考えるべきだ。

当たり前だけど、順序を逆にしては作れないのだ。



ちなみに今僕が書いている話では、
「紅き貴公子」「神の左手」と二つ名(三つか)を持つ、
天才ピアニストが出てくる。

彼が世紀の難曲に挑むというのがメインプロットなのだが、
それを盛るために作った二つ名だ。

輪島塗りで全部が朱に塗られた、
ウィーンの名門メーカー、ベーゼンドルファーのピアノを使う、
という中二盛りである。

実はこれには意味があって、
愛妻家で彼女の出身地が輪島だから、ということと、
ベーゼンドルファーのピアノは低音が出る、
ということに引っ掛けてある。

そして妻のエピソードと低音部が、
そもそもメインプロットで重要な役割を果たす。


どっちが先にできたわけでもなくて、
ベーゼンドルファーというピアノを調べていたら、
プロットも二つ名も、同時に出来たようなものだった。

紅き貴公子はあとづけで、
妻のプロットが出来てから、
キャラを立てようとして後付けしてみたわけだ。



先に二つ名をつくり、それを十二分に生かすストーリーを作るか。
先に面白いストーリーをつくり、
その特徴部分を前振れる二つ名を、
あとづけで考え出すかだ。

前者のやり方は失敗しやすい。
後者の方が成功しやすい。
posted by おおおかとしひこ at 14:24| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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