オープニングはかっこいいとか、掴みのひねりとか、
しずかにすーっと入るとか、なんでもいいよ。
主人公がそのうち出てきて、
これから追うべき、
私たちの興味=ストーリーの追う点=焦点となるまで、
何分かかる?
僕は5分から7分以内がいいと思っている。
つまり原稿用紙7枚以内。
一回発生した焦点は、
以後ラストシーンまで途切れてはならない。
同じ焦点を最後まで維持するのはとても困難だから、
一回置いといて別の焦点が発生したり、
質的量的に別の焦点に変化したりする。
(それをターニングポイントというのであった。
ターニングポイントは同じストーリーに何個あっても良い。
20個とか100個とか。
幕の切れ目の二大ターニングポイントとは違うものである。
もっとも、そのターニングポイントもターニングポイントなので、
ちょっとややこしい。
訳が間違っていて、
僕は大ターニングポイントと小ターニングポイントと、
訳語を分けた方がいいと考えている。
今は小ターニングポイントの話)
もし「今なんのためにやってるんだっけ?」が分からなくなるなら、
それは焦点が途切れている。
仮に作者と登場人物全員が把握していても、
観客がそれに乗っていないなら、
それは退屈なストーリーということだ。
焦点の維持とは、
つまりは観客の前のめりと、ストーリーの前のめりの一致のことである。
これは緩急を伴って翻弄しつつ、飽きず、
興味や興奮を様々に変えながら、
途切れることなくラストまで走り切らなくてはならない。
それは簡単なことではない。
だから出来ていないストーリーの方が多いとすら思う。
どんなプロの作品でも、
ちょっとたるいなあと思えるところが出てくるもので、
それは焦点を失っているときだ。
たとえ静かで動きのないシーンでも、
たとえ説明ばかりのシーンでも、
「これはストーリーに必要であり、
この先にこれを使ったことがあるぞ」
と観客も登場人物も了解していれば、
それは退屈ではなく緊張の維持だから、
焦点は保たれていることになる。
つまり、焦点の維持は形式によらない。
ただ目先が退屈だから焦点が失われているとは言えない。
有名な、何分も何も起こらない、
「北北西に進路を取れ」の砂漠のシーンがある。
今の感覚では長すぎるかもとはちょっと思うが、
冒頭からバンバン飛ばしてきたストーリーの、
丁度休み場所で、
これまでの焦点を観客が頭の中で整理するのに丁度いい部分になっている。
あるいは焦点を全て忘れさせて、
目の前の危機にだけ集中させる。
こういうことだってあるわけだ。
焦点の維持は語り口のテクニックそのもので、
その一部については色々と書いてきている。
原則は、
「引き付けろ。飽きたら変えてまた引き付けろ」
でしかなくて、
それを上手いこと組み上げることそのものが、
お話を語ることであると思う。
で。
最初の焦点は何だろう。
ちょっとした事件が起こり、
その異変へと巻き込まれていくことが多いのではないか。
なんだこれ?
おかしいぞ?
解決できないのか?
なかったことにならない?
いや、どうも無理っぽいな。
スムーズに回っていた日常に、
小さな棘が刺さったようになり、
綻びが始まり、
これから回復できない事件へと発展するなにかの一部。
大体そういうものが起こるはずだ。
起こるだけじゃ焦点が発生しているわけではなく、
それをどうにかしよう(ただ逃げることも含む)とする主人公に、
興味を持ち、その先がどうなるんだ?と、
観客の心が椅子からちょっと浮き始めている、
その最初のタイムは何分目?
という話である。
5分くらいでそうなることは少し難しい。
なんか派手なことをバーンとやらないといけなくなりら
その派手なことが終わったら急にテンションがしぼむので、
その先そのものに興味を持たせることが余計に難しくなる。
だから、7分ぐらいを目処にしたほうがいい。
ツカミ、主人公、小さな事件、その先、
という組み合わせを組めるのが、
5分じゃ足りないかもね、と僕は考える。
大体7分までにそれが出来ていれば、
ストーリーの最初としては合格だ。
謎を提出するのはよくある手だ。
「一体○○は何なのか?」
「○○とはどういうことか?」
「○○の意図はなんだ?」
「○○の原因はなんだ?」
「○○とは何者?」
「なんのために○○したのか?」
「○○の正体?」
などなどの形を取ることが多い。
大体7分ぐらいの、
シーン終わりを意識しよう。
そこで、ヒキになっているかどうか?
