2018年08月01日

【親指シフト】表参道で本物を触ってきた

やるなら本物の親指シフトキーボードを触ろうじゃないか。
表参道「アクセス」で触ってきた。東京民でよかった。


結論からいうと、
「普通のキーボードでも親指シフトはできます!」
なんて嘘なんだな、ってこと。


まず押下圧が全然違う。

一番高級モデルだとNiZより柔らかく、
しかも直線に沈んだ。さすがメイドインジャパン。
(NiZはやや揺れる)

ああ、これなら打ってて疲れないわ、
と触って1秒で理解できる。

親指シフト以外の配列で使っても気持ちいいかも知れないくらいだ。


店長さんの説明によると、
キーは富士通の板バネだそうだ。
うむ、体感20とか25gくらいに感じた。

これが「打っていて疲れない」根拠なのだなと。


問題の親指キーがどれくらい高いのか、
知りたくて触りに行った。

倍ぐらい高い。
しかも丸っこくて、親指を横に滑らせやすい。

上段右人差し指伸ばし+右親指の「よ」(Y裏)が、
難なく打てる。

そもそもJISキーボードとは、
最初に置く手の位置が違う。
親指キーに親指を揃えることで、
自然と手が上に上がり、
猫の手がしやすくなる。

手首を浮かせるかどうかは二の次で、
このキーボードに手を置いた時点で、
手首は浮かし気味になってしまう。
この手の位置ありきの、腕の置き場所をつくることを考えてしまう。
(たとえば数センチのブロックを手前に置くとか)


左親指キーはそこまで打てなかった。
「ぃ」とか試せばよかったな。
「ー」(左薬指下段+左親指)も、全然楽に打てました。
「キーボード」も、
軽い押下圧のせいか、それとも親指キーのせいか、
今使ってるキーボードより打ちやすい。
「フィールド」とか打ってみればよかったな。


小指中段のポッチも確認してきた。
ここをアンカーにすれば、
打ちやすい配列であるという考えは、
ますます裏付けられることになった。


改行はあるが確定がない。
そうか、Japanistは確定しないスタイルだった。
小指外はるか遠くのキーは改行キーに過ぎない。
(しかし原稿用紙に書くのと違い、
Webでのライティングはこの文のように改行しまくりだけどね。
まさかこんな記法になるなんて、当時には予測もつかなかったことだけど)

数字段や記号まではマスターしていないので、
触りきれなかった。


ああ、たしかに、
このキーボードなら親指シフトはめっちゃ楽です。

逆にいうと、
普通のキーボードでこれを再現なんて出来ないね。

NiZやリアフォ30でも厳しいんじゃないかな。


ネット界隈で、
親指シフト親指シフト言うてる人たちが、
とたんに胡散臭く見えてきた。

お前らそんなに書いてないんじゃないのか?

普通のキーボードでエミュレートするレベルだと、
薙刀式の方が効率がいいぜ。
ただ親指シフトキーボードならば、
NiZの薙刀式とどっこい、かも。(どっちがいいかは極めて見ないとわからない)

それくらい、
物理の凄さを見てまいりました。



昔のものづくりはこんなに凄かったんだなあ。

コストコスト言うて、
安い安い言うて、
悪貨しか知らない人は、
良貨を一生知らずに死んでいくのか。
なんか悔しい。


親指シフトがこんなに最高であると僕は想像もしていなかった。
JISキーボードによるエミュレート環境だったからか。
hhkbによるエミュレーションなんてたいしたことないやんけ。

ニコラ配列そのものよりも、
親指シフトキーボードのほうが凄いんだって、
わかったよ。
(だから論理配列は二の次だったのかもしれない)

配列屋は、この物理キーボードで何とかしようと頑張ってきた。
一方富士通はすごいキーボードを先に開発してしまった。
その違いかもしれない。

(しかも当時のIMEは比較的性能がよかったのだろう)



価格は3万円。
買えないことはない。
今までよりも、
「親指シフトはいいかも」と思えた体験でした。


でも流石に敷居が高い。
本気で極めたいかどうかで聞かれると、
薙刀式以前だったら、
アクセスに通ってでもやってたかも知れないレベルではある。

ここまで個人で頑張って構築してきたものに、
いきなり匹敵するものを出された感じだ。


これで僕は、
世の中のシフター達の言い分の真贋が見分けられるようになると思う。
「お前純正を触ってないからそれ言えるんだな」と。

逆にJISキーボードで親指シフトして、「いいぞ」なんて言っている人は、
他の配列を試してもいない人なのかもしれないね。



「親指シフトをやっているやつなんて、情弱レベルじゃないか」
と僕はひそかに思っていたのだが、ここに本音を記しておく。
「純正キーボードでやっているか、かつてはそうで今はやむなくJISキーボード使用」
ならわかる。
それ以外はただの情弱。

