> うまくいかなかった原稿を再構築する場合、もう一度最初から作り直すつもりで構成を考え、熟成し、全部入りプロット、顛末プロットと手順を踏むべきでしょうか。一番大きいリライト→中くらいのリライト→細かなリライトの順で、土台は維持しつつ整えていく方針でもいいのでしょうか。
正確には、その前原稿がどういうものだったのかや、
吉村さんの腕のほどわからないと判断できないですが、
「納得のいく」方法でやった方が良いでしょう。
シナリオは基本独学なので、
どこかで「自分ならこうする」という経験を積む必要があります。
というのも、
「一からやるのは大変だ。
何か魔法のようなショートカットがあるのではないか」
という、後者を選ばせてくれ、
ということが文面から伝わるからです。
脚本家生活で暮らしていくつもりならば、
このような事態はなんどもあり得ます。
そのたびにチートの魔法を探すことになり、
いつまでたっても「根本的な解決を自力でやる」
ことを学ぶチャンスがなくなってしまうでしょう。
初期の頃は、その学習コストに、
もっとも時間をかけるべきです。
最終的に間違っても構いません。
それはその時の実力でしかありません。
そこから学び、
実力を上げていけばいいだけのことです。
最初にやろうとしたことはなんだったっけ?
最終形はそれと違ってどうなんたんだっけ?
をまず表にでもしてください。
そして、
「自分が納得がいくのは、
どういう最終形であるべきか」
を想像してください。
そして、
「真に面白いのはどういうものか」
を想像してください。
そしてそれが実現できる方法を取るべきです。
恐らく、最初の、時間がかかったやり方を、
最後までするのが最短距離です。
楽な方で完成させたとしても、
吉村さん自身が納得しないでしょう。
それで受けてしまったら、
納得のいかないもので受け続ける人生になりますり
(そんなことはないんですが)
また、納得がいかなくても、
「ストーリーが成立する」あたりで筆を置くのも、
慣れてくるとできるようになります。
それは一体どんな話で、
どういうツカミで、
どう落として、
なにを残す話で、
どこが面白いのでしょうか?
その単純な質問に、
簡潔に答えられるようになるには、
あなた自身が、
そのことについて、
納得のいくまで、
世界で一番考えないといけないでしょう。
それが作者というものです。
適当に流してテクニックで作ったものは、
ちゃんとバレます。
観客も分かるし、第一コンクールの審査員は同業者です。
オリジナルを作ることは、
テクニックでは出来ません。
昔ながらの、血の滲むような努力でしか、
切り開けません。
根性論ではありません。
その根性は必要条件であり十分条件ではないからです。
人生の全てを捨ててまで書いても、
なお面白くない人は沢山います。
しかしすべからく素晴らしい作品は、
作者の人生と引き換えです。
ということで、
たぶん一番しんどい道が、王道の正解です。
ちなみに、
スケジューリングをしましょう。
今回の経験で、「自分が何にどれくらいかかるか」
が少しは理解できたはずです。
プロットはいつまでに作るべきかが、
何となく車間距離的に見えたはずです。
しかし恐らくはリライトにどれだけかかるか、
やったことないので、
ここでもつまづくことが予測されます。
経験談ですが、
ネタを見つけてからプロットを上げるまで: 半年
第一稿執筆: 一ヶ月
リライト: 二ヶ月
くらいを見た方が良いでしょう。
専業ではなく、多くのアマチュアのように兼業を想定しています。
人によって違うかも知れませんが。
ついでに。
ストックを、10本くらい貯めといて下さい。
受賞したら、すぐに二作目を書かなくてはなりません。
三作目と四作目が同時に依頼が来ます。
コンクールは一年単位ですが、
仕事は半月単位かもしれません。
いつ勝負作を書けるのか、
というスケジュールになってきます。
コンクールを目指す間に、
何本もプロットを作っておくとよいです。
書かなかったけどアイデアだけはある、
みたいなものも含んでよいです。
大体、
作業の後半で、
現実逃避に新作のアイデアが浮かぶものです。
それもストックしておくべきでしょう。
それら10本が、
チートで明日の朝に完成するような、
魔法はありません。
一文字一文字埋めていくことでしか、
最後まで面白く書けません。
ジョギングしたり全力疾走したり足引きずったり、
休んだりしながら、毎日走ることです。
◯年で10本書くつもりで、
10本の年間のスケジュールとコンクールのスケジュールを、
一覧にしておいてください。
まずは納得のいく一本。
さらにもう一本。
さらにもう一本。
さらにもう一本。
これは死ぬまで続きます。
どこかでプロになるだけで、
生活は同じです。
そのストーリーが心底面白いかどうかだけが、
我々の喜びです。
納得いくまでやってみてください。
そのことだけが、あなたを成長させます。
同じ道を志す仲間たちにとっても重要な指針になると存じます。
ご指導を印刷して手元に置いて励みにします!
勉強すればするほど脚本家への道は遠いですが
それ以上に魅力も深いと思っています。
今以上に努力を惜しまず甘えと戦います。
本当にありがとうございました!
僕が会社に入った20年前は、こういうことを朝まで飲みながら教えてくれる人がいました。
いつも企画を見てくれて、ちゃんと駄目出しをしてくれました。
成長には、そういう余計な鬼軍曹が毎日必要だと思っています。
今そうはいかないので、ここで少しでも脚本の層を厚くできないかなあ、と思っています。
セミナーとかやれれば儲かるし、いいのかもですがね。
ということでここはボランティアなので、適宜質問などどうぞ。