2018年08月05日

見切り発車

準備は早々に、
とにかく書きたいから書き始めるのもよい。

ただ、見切り発車は大抵以下のようなことが待っている。


最初は勢いがいい。
何が起こるか分からないワクワクがある。

しかし途中で詰まらなくなってくる。
ここで挫折する人も多いが、
うまく乗り越えて書き続けられたとしよう。

(その乗り越え方にはいくつかパターンがあって、
辛いけど我慢して書いているうちに、
次への突破口を見つけたか、
今までなかった要素を急に思いついて、
継ぎ足せた時だ)

後半から、キャラクターがどんどん立ってくる。
勝手に喋り、勝手に動き出す。
プロットにないことを始めたりして、
しかもそっちの方が面白かったりする。

で、後半が計画から伸び、
当初と違ったところに着地して終わる。



おおむね、見切り発車するとこうなる。

連載の時はこれでもいいと思う。
なにかが爆発的にブレイクして、
それを中心に回ると、
とても面白いことになる。
その繰り返しで波を作れる。

が、映画台本としてそれを考えると、
とてもいびつなものになる。

オチを前フリしていないし、
テーマを示す構造になっていないし、
最初のワクワク感はすぐしぼむし、
しかもそのワクワク感と後半はちぐはぐだし、
途中面白くないパートがちょいちょいあるし、
勢いの起伏がバラバラだし、
突然出てくる要素ばかりで、
それは一幕にないものだらけだし、
後半長すぎるし、
後半のノリが最初からあればいいのに、
と思ってしまうしだ。

音楽にたとえれば、
見切り発車して完結した執筆は、
失敗した演奏のようになっているのだ。


あなたはこれを放置するべきではない。
より完璧な演奏にやり直すべきである。

光る所はある。
最初のワクワク感や後半のノリだ。
「それらが渾然一体となった、
一つの有機体」としての完成度が低いのが問題だ。

だから、
リライトは困難を極める。

一回パッと推敲してもダメで、
何回も何回も書き直さないといけない。

今日に「全てを貫くアイデアを思いついたぞ!」
となっても、
明日には「ダメだこれじゃスッキリしないじゃないか」
と落ち込むことがとても多い。

一体どうすればよいのか分からず、
どこかの脚本論を真に受けながら、
少しずついじり続けることになる。


僕は、これが悪いという結論に誘導したいのではない。
これは明らかに失敗であるが、
「これを一回は経験しなさい」
ということを言おうとしている。

「勢いで書き始めた奴は、
途中で辛くなり、
なんとか爆発的な何かでリカバーし、
勢いが生まれて最後までかけたが、
全体がいびつで、
整えるのに執筆以上に苦労する」

という経験を、二度三度しておきなはれ、
ということが言いたい。

何故なら、
「これは苦労するパターンやな」
と、体が理解するからである。


そうすると、
「もっと正しい方法はないのだろうか?」
と疑問に思うはずだ。

で、ここにたどり着いてくれればいいな、
と考えている。


苦労して完結させた経験がないと、
苦労して歪みをただした経験がないと、
エレガントな脚本論は受け付けないだろう。
身にしみないからね。

つまり、
失敗からしか人は学べない。

やる前から正解が分かっている世代でも、
それは学んだことにならない。

自分で失敗した数だけしか、
うまくならないよ。

応用が効かないからね。



精々見切り発車しまくりたまえ。

慎重さが欠けている、とおじさんが言ったって、
書きたい衝動がそれを聞かないだろう。
大いに構わん。
派手に転んで、
血まみれになって、
それでもゴールしてから、
「もっといいやり方はないですか」
と来るがいい。


で、完結しやすいのは、
大長編ではなく、
数ページや30分くらいまでの作品だ。

いきなり2時間に挑戦したって、
そんなのを書き切れるのは大学生くらいまでの体力の時だろう。
それを何回もは出来ない。

だから、技術としてマスターしていくとよい。

技術だけで天才にはなれないが、
天才が技術を覚えればさらに強くなる。

そこそこの才能でも、
技術があればそこそこのものは書けるし、
何年かに一回くるすごい思いつきを、
形に出来る準備になるだろう。


そうなる前に、
そういう人たちは何度も転んで来た。
それも、経験しておきなさい。

さあ、見切り発車せよ。
夏はそういう時期だ。
傷だらけになれ。

(今年の夏は流石に災害レベルなので、
どうにもやる気がでないですが…)
posted by おおおかとしひこ at 10:36| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。