冒頭は何から始まるのがベストか。
いつも難しい。
「最初の一言が決まれば最後まで書ける」
という作家もいる。
それは、最初の一言が、出来ていないラストまで連れてくるわけではない。
全部決まったときに、
「どこの入り口から入るのか」の、
ベストが見えたときだと僕は考える。
最後まで完結させた経験のない人ほど、
頭から書いていこうとする。
で、途中で挫折する。
僕はこれを防止するために、
「クライマックスを先に書く」
というエクササイズを提唱している。
先にクライマックスからラストまで書いてしまい、
改めて冒頭から書き、
クライマックス以降を二度書きしてもいいよと。
おそらくその方が、
どこへ向かっていいかわからなくなり、
とっ散らかって挫折するよりかは、
最後まで書ける確率が高い、
と踏んでの提唱だ。
で、本題。
冒頭をいきなり思いついて書き始めるのは、
愚策だ。
メモとして取っておくべきで、
本文を書いてはいけない。
その閃きは大切なので、メモは取りなさい。
しかしそれはまだ本文ではない。
その閃きから、
最後までつながる一本の線、
つまりプロットが先だ。
そのスタートがどういうエンドを迎えるのか、
途中どういう展開になるのか、
どんでん返しはありなのか、
その為の伏線はどこで張られるのか。
そういう構造が出来てから、
キャラクターや世界設定をつくり、
きちんとテーマに落ちる構造であるか確認し、
無駄や無茶や矛盾があれば修正し、
ああ、すっと一本通ったな、
と思えたとき、
ようやく冒頭に取り掛かることになる。
つまり、
このワールドの、ベストの入り口は何か?ってね。
世界観の説明から入るのがベストか?
興味を引く事件から始めるのがベストか?
主人公の状況から始めるのがベストか?
主人公の気持ちから入るのがベストか?
デカイ伏線から始めるのがベストか?
ゆっくりしたテンポからか?
いきなりのテンポからか?
それは、あなたの好みを選ぶ行為ではない。
勿論好みを優先してもいいが、
本当に優先するのは、
「そのストーリーを語るのに、
一番入りやすくてすっと流れに乗れる」
ことであると思う。
好みはあなたの押し付けになるだけの可能性がある。
そうではない。
世界にいつのまにか入っていて、
気づいたら引き返せない所までいくのに、
冒頭は用意されるべきだ。
引き返せない所というのは、
「この先が気になる」という地点である。
つまり、
「この先を止めずに見たい」という気持ちを起こさせる、
沼が冒頭である。
この先とは、つまり最終的には主人公が解決して、
テーマが定まるゴールに向けての、
一本道のことだ。
その一点から次々に面白い展開になり、
次はどうなるんだろうという連鎖が生まれ、
最終的にはラストまで一気に進む、
沼の一歩目が冒頭だ。
つまり冒頭とは巧妙な罠のことである。
なんとなく来た人が、
様子を見ようと数分見ているうちに、
気づいたら沼に足が入っていて、
抜ける気もせず、この先の沼に行ってもいいかな、
と思えるものが、
冒頭の罠である。
その為には何から入れば良いか?
客寄せパンダを置けばいいか?
派手な爆発(ジェリーブラッカイマー)や、
美女のエロ(氷の微笑とか)や、
残虐な殺人事件(多くのミステリー)や、
カワイイキャラなどのようなキャラクターからか?
それとも主人公にいきなり感情移入させる方法か?
(巧みなものに「デンジャラスビューティ」「愛しのローズマリー」
のように、子供時代のトラウマから始める方法がある)
世界観で生息してるテンポ感か?
僕は、その全てであると考える。
客寄せパンダと、主人公と、世界と、
その全てを上手に組み合わせて、
ハイもうこの先見るの確定、
絶対これ面白くなるやつ、
と思わせたら勝ちで、
その勝ちの冒頭にたどり着くまでは、
ラストまで決まっていなければならないのだ。
それでいて、
伏線も張られているべきで、
全く冒頭というのは難しい。
ラストまで出来てないけど、
面白げなオープニングを思いついたから書き始めよう、
あとは書きながら考えよう、
なんてアマチュアのやり方では全く歯が立たない方法論が、
あるのだ。
なぜプロの作品は冒頭からラストまで、
一気に駆け抜けるずっと面白いストーリーになっているのか?
冒頭は最後につくり、
ラストまで一気に駆け抜けるものはすでに出来ていて、
それに最も適した、
罠としての沼を、冒頭として作るからである。
最初の一歩を踏みいれたら、
もう首までつかるようになっている。
それがいい沼で、
それは偶然で出来ているのではなく、
すべて計算された流れである。
2018年08月06日
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