古参が新規にあまり勧めない理由が少しだけ分かった気がする。
純正キーボードは高いしレアだし。
posted by おおおかとしひこ at 19:18| Comment(10) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
とても興味深い記事をありがとうございます。親指シフトを常用されていないのに(もしかしたら、そうだからかもしれませんが)、感覚の鋭さには脱帽です。

親指シフト常用者として気づいたことを述べさせていただきます。

アクセスで使われたのは、FMV-KB613(以下613)だと思います。私自身は613は使っておらず、通常はFMV-KB232(以下232)を使い、場合によってはFKB7628-801、通称ThumbTouch(以下同じ)を使っています。両者とも613と、親指シフト専用キーボードという意味では同じ種類に属します。

613は店頭で触れた程度ですが、その感触はとても良く、大岡さんの感想にも納得です。私が常用している232やThumbTouchは、そういう物理的な快適さでは613には及ばないでしょう。特にThumbTouchは携帯することも視野に入れた小型のものなので、制約も大きいという感じです。

それでは、613のような親指シフトでの快適さが感じられないかというと、そうでもないと思います。それは、専用キーボードとしてクルーシャルな親指シフトキーの場所と大きさ(特に幅)に関しては、232もThumbTouchも613と変わらず、問題ないからです。

このことを思ったのは、大岡さんの「よ」に関する記述です。

ずっと前に飛鳥の設計者と掲示板で議論したときに、これの打ちにくさを強調されていて、なぜだか分かりませんでした。あとで気づいたのですが、飛鳥はJISキーボードで打鍵することを前提にしているため、右親指シフトキーは専用キーボードに比べて右にあります。また、その大きさも専用キーボードより小さいものが普通です。これならY裏は相当打ちにくいだろうなと思います。

親指シフトでの親指シフトキーの役割は、実は従だと思っています。他の指は、文字に対応するキーの位置に動かなければいけません。親指シフトキーは、必要に応じて押すか押さないかを決めるだけです。だから、親指は他の指に追随して動けるようになっていた方が自然です。これを保証するのが、親指シフトキーの場所と幅なのだと考えます。

もう一つ、猫の手に関しては、親指シフトであるかどうかにかかわらず、キーボードの位置が大きく関係していると思います。

コンピューターを使う際のエルゴノミクスに関するサイトを見ると、多くは、上腕を肩からまっすぐにおろし、肘を直角に曲げ、肘から先は水平にしなさい、と教えています。これが、指の第1または第2関節で自然に曲がると猫の手になるのだと思います。

このためには、キーボードの高さが重要になります。私の見るところ、多くの事務机はキーボードを置くには高すぎる感じだと思います。高さを適切なものにすれば、自然と猫の手になるように思います。
Posted by 杉田伸樹 at 2018年08月15日 22:50
杉田伸樹さんコメントありがとうございます。

その三台ともじっくり触ってきました。
232は以前触ったリベルタッチに似てるなあと思って店長に質問したら、
中身は同じで最下段だけ違うと教えてくれました。
昔親指シフトについて調べていた時、設計想定の押下圧が35ないし30gと聞いたので、
それで親指シフトを打つってどういうことだろう、
というのが体験したいと思った動機です。

そもそも僕はキーボード難民に始まってローマ字自作に踏み切り、
打鍵数の多さに腱鞘炎になりかけ、
カナに転向して飛鳥と下駄を経験した後、
自作薙刀式にふみきったようなバックグラウンドで、
その中で、押下圧が低いと楽だということに気づき、
60gはあったパンタグラフ→45gのhhkb→35gのNiZにたどり着いた感じです。

ようやく快適至極な押下圧のキーボードになったので、
「そういえば親指シフトの本物のキーボードは、
理想の押下圧に違いない」と、本物を見に行ったのです。
なるほど軽くて、
このキーボードを最初に手に入れていれば、
現在の入力のひどい環境に対して説教の一つもしたくなるなあと思った次第。

あとエミュレーションでしかやっていなかったので、
「高いキーってどういうこと?」「B割れの理由」
なども体験したかったのもあります。

僕は親指シフトが「僕にとって」ベストの配列ではないと考えていて、
でもこれだけの愛好者(中毒者?)のいる理由はなんだろう、
この入力のなにがいいんだろう、
というのを知りたいんですよね。
分かれば、さらなる改良ができるはずだから。


