2018年08月04日

何故中身を先に作ってガワを後でつくるのか

中身を作る方が時間と手間がかかるからだ。




ものづくりの原則は、
時間のかかるものから順に作り、
時間のかからないものを最後にする。

焼肉をするのに、
タレをつけてゴマやネギをかけてから、
牛を殺さない。


あなたが何かを書きたいとして、
先にガワから作り始めたとしよう。

キャラ設定、世界観、背景設定、
登場するマシンやアイテム、舞台の細かな設定、
人間関係や組織の設定などをしたとしよう。
あなたが絵が描ける人なら、ビジュアルデザインもしたかもだ。

仮に一ヶ月かかったとする。
じゃああとはストーリーだ、
と中身に取り掛かるとしよう。

一ヶ月ガワにかけたから、
一ヶ月でストーリーが出来るだろうと予測するかも知れない。

プロットを書き始め、本文に取り掛かり…

だが、一ヶ月では出来ない。
良くて1/3ぐらいじゃないかな。
オープニングから数シーンで終わるかも知れない。

こうして、途中で挫折した作品が増えていくだけだ。


何が悪かったのだろう?
才能のなさはあるかもしれない。
そもそも書けないことを書こうと、
高すぎる壁に登ろうとしたのかも知れない。
(だから僕は5分作品を100本書け、
と常に言っている。
落ちまで書くことがストーリー作りの基礎筋力を鍛える)

仮に書ける実力があったとしても、
作る順番が違ったのだ。

先に中身、後でガワだ。


本文に一ヶ月のスケジュールを見たとすると、
ガワにかける時間は3日くらいで良い。

ガワに一ヶ月かかるのだとしたら、
あなたはガワの才能がない可能性がある。


大体10:1くらいの、かかる時間の差を見込みなさい。

一ヶ月ガワにかかるなら、
中身には十ヶ月かかるだろう。
そして十ヶ月かかる仕事ってのは、
一人で自己管理するにはなかなかに困難だ。
どこかでモチベが折れて、
やはり挫折しやすいだろう。

中身は建築に例えれば基礎工事と、
そこから導かれる部屋のレイアウトだ。
ガワは内装や家具。

人はガワしか見えないから、
壁の裏や縁の下に何があるかを想像できない。

いくつか家を作ったことのある人ならば、
想像することが可能だけど、
そうなったらガワと中身の関係を理解しているので、
ガワに一ヶ月かけるなんて馬鹿な真似をせず、
中身にまず一ヶ月かける。


なぜあなたのストーリー作りは途中で終わってしまうのか?

タレとゴマとネギを用意してから、
牛を探しに行っているからである。

まず牛を殺せ。解体して熟成させ、
しかるのちに食べやすく切って焼け。
そこでようやくタレとゴマとネギの出番だ。
焼く前にタレを準備するくらいで間に合うぜ。


すごいストーリーを思いついた!
主人公はこんな感じで、こんなロボットに乗るのさ!
敵はこんな感じで、
世界設定はこんな感じで、人間関係はこんな感じで…

となったとしても、
あなたはまだ牛を見つけていない。



ちなみに、中身とは、

・事件がどうやって起こり、それがどうやって解決するか
・それがどのような二転三転をするか
・主人公がなぜそれに関わろうとして、どうやって見事に解決するのか
・主人公の内的問題とその解消
・これらから導かれるテーマと、それを語るために必要十分な構造
・サブプロットがテーマを補強するサブテーマになっていること
・主要登場人物の動機、行動
・全てが矛盾や無理がなく進行するか
・起伏とテンポの計算
・ひねりを加えて面白くするか
・BストーリーやCストーリーについても同様

などのようなものを言う。



それでも、人はガワしか見ない。
縁の下や壁の裏は見えないからで、
人は見えないところがきちんと作られていることを想像する力がない。

想像できる力のある人の批評は、
信ずるに足るだろう。
posted by おおおかとしひこ at 12:24| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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