2018年08月06日

冒頭は入り口

冒頭は何から始まるのがベストか。
いつも難しい。

「最初の一言が決まれば最後まで書ける」
という作家もいる。
それは、最初の一言が、出来ていないラストまで連れてくるわけではない。
全部決まったときに、
「どこの入り口から入るのか」の、
ベストが見えたときだと僕は考える。


最後まで完結させた経験のない人ほど、
頭から書いていこうとする。
で、途中で挫折する。

僕はこれを防止するために、
「クライマックスを先に書く」
というエクササイズを提唱している。

先にクライマックスからラストまで書いてしまい、
改めて冒頭から書き、
クライマックス以降を二度書きしてもいいよと。

おそらくその方が、
どこへ向かっていいかわからなくなり、
とっ散らかって挫折するよりかは、
最後まで書ける確率が高い、
と踏んでの提唱だ。


で、本題。

冒頭をいきなり思いついて書き始めるのは、
愚策だ。

メモとして取っておくべきで、
本文を書いてはいけない。

その閃きは大切なので、メモは取りなさい。
しかしそれはまだ本文ではない。

その閃きから、
最後までつながる一本の線、
つまりプロットが先だ。
そのスタートがどういうエンドを迎えるのか、
途中どういう展開になるのか、
どんでん返しはありなのか、
その為の伏線はどこで張られるのか。

そういう構造が出来てから、
キャラクターや世界設定をつくり、
きちんとテーマに落ちる構造であるか確認し、
無駄や無茶や矛盾があれば修正し、
ああ、すっと一本通ったな、
と思えたとき、
ようやく冒頭に取り掛かることになる。

つまり、
このワールドの、ベストの入り口は何か?ってね。

世界観の説明から入るのがベストか?
興味を引く事件から始めるのがベストか?
主人公の状況から始めるのがベストか?
主人公の気持ちから入るのがベストか?
デカイ伏線から始めるのがベストか?

ゆっくりしたテンポからか?
いきなりのテンポからか?

それは、あなたの好みを選ぶ行為ではない。
勿論好みを優先してもいいが、
本当に優先するのは、
「そのストーリーを語るのに、
一番入りやすくてすっと流れに乗れる」
ことであると思う。

好みはあなたの押し付けになるだけの可能性がある。
そうではない。

世界にいつのまにか入っていて、
気づいたら引き返せない所までいくのに、
冒頭は用意されるべきだ。


引き返せない所というのは、
「この先が気になる」という地点である。


つまり、
「この先を止めずに見たい」という気持ちを起こさせる、
沼が冒頭である。

この先とは、つまり最終的には主人公が解決して、
テーマが定まるゴールに向けての、
一本道のことだ。

その一点から次々に面白い展開になり、
次はどうなるんだろうという連鎖が生まれ、
最終的にはラストまで一気に進む、
沼の一歩目が冒頭だ。

つまり冒頭とは巧妙な罠のことである。

なんとなく来た人が、
様子を見ようと数分見ているうちに、
気づいたら沼に足が入っていて、
抜ける気もせず、この先の沼に行ってもいいかな、
と思えるものが、
冒頭の罠である。


その為には何から入れば良いか?

客寄せパンダを置けばいいか?
派手な爆発(ジェリーブラッカイマー)や、
美女のエロ(氷の微笑とか)や、
残虐な殺人事件(多くのミステリー)や、
カワイイキャラなどのようなキャラクターからか?

それとも主人公にいきなり感情移入させる方法か?
(巧みなものに「デンジャラスビューティ」「愛しのローズマリー」
のように、子供時代のトラウマから始める方法がある)

世界観で生息してるテンポ感か?


僕は、その全てであると考える。
客寄せパンダと、主人公と、世界と、
その全てを上手に組み合わせて、
ハイもうこの先見るの確定、
絶対これ面白くなるやつ、
と思わせたら勝ちで、
その勝ちの冒頭にたどり着くまでは、
ラストまで決まっていなければならないのだ。

それでいて、
伏線も張られているべきで、
全く冒頭というのは難しい。


ラストまで出来てないけど、
面白げなオープニングを思いついたから書き始めよう、
あとは書きながら考えよう、
なんてアマチュアのやり方では全く歯が立たない方法論が、
あるのだ。

なぜプロの作品は冒頭からラストまで、
一気に駆け抜けるずっと面白いストーリーになっているのか?
冒頭は最後につくり、
ラストまで一気に駆け抜けるものはすでに出来ていて、
それに最も適した、
罠としての沼を、冒頭として作るからである。

最初の一歩を踏みいれたら、
もう首までつかるようになっている。

それがいい沼で、
それは偶然で出来ているのではなく、
すべて計算された流れである。
posted by おおおかとしひこ at 10:40| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。