ちなみに、
海外のタイプライター用の机は日本の事務机より15センチくらい低いんですよね。
(海外のタイプライターやピアノの高さについての動画も沢山見ました。結局ピアノベースということが分かりました)
日本でそういうのを輸入して展示してるところを探しましたが、
僕は手書きメインなのでそれには日本の事務机のほうが都合がよく、
他のやり方はないのかなあと試行錯誤中です。
(膝上にキーボードを置く塩澤メソッド、
寝転がって腹の上に置くラッコスタイル、
スタンディングもやってみましたが、
1時間同じ体勢をとることは難しい)

つまり、
日本語をデジタル執筆するのに、
論理的にも物理的にも全くベストの方法が構築されてなくて、
お前らなにやっとんのじゃ、書道に戻れや、
というのが僕の探究心の源かもしれませんです。
Posted by おおおかとしひこ at 2018年08月16日 03:21
ありがとうございます。

3台とも試されたのですね。613が一番、親指シフトの思想を忠実に体現していると思います。今後もなくなってほしくないものです。

リベルタッチは今年はじめに生産終了になって心配したのですが、最近復活しました。全キー35グラムとなっており、この設定は232と同じです。親指シフト者としては232のベースモデルが健在であることはうれしいです。

「日本語をデジタル執筆するのに、論理的にも物理的にも全くベストの方法が構築されてなくて」というのは同感です。労働安全衛生の思想も十分浸透していないと思います。

私もいろいろ試して、物理的にはだいたい以下のように落ち着いてきています。まず、キーボードは机の天板ではなく、一段低い板の上に置いています。高さは床から60センチくらいです。これは可動式にしてあるので、使わないときはしまって、机で作業ができます。

机全体を低くする選択肢もありますが、それだとキーボードをどかして作業するのが面倒だし、キーボードを使わない作業には低すぎます。あと、ディスプレイの高さや目からの距離の問題もあります。

以下はこれまでの私の使用例です。

https://www.facebook.com/groups/oyayubishift/permalink/801851516509436/
https://www.facebook.com/groups/oyayubishift/permalink/479336162094308/
https://www.facebook.com/groups/oyayubishift/permalink/667993783228544/

現在は、オフィスでは以下の通りにしています。普段は机の上はこんなにきれいではありません(笑)。

https://1drv.ms/f/s!Alyef27dbg7V6jq5l1_STIXFTdpE
Posted by 杉田伸樹 at 2018年08月16日 09:42
613の板バネキーは、いまあるどのスイッチよりもいい感じでしたね。
誰か自作キーボード作ってないかなあと思うくらい良かったです。
それに比べると232はリアルフォース30gよりは劣るかな、
と思いました。
テンキーも邪魔ですし…(左手マウスは僕は使えないので)

写真のテーブルはなかなかいいですね。日曜木工で作れないことはなさそう。
「事務机の引き出しを開けて使う」というやり方も聞いたことあります。有線だとしんどいでしょうけど。

もう日本のメーカーはそこまで総合環境として開発しようと思ってないと思われるので、
個人でパーツを集めて構築する時代なのかなあ、
とも思います。
だとするとデジタルに関しては私塾寺子屋時代に劣ることになり、
それはそれで大変危惧する事態と考えます。

僕の場合は「何万字も書きたい」という目的の手段探し、
という側面ありますが、殆どの人にそのモチベーションがないのがねえ。
「創作文が溢れることを期待してワープロを作ったが、
ほとんどの人は年賀状にしか使わなかった」
という逸話を思い出します。

しかしフリックで書くツイッター以上に書きたい人は確実にいるだろうから、
その人たちが辿り着けるように何かをまとめて上げることは重要かと思います。
とくに失敗を記すことは重要で、
「こうしたけどだめだったのは、こういう理由があったからなのだ!」
と分析すると、何を大事にしなければならないか、
知らない人にも分かってくると考えています。
Posted by おおおかとしひこ at 2018年08月16日 13:22
オフィスの机の引き出しは抜いてあります(笑)。これがあると邪魔なので。また、引き出しは手前が高くなっているので手がひっかかってしまうのでキーボードを置くには不適当です。

キーボードを置く場所のためにテーブルなど、いろいろ自作したのですが、脚の取り付けが一番難しいですね。だいたいは斜めになってしまいます。机の天板が木で、裏側に穴をあけても良いなら、ブラケットとスライドレールを使う手もあります。

失敗を記すことが重要なのはまったくその通りです。俗な言い方ならPDCA、哲学的には弁証法(笑)の基本です。

五月雨で失礼。

>親指シフト以外の配列で使っても気持ちいいかも知れないくらいだ。

専用機の時代には親指シフトのOASYSでローマ字入力していた人が結構いました。値段も親指シフトキーボードとJISかなキーボードで同じでした。今はわざわざ親指シフト専用キーボードでローマ字入力をする人はいないでしょう。後退キーとかローマ字入力でも便利なんですけどね。
Posted by 杉田伸樹 at 2018年08月16日 23:22
日曜大工の決意をしたら参考にさせていただきます。
でもそれがベストなら、持ち運べるやつにしたくなるだろうなあ…
(膝上クッションはどうしても暑くなるので)
しばらくは普通の机で工夫してみますが。

