2018年08月14日

恐怖の都市伝説は、無知への恐怖心に対応する

写真が現れた頃、「魂を吸われる」という都市伝説があった。
「真ん中は早死にする」なんてのは、
僕が学生時代まではあった心霊写真の常識。

電話の「もしもし」もその名残。
妖怪は二度同じことを言えないから、
電話の向こうが妖怪でないことを確かめるために、
「もしもし」「もしもし」と互いに確認しあう。
(柳田國男が研究していた)

パケット通信が出た頃文字化けがいろいろあって、
これは「通信網に潜む幽霊の仕業」
という都市伝説があってすごい面白かった。

つぎはゾルタクスゼイアン。


だいぶ前から知られたネタだけど、
ようやく普通の人にまで浸透してきたネタだ。

しかも異星人とか人工知能組織とか、
尾ひれがつき始めていて面白い。

MJ12やイルミナティやニューワールドオーダーとも、
関係しているかもしれないし、
311や911に関係しているかもしれない。
あとアポロ計画もか。



これらは、
「未知のものへの恐怖」から生まれる。

人工知能や音声認識技術が、
「よく分からない未知のもの」
だから、
人はそれをゴースト化する。

ゴーストとはつまり、恐怖心の擬人化だ。


死は未知だ。
幽霊や死後の世界や神は、
その恐怖を納得するための擬人化された物語だ。

伝染病は未知の恐怖だった。
だから感染者を魔女扱いした。
これも未知の恐怖を擬人化したものだ。

日本にいる「見たら死ぬ」系の妖怪は、
たいていは伝染病の擬人化だ。

宇宙はどうしてはじまったのか?は未知で恐怖だ。
だから私たちは、
それを擬人化できる物語を欲する。
「この宇宙は何者かによって作られたシミュレーション」
というのはよくある都市伝説(物語)だが、
それも擬人化された物語な訳だ。
(そもそもその外の世界はどうやって作られたか?
に答えられていないから、欠陥のあるストーリーだ)



未知のものへの恐怖を説明する擬人化物語は、
物語っぽい形をしているが、
「その全貌が分からない」
ことも特徴で、
「全く分からないのではなく、
擬人化物語によってちょっとわかった気になるが、
やっぱり奥底まではわからない」
という特徴をもっている。

だから
「不気味だから、近づかないようにしよう」
と考えるようになる。

ゾルタクスゼイアンも地球人を監視しているから、
「むやみにSiriに問わないこと」
なんて都市伝説が追加されている。

これは、
「川のそばは河童がいるから近づかないように」
という物語と同一構造である。

つまり、
人類は同じ物語のガワ違いをやってるだけである。


次のテクノロジーでも同じことが起こるだろう。
ドローン配達システムにも幽霊が出るし、
軌道エレベーターにも妖怪が出るし、
コールドスリープにも神や悪魔がやってくるだろう。

狐憑きと言う名の、
統合失調症を幽霊や精霊の仕業と怖がり、
隔離するのは、
人類の限界的特徴であるかもしれない。

それを「触らぬ神に祟りなし」なんて諺にまとめていたりもする。
社内で厄介者扱いされる曲者は、
たいていこうやって忌避されている。
まったく馬鹿の極みだ。
小学校のクラスのレベルではないか。



物語は、理解の形式である。

ぼくはそう思っている。

「わかったぞ!○○は○○なんだ!」
を提出することが、
物語のゴールだ。

ゾルタクスゼイアンも、
イルミナティも、
狐憑きも、
完全に解明された時に「わかった!」
となるはずだ。
しかし解明されないから、
「近づかないでおこう」と封印する。
不気味な、完結しない、解明されない物語によって。


一方、私たちは、
「わかった!」に帰着する物語を書かなければならない。

だから難しいのだ。

人が「わかった!」と膝を打つ構造をつくることは、
とても難しいからだ。

だから、
「いまいちわかった、と言えないんだよねえ」
ばかりが作られて行く。

それはよろしくない。
ゾルタクスゼイアンを増やしているに過ぎない。



さて。

都市伝説を生んでいるのは、
そのような「わかった!」というスッキリしたストーリーを、
作ることができない、
中途半端なライターの仕業かもしれない。

ゾルタクスゼイアンの都市伝説を見ると、
「出来ていない物語」の特徴が散見される。

もう少し練られて、
さらに都市伝説化していくだろう。



そうそう、「口裂け女」の都市伝説は、
はじめて「塾に行かなきゃいけない子供の世代」
が誕生した時のものだそうだ。

小学校が終わってどっかで遊んで夕方には家に帰れた生活が、
学校から塾に行かねばならず、
日が沈んでから帰らなければならない、
不満や不安の擬人化が、
口裂け女だったのだ。


都市伝説は不安の時代に流行る。

私たちは、「わかった!」を提供するべきだ。
posted by おおおかとしひこ at 14:44| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。