2018年07月13日

コントラストを彫り込む

最初に書いたものから、リライトするとき。
コントラストが足りないなら、
もっと強くするとよい。


たとえばもっともコントラストが足りない代表は、
主人公のつらい状況やそこから脱出したい気持ちと、
最終的な大成功の対比だ。

暗部があるから、明部が明るく感じるのだ。


同様に、
途中のボトムポイントと、
最終的な大逆転のコントラストも強いほうがよい。
大敗北からの大逆転は、力強く、
勢いがあり、出来るだけ大逆転のほうがおもしろい。


不幸は徹底的に不幸に。暗く、さみしく、痛く。
幸福は徹底的に幸福に。砂糖と蜂蜜をかけて。

負けは徹底的に、勝ちも徹底的に。
これ以上ない大逆転のコントラストを、
さらに彫り込んでいこう。

第一稿では、なかなかそこまではいかない。
もちろん、それを意識してはいるだろうが、
この大逆転のためなら、
最初はもっと暗くてもいいな、
ということがあったりする。

で、最初これだけ不幸にするなら、
もっと最後にジャンプアップしたほうがいいね、
となることが、とても多い。


だとして、
現在の因果関係だけでは不自然になるのなら、
そうなるのに必要なのは何かと考え、
足したり改変していくべきだ。

目的は、コントラストを強めることである。


弱めることってあるんだろうか。
そのコントラストが、
他のコントラストを邪魔しているときかな。

たとえばキャラの対比が強すぎて、
ストーリーの起伏が目立たないなら、
それを弱めることは、あったりする。
テーマが浮き彫りになるべきコントラストが弱いなら、
そこを強めつつ、かつ他の不要なコントラストを弱めたりすると、
中心がくっきりとしてくるだろう。

人は、一番コントラストの強いところを印象的に覚えるのは、
絵画も写真も音楽も、
ストーリーも同じだと思う。

コントラストが最も強いところは、
つまりはダイナミックレンジが一番あるところで、
それって出力の限界と出力の最も小さなところの対比だからだ。
「そのもの」が持つ出力の巾を、
人は印象的に覚え、それがそのものであるように記憶する。

わかりやすいのは、ベートーベンの「運命」の冒頭だろうか。
あのダイナミックレンジ、
大きさと間で、人はテーマであるところの運命を記憶する。


その最もコントラストが強い、
中心となるダイナミックレンジの最大部分は、
キャラ同士の対比であるよりはテーマであるほうが、
ストーリーとして優秀だと僕は思う。


どん底をどう表現するか。
大成功を表現するか。
その落差をどう表現するか。

それらは点であり線ではない。
しかし点と点の距離は、線である。

コントラストは、自動的に線を生む。
posted by おおおかとしひこ at 18:46| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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