2018年08月01日

【親指シフト】親指シフト特有の壁、カナ配列習得共通の壁

親指シフトをちょこちょこ練習している。
で、親指シフトにチャレンジしている(いた)人の、
ブログやツイッターを検索して、
どういう問題にぶち当たっている(いた)のかも調べている。


そこに見えてくるのは、
・カナ配列習得共通の壁
・親指シフト特有の壁
の二種類だ。

ほとんどの人は、僕のように複数のカナ配列を習得しないから、
その二つの切り分けが出来ず、混乱の嵐に放り込まれる。

しかし起きている問題が、
どこに属するか分かっていると、
困難克服のロードマップが見えて楽になるよ。


ゲルマン語共通のことを知っていると、
英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペインポルトガル語、
ロシア語あたりは、一気にマスターできる(勿論時間はかかるけど)。

しかし日本語しか知らない状態から英語だけを勉強すると、
英語特有の壁とゲルマン語共通の壁(構文とか冠詞とか時制とか人称とか)と、
両方にぶち当たって苦労する。
そんな感じ。

(大学で第二外国語を取ったら、結構簡単に行けた経験があると思う。
大抵ゲルマン語だからだ)

ということで二つを切り分けてみる。
初心者ほど知っておくといいと思う。



カナ配列習得共通の壁には、だいたい以下のようなものがあると思う。

・IME切り替えの壁
・ブラインドタッチの壁
・同時打鍵の壁
・眠くなる現象
・モチベーションの壁
・速度の壁
・連接の壁

「親指シフトを始めてからこのような問題に出会ったのだから、
これは親指シフトの困難である」
と知らない人は思ってしまい、
「親指シフトはなんと難しいのだろう」
と諦めてしまう。

いやいやいや、それはカナ配列の壁なのかもよ?

カナ配列習得の壁を考えなければ、
親指シフトは比較的マスターが楽な部類だと、
体験中の僕は感じているくらいだ。

ひとつひとつ解説していこう。




・IME切り替えの壁

「アルファベットはどう打つんだ?」
これはカナ配列を始めた人が3分後くらいに疑問に思うことで、
ほとんどの人は答えてくれない。

僕はこれはWindowsの欠陥のひとつとすら考えていて、
Macの方式のほうがエレガントだと考えている。

Macには「かな」モードと「英数」モードがあり、
スペースの右と左にそれぞれボタンがある。
「かな」のときは、日本語入力(ローマ字だろうがカナ入力だろうが)、
「英数」のときは、アルファベットと半角数字と記号。

つまり「英数」はアメリカキーボード、
「かな」は日本キーボードと切り替えて使うシステムだ。

これは何が優秀かというと、
「新しいウィンドウに移動したとき、
今英数モードかかなモードかをチェックすることなく、
スペースの左右どっちかを押してから入力を始めればOK」
という部分だ。

最初に押しさえすれば良くて、
しかも切り替えたければブラインドタッチで親指ですぐできる。
じつにストレートでシンプルな解で、
僕はこれがベストだと考える。
(だからカタナ式、薙刀式ではそのシステムを使っている)


しかるにWindowsはややこしい。

・全角/半角キーで、かなと英数を切り替える(今どっちかわからない時危険)
・かなモードでアルファベットを打ちたければ、打った後F10で変換できる

だそうな。僕はどっちも使っていない。

全角/半角キーは遠すぎる。Qすら僕はブラインドタッチで打てないから、
ブラインドタッチで切り替えができないことになる。
(スペースキーの左右位置なら近いのに!)
F10も遠い。
数字段さえ怪しいし、
ローマ字の「ー」にイライラしていた僕が、
その上にまで指を伸ばせるはずがない。

全くもって不合理だ。

ちなみにMS- IMEで、
スペースの左右の「変換キー」「無変換キー」に、
「かな」「英数」をMacのように割り振れるよ。
かなモードのことを、IMEオン、
英数モードのことを、IMEオフ、などという。
(やり方はググってください)

