2018年08月12日

机上の空論

物語は現実に立脚している。
リアリティとか、
「これするならこっちを何故しないのだ?」というツッコミなどは、
現実のこの世界と比べているわけだ。

しかるに、物語を書く人は、
あまり現実の経験がないかも知れない。
つまり、机上の空論になっている、ということかもしれない。


僕がよく出すのは、
「童貞限定のエアセックス選手権」で、
「あり得ない位置におっぱいがある」
ことが頻発したという例。

つまり、妄想は結構なことだが、
それは現実を知らないがゆえの、
甘ちゃんな妄想なのかもしれない、
ということを常に想定しておくべきだということ。

それには、妄想しつつ、現実も取材することだ。


アイドルが描きたいなら、
アイドルを妄想するだけでなく、
現実の人間を描かなくてはならない。

それで幻滅することもあるだろう。
現実とはそのようなもので、
だからアイドルが必要なのだ、
という逆説もあるということを理解しなくてはならない。

ファンタジーがなぜなくならないか、
というと、現実逃避が人には必要だからだ。

しかしその現実逃避は、
現実に立ち向かえるだけの力を持っていなくてはならない。
現実を前にして簡単に折れてしまう、
「あり得ない位置の妄想おっぱい」であってはならない。
「正しい位置のおっぱい」でありながら、
ファンタジーにならなければならないのだ。

つまり、物語というファンタジーは、
妄想と現実を、
両方満足させるものでなくてはならないのだ。

「ファンタジーだからいいんだよ」
と言い訳して逃げる人がいる。
その人は、あり得ない位置のおっぱいを笑ってはいけない。


モノがSFとか中世ファンタジーならば、
まあこんなもんか、というスタンダードがあるから、
それに従えばいいだろう。
(たとえばスターウォーズとドラクエとかか)

しかし現実を舞台にしたものでは、
現実のリアリティはもっと強くなる。

おっぱいの位置があっていればよいだけでなく、
固さや柔らかさや感度などの、
もっと精度の高い感覚が必要になってくるだろう。

あなたの妄想が机上の空論でないことは、
どうすればわかるのだろうか。

他の人にアイデアを話すことで、
多少判明することがある。

客観性、という言葉でくくれるが、
もうすこしひらいて「共有できるリアリティ」
とでも呼んだほうがいいかもしれない。

話して違和感がない程度にはリアルで、
机上の空論ではない、を確認することが出来るので、
アイデアを思い付いたときは、
他人に話してみるのが一番よかったりする。

ツッコミは、大体似たようなところに入るものだ。
それは大体同じ世界に生きているからである。


同じ文化を共有するからには、
同じ世界のリアリティを持っているだろう。

逆に我々の社会に黒人はいないから、
いる世界のリアリティとは、また違っている。
銃がある社会のリアリティは僕らはしらないし。

また、ネットのリアリティをご存じない世代の人もいる。
逆にネットなしのリアリティを知らない世代もいる。


あなたの設定した問題と解決法、その手順に関して、
机上の空論になっていないだろうか。

童貞がおっぱいの位置を間違ったまま、
何故かイカせることに成功している、
駄目な空想物語になっていないだろうか。


あなたの妄想を、
1万人が共有する。
10万人が共有する。
100万人が、1000万人が共有する。
それが物語だ。

1000万通りのリアリティにさらされても、
なお机上の空論になっていないものが、
よくできたストーリーというものである。
つまりそれは強靭な妄想だ。

(宮崎駿の強靭な妄想力は、
地に足のついたアニメーション力によって支えられている。
走る時の重心やタメや視線や風などの、
細かいディテールは全部本物だ)


そして、よくできたストーリーというのは、
現実でありそうなのに、
なかなかないファンタジックな面も同時に持つ。
そうでないと妄想として楽しくないからである。

そのために物語はひとつだけ嘘をつく。

その仮定を認める限り、
すべて机上の空論になっていない、
地に足のついた強靭な妄想。

それが物語という詐欺かもしれない。


(「私はアラブの王族である」という嘘を認める限り、
いろいろな辻褄が全てあう、結婚詐欺と同様の構造なのだ。

それは、「この世界はビッグバンより始まった」
という仮定を認めてすべてを説明しようとする、
科学と同じ構造でもある。
ビッグバン仮説はまだ仮説ではあるが、
否定する材料が見つかっていない段階ではある。
「私はアラブの王族である」という詐欺は、容易に否定材料が出そうだ。

物語の嘘は、「それを嘘とする」という共犯関係によって成立する契約で、
そのあとの全ては現実でなければならない)
posted by おおおかとしひこ at 11:24| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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