2018年06月11日

その面白さは、何のためのものか

係りと結びに関して続ける。
先日面白い企画を思いついたのだが、
うまく係りと結びができなくて、
放置してるやつを例にしよう。


うちの会社は新橋にあるのだが、
週に一回、近くの公園で、
「新橋サイファー」なるヘンテコなことをやっている団体がある。

新橋のサラリーマンなどを集めた、
ストリートラップである。
リズムマシーンをぶんぶん言わせて、
次々に会社員たちがリリックを刻んでゆく。
リリックというほどのものがない感じが、
新橋っぽくてよいと思っている。

これを後輩と眺めながらぐだぐだしているときに、
ここにラップの女子高生がいたら面白いだろうなあ、
なんて妄想する。
しかも、さっきまで、
「ラップは短歌出身の人が強い」みたいな話をしていたところ。

そのとき、
「短歌部の女子高生が新橋サイファーで活躍する」
というイメージがわいてきた。

書道甲子園みたいな、
その部の活動ではあるが、
ちょっと違う大会に出る、
みたいな、青春部活ものの匂いがする。

これは面白そうだと思い、いくつかのキャラクターを考える。
ディスるスタイルと、相手のリリックに返し技を決めていくスタイルがあるらしいから、
それの達人のライバル女子高生とか。
俳句のプロがそこに混じっているとか。
〇通のコピーライターが混じっているとか。
2ちゃんのレスバ最強の人が腕試しにきているとか。
ああいえば上祐の人が混じっているとか。
土地柄、法律事務所が近くにあるので、
穴を見つけるのが得意な弁護士がいるとか。
帰国子女が、ちょいちょい英語でディスりをいれてくるとか
(帰国子女は、どうしても日本語英語交じりの言葉になってしまって、
悩むことがあるらしい。彼女が自分のコンプレックスを得意に変えている、
という面白げな設定もつくった)。

予算は少なさそうだ。
言葉だけを考えられれば化けそうだ。
なかなかいい案だと思った。

で、係りと結びで、行き止まりになってしまった。

「短歌部女子高生が、新橋の公園でおっさん達とラップバトル!?」
という引きはよい。
しかしその先がない。

動機と目的である。

それをやりつづけて、どうなるのか?
その先になにがあるのか?
そもそも何が目的なのか?
短歌大会の優勝では、ちょっと平凡だ。
何をクライマックスにするかで、立ち止まってしまった。
最終的に、ラインで告白するための、
その短歌をつくる、
という目的に仮にしてみたが、
ちょっと話が小さくまとまってしまうように感じた。

題材はなかなか面白い。
キャラクターも濃い。
ロケーションも昭和が残る新橋と最高だ。

しかし、「それが何になるのか」という、
テーマが明確にならなかった。

だから、それを係り結びにすることができない。
つまり、ガワも、キャラも、世界観もいけそうなのに、
珍妙な組み合わせで、新鮮味もあるのに、
しかも予算も少なさそうなのに、
それが何になるのか、
という真ん中が見つからなかった。

それが何か見つかれば、
またこれは書くと思う。
ありそうなプログラムピクチャーだから、
だれか乃木坂でも出ればいっちょ上がりの企画である。



係りと結び。それは最後まで書いたときに見つかる。
しかし、「大体このへん」という最初のカンがないと、
漕ぎだすことも難しい。
「言葉はだいじ」とか、「日本語は美しい」とか、
平凡なテーマになってしまうことしか思いつかず、
この先は行き止まりになっている。

つまり、このストーリーはどういう場面から始まって、
どういうエンドになるのか、
ちっとも見えなかったのだ。

係りと結びを考えることは、
それを考えることかもしれない。


ちなみに仮タイトルは「新橋サイファーガール」。
タイトルが内容の点しか示せていないところで、
この企画は弱い。
posted by おおおかとしひこ at 16:28| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。