なぜ学園ものばかりみんな作りたがるのか。
先日のFランク企画も学園ものだった。
(ここにあげて晒し首にしたいが自重する)
共感を感情移入と勘違いしてやしないか。
ここの脚本論では、
共感と感情移入を区別していて、
それらが混同されていることに警鐘を鳴らしている。
どちらもゴールは同じだ。
主人公を我が事のように感じることだ。
プロセスが違う。
共感は、自分にもあったことで親しみを感じること。
感情移入は、自分にはないことなのに、
その立場になったらそういう気持ちもわかるわあと、
「自分にないものに自分と似た点を認めて親しみを感じること」だ。
共感はそのものずばり、自分にあったことだ。
あるあるネタがその代表だ。
誰もが体験したことを描いて、
最終ゴールを目指す。
感情移入は、自分にないことで可能になる。
私たちが外人の映画に感情移入できるのは、
それが人間に共通の何かを描いているからだ。
違う食べ物を食べ、違う言葉をしゃべり、
違うシチュエーションで日本ではあり得ないことに困っても、
人間共通の何かを持ってくることで、
「わかるよその気持ち。
僕は経験したことがないが、
そういう立場でそういうことが起これば、
誰もがそう思うよね」
と思って、
一体感を感じるのだ。
つまり、感情移入は共感よりも、
一段レベルが高くなければうまく書けない。
さて。
なぜ学園ものをついつい考えてしまうのか?
誰もが共通のことが多いジャンルだからだ。
各種イベントに事欠かないから、
それらを描くだけで、
あるあるを振りまける。
それで親しみを感じさせて、
主人公と観客の距離を詰めようという作戦である。
ところが、
共感していくルートで行くことになるから、
特別な、あり得ないシチュエーションを描くことが出来ない。
たとえば構内に殺人犯が紛れ込むとすると、
そんな経験をした人は少ないから、
共感ではなくなってしまう。
共感で書けるのは、
遅刻したとか、テストがあるとか、クラス替えとか、
転校生とか、グループの対立とか、
夏休みとか、恋とか、付き合う付き合わないとか、
学園祭とか体育会とか、先輩後輩とか、先生とか、親とか、
クリスマスとか大晦日とか初詣とかバレンタインだ。
「殺人犯が紛れ込む」ではない。
コロンバイン高校出身者とか池田小学校卒業者とかしか、
共感できない。
で。
だから学園ものは、
パターンが決まってしまっている。
でも共感要素があるから、
題材として扱いやすい。
要するに、レベルの低い人が扱いやすいジャンルなのだ。
感情移入をさせることが出来ず、
共感しか技がない人は、
共感のネタが多い手法を選ぶ。
それが学園ものというにすぎない。
つまり学園ものは、共感の最大公約数だからだ。
感情移入の技のあるレベルならば、
実は共感と感情移入を使い分けて組み合わせることが可能だ。
学園あるあるを見せておいて、
共感をさせておいて親しみを持たせ、
突然構内に殺人犯を出現させる。
その時の主人公の対応が、
「そういうシチュエーションになったら、
誰もがそうする」ということになったとき、
観客は感情移入を始める。
こうして、感情移入と共感を使い分けて、
ストーリーの奥底へ引きずりこむのである。
慣れてくると、
あるあるを学園もの以外からも持ってこれる。
それはどれだけ人間たちを観察しているかで決まるだろうね。
さらに、共感なしで感情移入だけで書いてみようと、
レベルアップしようとすると、
孤独な殺し屋の話とか、
自分に一切経験がないことを書こうとするはずだ。
で、感情移入を自在に使えるようになったら、
共感も小技として使って、
硬軟併せ持つようになっていくだろう。
学園ものを書く奴は、
つまりはレベルが低い。
共感を感情移入と勘違いして、
共感と感情移入を区別できず、
感情移入を使えず、
感情移入だけで進めることもできず、
感情移入と共感を使って揺さぶることもできない、
共感しか技のない奴だ。
で、ちゃんと探そうとせず最大公約数を持ってくる。
さらに、知ってるネタしか使わずにやっているから、
いつかネタが切れるのだ。
学園ものを書く奴は、
つまりはレベルが低い。
あるあるネタばかりで、
新規性がない平凡なものしかつくれない。
オリジナルで、特別な話など書けない。
今現在、山ほど学園ものが溢れているのに、それでもなお、次から次に作り続けている理由が、いまいち分かりませんでした。
しかも、相も変わらず、性懲りもなく、どこかで見たような内容ばかり。配役だけを変えて、導入から、中盤から、落ちまでストーリーは、どれも似たり寄ったり。
こんなの、いったい誰が見ているのか、不思議で仕方がありませんでした。予告編とかのアオリだけは凄いですが、恐らく、誰も見てない気がしていました。
以前から、なぜ、そういう現象が起きているのか、理解に苦しんでいたのですが、大岡さんに脚本の視点で説明して頂いたことで、ようやく理解できました。スッキリしました。ありがとうございました(笑)。
学園ものは人数を出しやすいので、
売り出し中の子+新人何人かをまとめて出演させやすく、
事務所的には美味しいんですよね。
作り手側もまとめ買いということでギャラを交渉しやすいし。
キャストの所属事務所を調べると、裏側がわかりやすいかも知れません。
つまりは穴埋めコンテンツに便利なのですなあ。
地方と協力すれば宿代も浮くし。
あと中学生あたりがターゲットなので、
毎年毎年作っても客が回転するコンテンツではあります。
ビジネス上のWin-Winがあっても、
僕ら観客は嬉しくないという落ちは、ある。