「なんの取り柄もない、ごく普通の人」
というのが感情移入しやすい、という誤解があると思う。
角が取れた丸い人は魅力的か?
現実ではなく、物語の中だ。
特徴があってキャラが立ってる方がいいに決まってるじゃないか。
凸凹があったほうが面白くなる。
凸凹があればあるほど、
他の人とのふれあいで角が立つ。
現実では厄介なこのことも、
物語では美味しい。
むしろ、たった角をどう解消するのかが、
物語といってもいいからだ。
物語とは問題の解消であり、
人との衝突をクリアすることだ。
それには問題が起こらなければならない。
凸凹があり、角が立つほうが、
物語を立てやすいのだ。
むしろ、わざと凸凹をつくり、
角を立てて、ぶつけ合い、
書くのが物語である。
(勿論角をぶつけ合いどちらかが死ぬまでやってもいいし、
合気道のように全てを丸く収めてもよい。
鮮やかで見事で、面白ければどちらでもよい)
凸凹とは、長所と短所とも言える。
能力のバラツキとも言える。
人より優れたところもあれば、
人より劣るところもあるということだ。
性格がいいけど酒を飲むと変わるとか、
数学が出来るがコミュニケーションに難があるとか、
みんなを纏めるのがうまいが八方美人とか、
筋肉はあるがバカとか、
類型的なものもあれば、
新しいパターンもある。
そして「AだがB」「CなのにD」「EとFが表裏一体」
などのように、凸凹の軸を複数持つキャラもいるだろう。
そして、たいてい欠点は長所とペアになる。
同じものを、別の角度から見たときに、
長所にもなれば短所にもなる。
使いようで、場面や文脈で変わって来るということ。
逆に、同じ部分が欠点にも長所にもなるように、
さまざまな文脈を用意して、
揺さ振れということだ。
ということは、全てのキャラに、見せ場を作ることが出来る。
凸凹を設定しておき、
凹になる文脈で苦戦させておいて、
一転文脈を切り替えて凸になるように風向きを変えれば、
「待ってました!」となるはずである。
これがうまく連鎖するように、
各キャラの凸凹とストーリーを編んでいくのだ。
(映画「いけちゃんとぼく」では、
原作の凸凹をより深く彫り込み、
それを見せ場に転化するよう試みた。
成功した部分と失敗した部分がある)
で、ようやく本題。
これらは脇役や敵役ならば簡単に理解できる。
しかしこと主人公において、
こうしないのはなんでやろ、
という話。
どうしても、
「主人公と作者を分離できないから」
ということが見えてくる。
自分はなんの取り柄もない、
大した人間ではないから、
大それた凸凹もないですよ、
と思うことが、
主人公をそんなつまらない人物にしてしまうのである。
(しかしそんな俺が異世界転生で無双?
というのが、一種のスタイルになってしまった。
「なんの取り柄もない人間が、
全能感を満たす御都合主義装置」
として異世界転生という発明があったわけだ。
廃れないのは、
取り柄がない人が多くて、
全能感だけは満たしたくて、
その為の言い訳が欲しい人が多いからで、
それは民度が低いというものである)
だから、
面白い物語を思いついても、
主人公周りが詰まらないことになることが多い。
主人公はあなたではない。
誰か他の人で、キャラの一種だ。
凸凹していて、
短所が相手の長所に負けたり、
長所で相手を凌駕したりしたほうが、
面白いに決まってるではないか。
主人公が他のキャラとぶつかるのと、
他のキャラ同士がぶつかるのは、
同じようでなければならない。
では、主人公と他を分けるのは何か?
自分自身の反映でなくてよいとしたら、
何が主人公なのか?
主人公キャラだから主人公なのではない。
イケメンだから主人公なのではない。
問題を解決する人が、
主人公なのである。
ある問題がある。
解決し終えた時点に行ってみる。
解決した人を特定する。
その人がその問題に巻き込まれる時点まで時計を戻し、
そこからその人を、解決まで追うのが、
物語なのだ。
巻き込まれる時点よりちょっと前から始めたほうが良ければ、
そこから始めればいいだけのこと。
(主人公自身を説明するために、
そう行ったやり方がポピュラー)
主人公は他人なのだから、
他のキャラ同様、
凸凹していてぶつかりまくると面白いし、
活躍場面になると「待ってました!」
となるだろう。
主人公の中に入ってしまうから分からなくなる。
主人公も他キャラも並べて、
人形のように動かすとよい。
特徴がないキャラは面白くない、
ということが俯瞰できるだろう。
社会的に認められた人
(正義感が強い、優しい、ちゃんとしてる)
を主人公にするべきとは限らない。
むしろ欠点こそがその人の魅力になるように書ければ、
ただの詰まらない主人公キャラから、
脱することが出来るだろう。
人は凸凹している。
物語は、それをわざと強調する。
2018年08月07日
この記事へのコメント
コメントを書く