IMEという言葉を知らない人の方が多いと思う。
Input MEthodの略で、
キーボードと文字出力の間にある、システム上のソフトだ。

キーボードはキーコードしか吐かないが、
それをIMEが受け取り、システム側に文字(アスキーコード)
に変換して渡すわけである。

英数モードでは、来たコードと出力コードは一対一対応だから問題ないが、
日本語では「ka」を「か」に変換したり、
さらに漢字変換や候補選択や確定などをしなければならず、
複雑なシステムが要求される。

IMEには、
Windows標準がMS-IMEで、Mac標準がことえり。
ほかにATOK、Japanist、Google日本語入力、
かわせみ(eg bridge)、しめじなどがある。

日本語の場合をあげたが、他言語のIMEもあるだろう。
IMEは英語ネイティブにとって、
他言語圏へ輸出するときのパッチソフトであることが理解出来るだろう。


親指シフトやカナ配列は、
キーボードとIMEの、さらに間に入って、
IMEに渡す文字を変換して実現しているわけだ。

だから、
「アルファベットはどう打つんだ?」
に対しては、
「IMEをオフにして打て。オンにして戻れ」
と答えれば良い。

だけど、ここまでわからないとこの一行を理解できない。


「なんだかめんどくさいなあ」と思うだろう。

実は日本語入力そのものが、
Windowsにとってめんどくさい仕様に最初からなっている。
Macはそのへんを一切感じさせない仕様で、
設計思想において数歩抜きん出ていると思う。

「英数に切り替える」という考え方はフリックでも同じだから、
馴染みやすいシンプルな解だと思うんだがね。


で。
プログラミングやコンピュータ記事のように、
英数と日本語が入り混じる場合は、
カナ入力そのものが得意とするところではない。

日本語が多いときはカナ配列で、
そうじゃないときはローマ字で、
と使い分ける人がカナ入力者に多いと思う。

(僕の場合、脚本や小説など、
英語を混入させてはカッコ悪いさえある縦書きがメインだから、
全面的にカナ入力だ。
横書きはローマ字、となんとなく縦と横で使い分けている)




・ブラインドタッチの壁

ローマ字のブラインドタッチ習得率は、
日本人の3割程度らしい。

ローマ字のブラインドタッチができる人が親指シフトを始めるのか、
出来ない人が始めるのか、
調査がないのでなんとも言えないが、
僕はブラインドタッチが出来ずにカナ配列を始めたので、
「ブラインドタッチをマスターする」
ことそのものも、同時にしなければならなかった。

ブラインドタッチは、
・そもそもキーが10個×3行あることを理解する
・指の担当が決まっていて、他の指で押してはならない
・ホームポジションに構え、一文字打ったら元に戻る
を、
「目をつぶっても実行できる」
(たとえば電気をつけてない夜の部屋でも出来る)
ことである。


たとえローマ字(デフォルトのqwertyローマ字)の、
ブラインドタッチができる人でも、
右小指中段や左小指上段はほぼ使わないので、
出来ていないことが多い。

さらに、指の使用分布や運動曲線が異なるところから、
「その配列の想定する指遣いをブラインドタッチでやる」
をマスターする必要がある。

(たとえばFVという運動はローマ字にはないが、
薙刀式では「かこ」で、まあまあ使う)


qwertyとJISカナ以外はキーに印字がないため、
「そもそもブラインドタッチ」
がカナ配列習得の条件だったりする。

これをマスター出来ないといけないため、
カナ配列習得そのものの壁が高い。
(オススメは紙に印刷して、持ち歩くことだ。
学生時代の単語帳と同じだったりする)



・同時打鍵の壁

「カナは48音、キーは30個。
だから残り18は、なんらかのシフト機構で出す」
というのがカナ配列の特徴だ。
(例外は4段使うJISカナ、龍配列、蛇配列など)

シフト機構には、
「何かを押しながら何かを押す」
「何かと何かを同時押し(順番は問わない)」
「何かを押したあとに(離そうが押しっぱなしだろうが)何かを押す」
などがある。

