2018年06月24日

「好き」は状態に起こる現象か

物語は変化だ。
ということは、「好き」という感情と逆かもしれない。



キャラクターが好き。
この関係が好き。
ずっとこの教室にいたい。

こういう感覚は、「その状態」に行われているように思う。
状態とはつまり、
「変化しない」状況のことである。

だから、キャラが変わってしまったら、
好きという感情はなくなる可能性がある。
(劣化などという)
関係性が変わったら、
好きじゃなくなるかもしれない。
環境が変わったら、
もうそこには居たくないかもしれない。

いっぽう、
物語とは変化のことである。
キャラが変わってしまうほどの経験をする。
関係性の変化が、ストーリーの過程である。
環境の変化や移動が、ストーリーの過程である。

つまり、
変化という時間軸があるものに対して、
好きという感情は時間軸を持たない。

逆に、好きなものには、変化してほしくない、
というバイアスがかかる可能性がある、
ということである。

つまり、
好きすぎると、
変化を描くことができなくなる。

つまり、
好きすぎると、ストーリーにならない。


二次創作の人が、ストーリーが書けない、
なんていうのは、ほとんど当然だ。

なぜなら、
二次創作の理由は、たいていの場合、
そのキャラや世界観が好きなことだからである。
つまり、
二次創作の原動力は「再現」「再生産」である。


誰かがつくったものを、
好きすぎるゆえに、なんどもなんども追体験したい、
というのが二次創作の原点にいるのではないか。

だからストーリーがない。

ストーリーとは変化のことであって、
キャラがどう変化するのか、
人間関係がどう変化するのか、
環境がどう変わるのか、
がストーリーである。

変化してしまったら、
好きだったものから、逸脱してしまう。

だから、二次創作では変化しない。
(しても、元に戻る)



一方、ストーリーとは永遠の変化を扱う。

もう二度と失敗しない、
もう二度と会えない、
もう二度とあそこには戻らない、
などを描く。

つまり、
ストーリーの「ある時点」が好きになってしまったら、
そこからの変化を、
作者自身が拒否してしまうということになる。


最近だと、
刃牙のオーガであろうか。
作者が気に入りすぎて、
「その状態」を維持したままになってしまった。
すなわち、
オーガと刃牙が闘って、
オーガ最強神話が崩れるとか、
オーガに弱点があることがわかり、
それを攻略するとか、
そういうストーリーがなくなってしまった。
(決着がエアちゃぶ台になりさがった)

キャラが濃すぎて、好きになってしまうと、
そういうことが起こりやすい。

つまり、
変化しない。

変化しないということは、
ストーリーが進まないということである。


キャラクターによって人気を得るのが、
漫画の商売の方法だ。

だから、一回人気キャラになってしまうと、
そのキャラの変化をおそれて、
ストーリーが進まなくなってしまう、という現象が起こりやすい。
敵や脇でドラマが進み、
主人公近辺のことに関しては、
まったく変化のない、同じ状況、
ということが、まれによくある。

家庭を舞台に描く場合はまだ楽である。
あまり変化がないからだ。
ホームドラマは、こうして長寿命となるのだ。


しかし人生を賭けた冒険を描くような、
いわゆるストーリーものは、
変化こそが命である。

だから変化していかなくてはならない。

映画の場合、
それでも二時間で終わるから、
変化しきることが可能だろう。

問題はそれより長いものであると思う。

キャラクターが立ってきて、
好きになると危険だ。

そのキャラクターには、ストーリーがなくなるだろう。


人気者はスキャンダルやキャラチェンジを拒まれる。
「好き」は、状態(点)に起こり、
変化(線)に起こらない感情だ。

「どうしてあなたはそうなの?」と、
状態(考え方)に怒り、
「そのやり方はおかしい」と、
変化(やり方)に怒ることはめったにない。

「あいつはおかしいが、やり方は間違っていない」
という評価があることはめったにない。
「あいつは態度が気に入らない」
はよくある。

それは、「状態」こそが好き嫌いを決める要素だということだ。


ストーリーは時間軸である。
好きは状態であり、時間軸を持たない。
(むしろ、いったん好きになったら変化を嫌う)

覚えておくとよい。



だから、ストーリーが好き、ということはめったになく、
キャラやシチュエーションや世界観が好き、
ということが多いのだろう。


好きなキャラやシチュエーションや世界観など書いている場合ではないのだ。
それがどう、なぜ変化していくのかを書きなさい。
posted by おおおかとしひこ at 20:32| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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