ワープロの頃はどのキーボードも高級で、
親指シフト(とトロン)だけ取り残されたのかも知れないですね。
ロストテクノロジーになる前に、
自作キーボード勢になんとかしてほしいところ。

自作勢は結局、「静音赤軸を35gに改造」あたりに落ち着くような気配が漂ってきました。
配列そのものはqwertyでしょうけど、
親指派や配列屋さんがそこに乗り込んでほしいなあと思っています。
親指シフトプリインフトール自作キーボードとか、
3万で売れると思うけどなあ。
Posted by おおおかとしひこ at 2018年08月17日 11:48
ご参考までに。

可搬式のテーブルの自作例です。難しいのは脚をテーブルに直角につける仕掛けで、なかなかうまくできません。このあたりはプロの意見を聞いた方が良い気もします。
https://www.facebook.com/groups/oyayubishift/permalink/849079688453285/
https://www.facebook.com/groups/oyayubishift/permalink/943574589003794/
https://www.facebook.com/groups/oyayubishift/permalink/947326701961916/
https://www.facebook.com/groups/oyayubishift/permalink/866597366701517/

その他のキーボード設置の工夫例です。
https://www.facebook.com/groups/oyayubishift/permalink/932673796760540/
Posted by 杉田伸樹 at 2018年08月17日 13:22
これはなかなかなものですね。
持ち運び用の袋もあるとは天晴れな。

しかし僕の主戦場はカフェなどのモバイル。
というか自宅もカフェも同じ環境にしたい。

現在はSurfaceタブレット、縦置き用スタンド(視線を上げる)、
BTキーボード(NiZの35g)、BTマウス、パームレストを、
カバンの中に入れています。
MacBook一台が羨ましいですが、
あの体勢で一時間とか無理でしょう。

で、どんな場所でも普通に書ける紙とペンのほうが、
素晴らしく見えてきます…

先日アマゾンUSAでマジックフォース(gateron白軸35g)の、
40%キーボードを54ドルでゲットしたので、
(日本だとhttps://www.amazon.co.jp/Mechanical-Keyboard-GATERON-Backlit-Magicforce/dp/B07GBY3M1W/ref=mp_s_a_1_28?__mk_ja_JP=カタカナ&qid=1534003015&sr=8-28&pi=AC_SX236_SY340_QL65&keywords=qisan++gateron
でゲットできる模様。高くて遅いですが)
これとかえうちを繋げれば、
「35gかつ親指シフトかつモバイル」
が実現するかも知れませんのでご期待ください。
来週到着なので使用実感などはブログに書きます。
静電容量方式とメカニカルリニア軸の違いもあるので、
触って考えたいと思います。
Posted by おおおかとしひこ at 2018年08月17日 14:32
ご参考までに、私の個人的キーボードランキングです。

http://thumbshift.blog108.fc2.com/blog-entry-11.html

私が専用キーボードにこだわるのは、常に同じユーザーインターフェースを求めるからで、端的にはキー配列になります。その上でキータッチなどを考慮するということになります。

親指シフトに限りませんが、不適切なユーザーインターフェースは健康障害を引き起こす可能性もあります。これは個人の好みの問題を越えて、社会的に考えなければいけないものだと思っています。

http://thumbshift.blog108.fc2.com/blog-entry-26.html
Posted by 杉田伸樹 at 2018年08月21日 10:42
杉田伸樹さんコメントありがとうございます。

なるほど参考になります。
親指シフトの場合は何より親指キーなのは、やってみてわかりました。
それさえなんとかなれば(自作も含め)、
あとは押下圧だと思います。
(配列はエミュレータでいかようにもいじれるし、
ある程度なら人間は適応できるので)

作業量が減らないなら、一回一回の労力が半分になれば良いはずです。
標準的なものが55gというのには大いに疑問があると僕は思っていて、
35gを標準にしてもいいと思うくらい。
今のバネは35gが最軽量なので、
20とか10とかを作れれば作ってみたいぐらいですね。
いい万年筆を触るとほとんど0で書けるので、
「キーボードは万年筆である」というレトリックを使うならば、
押下圧について触れるべきだと思います。

もうみんなスマホで0のタッチパネルで慣れているのだから、
そういうキーボードを作ってもいいと思っています。
指を置く場所を物理的に作って、そこから移動したときに感知すれば、
実現するはずなんですがねえ。
Posted by おおおかとしひこ at 2018年08月21日 17:24
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