主人公を自分の反映にしてはいけない。
これは言葉を変えると、
主人公のキャラをいつどうやって立てるのか?
という問題になる。
主人公を自分だと思ってしまう危険性については、
何度忠告しても仕切れない。
最悪のケースは、
自分の無意識の願望=苦労せずにチヤホヤされて、
何故か勝利したい、
がむき出しになり、メアリースーとなってしまいがち。
そうでなくても、
うまい解決法が「自分では」見つけられないから、
他人に都合よく助けてもらったり、
偶然が解決する御都合主義になる。
主人公は、観客にとって他人だ。
他人が主張し、努力して、
自力で勝利を掴む様に、
弱い自分を重ねて興奮するのだ。
人は弱い。
だから強い人を見て、大きくなりたい。
それが物語の役目である。
弱い作者が、弱いままの自分を曝け出して、
都合よく勝ちたい、弱い自分を認めてくれというのは、
物語ではなくエッセイである。
勿論、主人公は強いままだとつまらないので、
弱点を持ったりするとよい。
人間なのだから弱味もある。
しかし、「弱いままの」「なんの特徴もない」
であっては、物語にならないのてある。
言葉を変えていうと、
主人公のキャラは立っていなければならない。
つまり、
他と違うユニークで非凡な魅力を、
どこかで確立しなければならない。
それは物語後半?
いやいや、トップシーンがベストだろう?
トップシーンでなくても、
比較的最初の方がベターだ。
どうやってキャラを立てる?
過去を示すのは割とポピュラーだが、
それはキャラを立てたことにならないのに注意しよう。
それは、「過去の」キャラが立っただけで、
「現在の」キャラが立ったわけではない。
「御巣鷹山事故の生き残り」は強烈な過去のキャラだてだが、
現在ごく平凡な看護婦をやっているならば、
それは「普通の人」でありキャラが立っている人ではない。
「事故により超能力が目覚め、
現在預言者として暮らしている」なら、キャラが立っているだろう。
キャラを立てるのに最も簡単な方法は、
「ほかに滅多にない、特別な能力」をつけることだ。
少年漫画なら必殺技だね。
「幽遊白書」の遊助は、
喧嘩が強いという特別な能力があったが、
実際にキャラが立つのは、
霊界探偵という職業ではなく、
「霊丸」を得てからだ。
北斗の拳のケンシロウならば、
北斗神拳という異常なオリジナリティのワザの使い手だから、
一発でキャラが立った。
(一方、キャラは立つものの感情移入できるキャラクターではない。
感情がいまいち見えてこないからだ。
ケンシロウに感情移入するのは、
「ユリアが生きていた」と告げられる所ではないか?
つまり、そこまで随分かかっている)
別に漫画のようなすごい必殺技をつけなくてもいい。
人の顔を覚えるのが得意、
走るのが得意、
ピアノを弾ける、
くらいでも、
周囲のリアルな人物像からは頭一つ抜けるだろう。
つまり、頭一つ抜けて記憶されるかどうかが、
キャラが立つということである。
そして、話を元に戻すけど、
自分を描いてしまうと、
「自分の得意なこと」を主人公に持たせてしまうんだよね。
「他人から見てどうこの得意が見えているか」
にたいてい無自覚だから、
自分の得意を描くのはお勧めではない。
他人の得意な、自分の得意ではないことを描いた方がいい。
「もし自分にそんな得意があったら」
と想像するのが、
物語を楽しむことだからだ。
霊丸や北斗神拳伝承者は世の中にはいない。
しかし物語の中でだけ、
私たちは霊丸を撃ったり、
秘孔をついたりして、
楽しむ。
それが物語だ。
だから、
主人公のキャラをどこかで、早めに立てるべきなのだ。
能力以外に何かあるだろうか。
突飛な見た目、突飛な性格、突飛な言動くらいかな。
あるいは、突飛な弱点もあるかもしれない。
全部入りにしては記憶できない。
私たちの第一印象は「○○」とたった一つである。
一つに絞ってよい。
しかし設定を一つに絞っては平板な人物像になるから、
立体的に複数の設定、
時間軸的な設定(過去や夢)を加えるべきで、
それらは一度に出すのではなくあとあと出していくのである。
「不良だけど優しい」キャラは、
第一印象ではオラオラ系を描いて「最悪!」のリアクションを引き出し、
「そのあと」、
濡れた子犬を拾っている所を見せればよいのである。
キャラを立てる、
ということは、印象において頭一つ抜け出せればそれで良い。
どう突出するかはおまかせであり、
それがあなたのオリジナリティということだ。
また、頭一つ分というのは、
「その作品内での頭一つ」が妥当だ。
古今東西全ての作品内で頭一つ抜け出るキャラ立ちを作ることは、
かなり難しいから、意識しなくて良い。
あなたの作品の中での、
その世界の中での頭一つ抜け出る分だけを、
考えればいいだけだ。
(もっとも、少年漫画連載作品なら、
歴代ジャンプキャラに比べて、
キャラが立っているかどうか、
というのは基準になってしまうけれどね)
自分の描いてきた数々の過去作品比での、
頭一つも考えなくていい。
あくまでそのストーリー内でキャラが立っているかどうかだけを、
気にするといいだろう。
キャラが立っているかどうかは、
常に相対的である。
他との対比で決まる。
また、
描写の強弱、つまり必殺技とか能力ではなく、
エピソードの強弱でキャラを立てられるのがベストだ。
主人公の能力や性格が、そこで際立ってくるだろう。
「誰もが物怖じする状況で、
正義のためにリスクを犯して人を助ける」
などは、よくあるキャラ立ちの場面である。
勿論そうでなくても良い。
あなたの描きたいストーリーによる。
ダメな男が、というストーリーならば、
ダメぶりを示すファーストエピソードを創作し、
ダメのキャラを立てるべきだ。
主人公のキャラを、
どうやって、いつ、立てるか?
物語の最初の方は、
やらなければならないことラッシュだ。
それでいてゆっくり立ち上がらなければならないから、
冒頭部分は難しいのだ。
2018年09月16日
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