親指シフトは同時押し配列の一種だ。
(同時押し配列には、
親指同時押しに飛鳥配列、蜂蜜小梅配列、
中指や薬指同時押しに新下駄配列や下駄配列、
人差し指同時押しに薙刀式、
左右の決められたものの同時押しにかわせみ配列がある)

同時押しには、
「判定秒数」(実装によって名前が異なる)があり、
「○ミリ秒以内に二つを押すと同時」とみなす方式が多い。
完全同時は人間には辛いからだ。
(初心者は100や150ミリ秒、上級者は50ミリ秒くらいか)

この「同時の感覚」に慣れることが難しい。

さらに、同時押しと単打を打ち分けるのも難しい。

同単単同同単同、なんてなってくると、
もはやリズムゲームだ。
ピアノ経験者が有利、と言われるのはこのせいだ。

ローマ字にはこういうことは一切ない。
それをマスターする壁があることを知っておこう。



・眠くなる現象

新しい配列を習得するとき、
思った以上に肉体と脳を使っているようで、
物凄く眠くなる。

水泳に似ているかも知れない。
自分が思うより疲れていて、午後に眠くなる感覚。

これと上手に付き合えないといけない。
仕事を持っている人はしんどいね。
連休に始めるのがこつだ。


・モチベーションの壁

数ヶ月毎日練習するモチベーションは、
どこから湧くのだろう?

ダイエットもジム通いも続かない人が、
配列習得だけは続くというのもおかしなものだ。
続くとするならば、
よほどの理由がなければならない。

楽しい、というのは一つのモチベーションだけど、
ネットを見る方が楽しかったりするのは確か。


僕の場合でいうと、
「qwertyローマ字を打つことが心底嫌だったから」
だ。
「フリックで何万字書くのも嫌だったから」
も付け加えようか。

qwertyローマ字を僕はブラインドタッチしていなかった。
だからマスターしようとして左小指が悲鳴をあげた。
「こんな無茶苦茶なことが出来るわけがない」
と検索して、
僕は配列変更の道にはいったわけだ。

「効率が良くなるらしい」程度で、
人は何ヶ月もコツコツ練習できない。
見えない道を進むモチベーションがない。

スピードだけでいえば従来のローマ字の方が速いし、
そっちに戻れば習得中の配列の速度は落ちる。
二か国語習得のジレンマだ。


数日おきに速度の成果が見えれば分かるんだけど、
そんな都合よく成果は現れない。
スポーツをやったことのある人なら、
実感として理解出来ると思う。

(その為に、一定の文章を打ち、
成果測定をするやり方は一定の効果がある。
でも伸び悩んだり遅くなったりすると、凹んでやらなくなってしまう)

黙って三ヶ月黙々と出来る人は、
よほどのモチベーションだろう。
それを保つことが本当に難しい。

安易な気持ちでやった人は、大概挫折する。
「だから言わんこっちゃない」と言われるのが嫌で、
二度と挑戦しないだろう。

何度トライしたっていいんだよ。
そこによほどの目的があればね。


僕は、「一日5000字以上書く人」が、
カナ配列習得の基準だと考えている。
それ以下だとあまり効果が変わらないと思うんだ。

腱鞘炎がつらくて打鍵数を減らしたい、
というモチベーションだと、
そこまで続く人は少ないと思う。

それよりもキー荷重が少ないキーボードを買う方が劇的に改善できる。
キー荷重が少ないNiZ Plum 75とリアルフォースオール30gをオススメします。
ジム行くことを考えたら2万いかないわけで、安い投資だよ。



・速度の壁

速度効率だけを考えると、
カナ配列にしたって2倍に伸びるわけではない。

「その人の最高速は決まっていて、
どの配列でもそこで頭打ちになる」
という仮説を僕は支持している。

じゃあカナ配列に変えてもたいして速くならないじゃないか、
と効果を疑問視する人もいる。
一方打鍵数的には減るので、「楽になった」と効果を言う人は多い。


僕の場合は、
ローマ字を極めていなかった為、
薙刀式によって2倍以上の速度を手に入れたが、
これがすべての人に当てはまるわけではないと思う。

また、これまでの年単位の癖を抜けて、
別の癖をつけなければいけないから、
年単位かかることは頭では理解出来るのだが、
一週間単位ぐらいで速度効果測定をやりたくなってしまい、
「ちっとも速くならない」と、
落ち込むことになりがちだ。

