そもそも「レディプレイヤーワン」を見たのは、
「もう一つの世界もの」のシナリオを今構想しているからだ。
で、映画館に行く前に借りていた「13F」をようやく見た。
なんという傑作!
レディプレイヤーワンが1点だとしたら、
8.5くらいは出してもよい、素晴らしい映画だった。
「マトリックス」に大いに影響を与えたと言われる本作、
なんとマトリックスよりも全然前の傑作SF。
全てのレディプレイヤーワンの観客よ。
13Fを見て、スピルバーグ老害を再認識せよ。
「もう一つの世界もの」のもう一方の佳作に、
「ダークシティ」がある。
ダークシティのビジュアルと、13Fのストーリーを掛け合わせ、
カンフーのふりかけをかければ、
おおむね「マトリックス」になるぜ?
小説「ネクロマンサー」に影響を受けたとウォシャウスキーは言っていた。
いや、元ネタはむしろこっちなんじゃね?
リローデッドやレボリューションのストーリーを考えると。
僕はこの手の映画で、
「アヴァロン」「メガゾーン23」をわりと推してたんだけど、
映画としての格が全然違うことがわかった。
「13F」。必見だ。
問題はこのタイトルにある。
せめて劇中の言葉にひっかけて、
「アナザーワールド」
というタイトルにするべきだった。
「この世の果てで私と出会って」でもいいかも知れない。
以下ネタバレ。
ラストシーンが本当に見事。
ラストのセリフは、
凡百の脚本家には決して書けない。
「話すことはたくさんあるわ」って。
説明台詞と日夜格闘している、
バカな脚本家に無理やり見せるべきだ。
説明など不要。
劇中の人物はまだよく分かっていないが、
ここまで見てきた観客は、
何が起こったか、全部わかっている。
なんという見事な劇的アイロニー!
(劇的アイロニーとは、
劇中の人物の知っていることと、
観客の知っていることに「差がある」ことをいう。
ヒッチコックが出した例は、
「爆弾の存在を観客は知っているが、登場人物は知らない。
だから観客は、いつその爆弾に気付くか、いつ爆発するか、
ハラハラする」という、
サスペンスの道具立てとして解説していた。
もちろん、サスペンスの道具以外にも使えるわけだ。
これは最も端的な、
説明に関する劇的アイロニーの例だと思う)
映画はオチ。
それが見事に決まって一本取ったシナリオだ。
さて、細かいところ。
「時々記憶を失う」という乗っ取りシステムが面白かった。
そして、
「長時間のダイブは危険」ということを散々前ふっておいての、
「こっちの世界へあいつがやってくる」という、
フレディシステム。
「創造主を見たい」というシーンも印象的だった。
伏線とその解消は視覚的に、印象的に。
映画の基本中の基本だね。
そしてなによりも、
「世界の果て」を見てしまうシーン。
最初にそれを隠しておいて、
ここで使うのか、
という完璧さ。
「二つの世界」ものによくあるのは、
「三つ目の世界がある」というどんでんだが、
それをこういう形でドラマチックに提示するとは。
境界線を車で突破して、
砕ける木の柵がとても映画的だ。
で、いろいろ前ふっておいてのラストのフレディシステム。
見事でした。
前時代のロスが同じ役者というのが、
最初ちょっとわかりにくかったけど、
見てるうちに分かるようになっていて、
すごい上手だなあと。
惜しむらくは、
もう少しキャラクター性があると良かったかな。
キャラの立ち方がビジュアルだけで、
エピソードとしてあればもっと良かった。
刑事が野球ゲームやってるシーンも良かったけど、
たとえば
「アスレチックス1967年の○○スタジアム、
ツーアウト満塁、監督の指示は○○。
しかし○○はこれを無視して…パコーン。
俺はこの場面が大好きなんだ」
みたいな野球好きにしておいて、
何かあるたびに野球の名言を言うキャラにしておけば、
ラストにも効いてくるはずだ。
「プレイヤーは監督のものじゃない」って言えたのに。
乗っ取られてしまった同僚も、
レディーボーデンを大人食いしてるとか、
それだけでキャラが立ったと思うなあ。
女のラブもちょっと唐突で、
ひとひねりあれば最高だった。
Aクラスのシナリオだが、
Cクラスのタイトルで、
Bクラスのガワで、
Cクラスの配給なのが勿体ない。
シナリオの勉強に、
娯楽に、
レディプレイヤーワンの口直しに、
最適な「13F」をどうぞ。
2018年06月05日
この記事へのコメント
コメントを書く