をチェックしよう。
つまり、センタークエスチョンならぬ、
ファーストクエスチョンが提出されているかどうか、
なんだよね。
謎の提出はそれに該当するし、
謎でなかったとしても、
「これを追うとどうなる?」でもいいし、
「出来るって言ったもののどうやって?」でもいいし、
「逃げきれるのかね」でもいいし、
「これじゃトラブルだらけは必至だぞ」でもいいし、
「期待できねー(笑)」でもいい。
観客が心を動かし、主人公も心を動かし、
その先のことに興味を持ち、
先を意識し始めたとき、
「この先のこと」という焦点が発生したことになる。
もちろんこれは、25分から30分あたりに来る、
第一ターニングポイントでセンタークエスチョンへと変化することになる。
まだそこまで大それたことではない、
芽のような小さな興味であろう。
しかしそれが芽生えたら、
それがストーリーの始まりだ。
恋しただけじゃストーリーじゃない。
彼女に何か行動をしてからがストーリーなんだ。
どうにもならない距離をキープするのではなく、
その距離が変わり始めたその瞬間が、
「この先どうなるのか」というストーリーの芽の場所だ。
それがデートの誘いなのか、
殴ることになるのか、
変なところを見られたになるのか、
同じ班になって強制的にしゃべることになるのか、
それはストーリー次第。
ストーリーの最初の数分はまだ始まっていない。
これからの何かの地固めをやっているだけだ。
なんとなく舞台がこんな感じで、
全体はこういうムードで、
が出来たら、
事件が起こって焦点が発生する。
そのファーストクエスチョンまでを、
広い意味でのオープニングだと考えてもいいくらいだね。
(狭い意味でのオープニングは、
クレジットシークエンスとか、
最初の派手で危険な事件とか、
アバンタイトル部分であるけれど)
僕の好きな広義のオープニングは、
「カリオストロの城」だね。
銀行強盗のファーストアクションを経て、
大量の札束でウハウハしていたらそれがゴート札だとわかる。
それはカリオストロ公国の札で、
過去に苦い思いがあった。
車に満載された偽札を窓から撒き散らす派手な絵にタイトル。
そこからムーディなクレジットシークエンス。
普通ここまでが狭義のオープニングだけど、
そこから花嫁姿のクラリスを助けたものの、
指輪が残された、
というシーンまでが広義のオープニングだと考えられる。
偽札、花嫁の脱走、残された指輪=彼女は王女だ、
舞台は整ったぜ、
というゾクゾク感、期待感が、
最初の焦点だと僕は考える。
ストーリーを書こうとする人で、
上の例でいうとクレジットシークエンスまでは書けるが、
その先の王女のシーンを書けない、
という人はとても多いと思う。
ムーディな狭義のオープニングに、酔ってるだけかも知れないね。
広義のオープニング、
つまり最初の焦点、ストーリーのベクトルの発生までを、
しっかり書けるようにならないと、
この先ラストまで続く、
沢山の焦点や焦点自身の変化をさばき、
一気に収束するクライマックスまでを、
書けるとはとても思えないねえ。
むしろ朝飯前にならないとね。
しかし大抵そこまでは、
何度も何度もリライトする部分だったりする。
あとあと使う何かを入れ込みたいからで、
そうすると無駄だらけになるので、
タイトでかつ伏線になっている、
豊かで面白い、世界のムードがわかる独特でかつ感情移入や共感もできる、
広義のオープニングを作るのは、
かなり難しい。
だからまず書いて保存しておき、
どこか途中で書き直したいと思ったら何度か書き直したっていい。
最終的にラストまで書いたら、
またまた直したくなるから、
納得いくまで何回も書き直すことになる。
だから広義のオープニングは、
一番筆が入っている、綿密な部分だと思うよ。
パッと書いてそのままでない部分なんだけれど、
書いたこともない人は、
素直にすっと書けると思ってるだろうね。
さて。
最初の焦点まで何分か?
あとはノンストップだぞ。
2018年09月08日
この記事へのコメント
コメントを書く