数字で測定することは、表面上の数字に振り回されて、
その背後にある因果関係の考察から逃げがちになる。
視聴率ばかり追い求めて詰まらなくなったテレビのように、
数字が上がらないのはダメだからだ、などと短絡してしまいがち。
あと半年やれば良かったのに、なんてことはよくあることだ。

ブラインドタッチはスポーツに似ている。
上達速度は、スポーツのそれと近いと思う。
陸上競技をやったからといって、
みんながみんな10秒切れるようになるわけではない。

他人の速度を見ていると自分には才能がないと思いがちだ。
ライバルは過去の自分(ローマ字ばかりでなく、手書きも含む)であり、
そこからどれくらい成長したかしか重要でない。
(それも数字に振り回されがちだけど)


参考までに書いておくと、
薙刀式なら、変換後で1000字/10分ペースが可能だ。
親指シフトなら、分速180〜240カナが、「指が喋る」速度と言われていて、
大体そのへんが上級者と言われる。

タイピングソフトの測定は実用文ではないので、参考でしかない。
毎パソの過去問などを初見で打ってみて、
測定するのが一番信用できると考えている。
(薙刀式の数字はそうやって測定した)




・連接の壁

配列を習得することは、
一つ一つの文字の場所を暗記することではない。

「ある」「ない」「なぜなら」などの、
一連の流れを指で覚えることであり、
単語単位の運指を指で再現できるようになることだ。

だから、「指の語彙を増やす」ことが重要だ。

その配列特有の連接の指遣いというものがある。
ローマ字だと「ou」が打ちやすいとかあるよね。
その配列には打ちやすい指遣いがあり、
打ちやすい指遣いでよく打つ言葉が打てるのが、
カナ配列の理想である。

しかしながら、
「すべての単語を良い指遣いで打つ」ことは原理上不可能で、
どうしても「打ちにくい」指遣いが出てくる。

親指シフトでいえば、
「なあ」とか「ある」とかは僕は苦手だ。
(それぞれ左中指中段+左親指→左薬指中段+左親指、
左薬指中段+左親指→右中指上段+右親指)

僕は左薬指が苦手で、
時々中指と薬指の区別がとっさにつかなくなる。
だからそれを含む指遣いが苦手だ。

この「苦手な指遣い」には、
個人差があると考えられる。

だから配列には合う合わないもあるし、
練習したら出来るようになる指遣いもあるし、
練習しても一生できない指遣いもあるし、
ずっと練習してたらある日出来るようになる指遣いもある。

これらの「指遣いの感覚(五感で言うと触覚に属するのだろうか)」
と、
言葉の連接の感覚が一致してないと、
カナ配列をだだだと打っていくことは難しい。


「うまく打てない、なぜだろう」
と人は感じることは出来るものだが、
こういうことを知らないと、
対策や正解にたどり着けないと思う。

苦手な指遣いの練習を集中的にやれば克服できたかもしれないのに、
「向いてない」と勘違いしてやめてしまう例も、
多々あると考えられる。





さて。


これらは、
親指シフトであろうが、薙刀式であろうが、
飛鳥配列だろうが新下駄配列だろうが、
共通して起こることだ。


これ以外に起こることが、
親指シフト特有の問題であり、
上に挙げたものは、
親指シフトの問題ではなくカナ配列習得に関わる問題だ。

挫折した人は親指シフトに挫折したのではなく、
カナ配列習得に挫折したのかもしれない。

これを「親指シフトに挫折した」というから、
ネットでは「親指シフトの挫折率97%」なんて都市伝説が生まれるのだ。

問題はきちんと分析して切り分けるべきだが、
無知だとそれすら出来ない。


なので、整理して書いてみた。



親指シフト特有の問題については、
今まだ習得中なので、
思った時にちょくちょく書いていくことにする。
posted by おおおかとしひこ at 13:40| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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