何も知らずQwertyローマ字を使っていたころは、
非ブラインドタッチ(サイトメソッド)だった。
そのころはバリバリ打っていたような気がしていた。
それをもっと速くしようと思って、
ムチャな指の使い方に不合理を感じて、ここまで来た。
で、ちょっと思ったのだが、
キーボードを見て打って行くぶんには、
Qwertyローマ字ってわりと良くできているんじゃないかってこと。
サイトメソッドだと、
Aを小指で打つ人はいない。
(しかし簡単に見つけることが出来る)
僕は左の人差し指や中指で打つことが多かった。
その他の左手担当も大体人差し指や中指で打っていた。
TもRも右手人差し指だったなあ。
(英語だとerを「右」人差し指中指のアルペジオで打つ)
盤面上を指が躍るような感覚が、打っているとあった。
それが「心地よい」とすら思っていたものだ。
Qwertyローマ字は、「リズミカルに打って行く」なんて言われることがよくある。
それはサイトメソッドで打っているときの感覚なのではないだろうかと思う。
もちろんブラインドタッチの熟達者はリズミカルに打って行くが、
それとは違う、
「指がキーボード上を動き回る感じ」
が気持よいリズムを刻んでいたのではないだろうか。
「ッターン!」が象徴するように、
遠いはずのエンターやBSすら、
右手を豪快に移動することが気持よい感覚を生んでいたはずだ。
僕は中指辺りで打っていた。
それがブラインドタッチになると、
急に窮屈になる。
Aの小指はしんどいし、ZWSとAEの連続は指壊しだ。
エンターやBSを小指だって? 正気かよ。
人差し指で打ったっていいじゃないか!
-「」が小指とかエスパーかよ。
つまり、ブラインドタッチというのは、
ホームポジションから移動できない強い制限があるゆえに、
サイトメソッドではそこそこ気持ちいいQwertyを、
急に糞配列に変えるのだ。
またサイトメソッドでは、
「指が決まっていない」という現象がある。
ある文章を書くのに、
「最短の指使いを構築する」ということも出来るわけで、
つまりは「その人なりの最適化を許容する」わけだ。
(僕の場合、raのときのrは右人差し指、roのときは左人差し指だった)
ピアノもそうだ。楽譜は決まっているが、
どの音をどの指で弾くかは定められていない。
「自分の指を自由に使って弾いてよい」という自由がある。
しかるにブラインドタッチは、実に不自由だ。
ホームポジションに矯正され、
決まった指で決まった場所を叩かなくてはならない。
左小指や薬指は、僕のように弱い人は、
何かの拷問だと思うだろう。
「どうしてそんなことをしなくてはならないの?」と。
日本国民のブラインドタッチ率が30%ということは、
残り7割の人間は、
Qwerty配列は打っていて仕事をしている気になる、
非常に優秀な配列だと思っている節すらあるのではないか。
運指の最適化を、自分流の工夫だと自負すらしているだろう。
こういう人たちに向けて、
「ローマ字は不合理である」
なんてことを言ってもしょうがない。
そう? って言われるだけだ。
だから打鍵数しか説得材料がないのではないか。
「Qwertyローマ字のブラインドタッチは糞。
ブラインドタッチ用の、もっといい配列が沢山ある」
というのが、
正しい言い方なのかもしれない。
「速くなるのか?」という質問に対して、
速さで答えるしかない、
というのは新下駄のkouyさんの考え方で、
たぶん一番結果を出している人だと思う。
一方親指シフターは「打鍵数が減って楽になるよ」
という言い方にシフトしている。
僕は薙刀式でそこまで速くないから、
昔のローマ字との比較で示す。
対自分で倍以上速くなっている。
530から1200程度(変換後文字数10分速)にだ。
親指シフトは「楽」を数字で示すことが出来ないから、
たとえば一日の生産量とかで示したほうがいいんじゃないかと思っている。
月当たりの量で示せば、
ローマ字時代と比較することが出来るのではないだろうか。
(データを取っていないと比較できないし、
駄文の量が増えただけ、と切り捨てることも出来るが、
それは使い手次第ということで)
ローマ字タイパーの動画を見ると、
もはや狂気のレベルである。
そんなにずっと打てる筈ないやろ、
って感じになってしまっている。
それなら普通の文章作成を、
Qwertyのサイトメソッドと、
Qwertyブラインドタッチと、
何かの配列のブラインドタッチで、
比較するといいんじゃないだろうかと思った。
「Qwertyローマ字は、
サイトメソッドだとそこそこ打てるし、マスターも速い。
しかし速度において頭打ちも速い。
ブラインドタッチにしようと思うと、
とたんに難易度が跳ね上がり、
それをやるくらいなら、
行段系ローマ字、親指シフト、飛鳥、新下駄、月、薙刀式などのほうが、
指使いが合理的になる」
という論理ならば、
7割の人を説得しやすいように思った。
配列が浸透することがゴールだろうか。
僕はそんなものはどうでもよくて、
文字を書くことが合理化されればそれでよいと思う。
独自に配列を作る人がもっと増えてもいいし、
文章を書く人がもっと気を付けてもいいと思う。
文筆業でも、
ブラインドタッチの習得率は低いのではないか、
という仮説を提唱しておく。
だってQwertyじゃ無理だろ。
親指シフトがその唯一のオルタネーティブになっていることは、
問題だと思う。
別のデファクトスタンダードを生んでいるだけではないか。
最近カフェで、
隣のタイピングが速いとガン見してしまうようになった。
指から見ると100%ローマ字で、
だいたいOutlookのようなメールソフトが立ち上がっている。
Wordもいるけど、横書きが99%。
で、ばりばりの指ペースは僕より速いんだけど、
すぐに終わってネットとか見始めるんだよね。
僕のほうがずっと書いている。
もちろん書く内容も違うから一概に比較はできないが、
Qwertyローマ字で書ける内容に、
限界がすぐ来るんじゃないかと思う。
その集中力で二時間キープできない、
という欠陥が、
サイトメソッドQwertyローマ字の欠陥なんじゃないか。
ブラインドタッチが出来る人にはなぜか女性が多い。
平安時代の昔から言葉は女のものでもあるから、
なんとなく納得してしまうけど。
でも持続でいうと、やはり20分くらいが限界かな。
統計を取ったわけではないので、
感覚的な体験で申し訳ないが。
たとえば僕はこの記事を一気に30分くらいかけて書く。
同じペースで、
小説や脚本の原稿を、一時間二時間は書く。
そういう風に使える道具が欲しい。
今のところ薙刀式はそれに適っていて、
Qwertyローマ字じゃしんどい。
(サイトメソッドだとスピード的に、
ブラインドタッチだと指の持続力的に)
人間の集中力を、
Qwertyのサイトメソッドは、過度に使いすぎると思う。
だから疲れるんだろうね。
こういうことは、英字タイピングではほとんど出ないのだろう。
日本がIT後進国になっているのは、
この文字入力メソッドそのものが原因なんじゃないか。
7割の日本人がふつうに出来ることは、
せいぜいツイッターの140字のフリックだと思うんだ。
つまり日本人の識字率
(生産量や議論のリテラシー、思考の持続力をふくめ)が、
落ちていると思う。
2018年08月13日
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